法人向けサービス
健康かながわ

職場におけるアルコール問題とその対応

8月27日当協会7階松村ガーデンホールで第2回健康管理懇談会行われ、「生活習慣病対策 アルコール」をメインテーマに国立療養所久里浜病院の丸山勝也院長が「職場におけるアルコール問題とその対応」を講演した。県内の61の事業所や団体から74人が参加。

アルコール関連問題とはアルコール依存症、肝疾患や膵炎などアルコール性身体疾患、欠勤・生産性低下などの職場問題、家庭不和・暴力など家庭問題、飲酒運転・転落などの事故、犯罪など幅広い、と講師の丸山勝也・国立療養所久里浜病院院長は言う。
同病院は国立病院で唯一のアルコール依存症の基幹施設であり、WHOのアルコール関連問題研究・研修協力センターとしてアジア地域でのアルコール問題の臨床研究,教育研修の拠点ともなっている。

丸山院長は講演の冒頭に飲酒をめぐる日本の現状について解説。平成6年くらいから総飲酒量は横ばい状態であること、しかし過去35年ほど遡り比較すると飲酒量は2.3倍にも増加していること、先進各国のなかで過去10年間で飲酒量が減少していない珍しい国が日本であることなどをデータに基づいて解説した。
このような飲酒大国ニッポンのなかで、毎日日本酒換算で5合以上の酒を飲む「大量飲酒者」に目を向けると昭和40年103万人、平成11年227万人とやはり35年間で2.2倍に増加している。
一方、アルコール依存症の患者数は平成11年のデータで19,400人となっており、227万人の大量飲酒者のうちアルコール依存症と診断されていない225万人の動向が気になってくる。

入院患者の15%が…

こういった隠れたアルコール依存症の人たちは身体疾患を訴え病院を訪れているのだ。昭和63年から平成2年に全国6個所の一般病院の内科、外科、整形外科、産婦人科に入院した患者を対象に久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)による重篤問題飲酒者の割合を調査。一般病院の入院患者の14.7%が過剰の飲酒により症状を悪化させている、という結果が出た。こういった人たちが費やす飲酒に起因する医療費は約1兆1千億円、総医療費の6.9%を占めている。

職場での対応は

職場におけるアルコール対策は次の4つ。 ①アルコール関連問題の健康教育 ②アルコール依存症の早期発見 ③専門病院への紹介 ④アルコール・プライマリー・ケアプログラム

アルコール依存症の早期発見に健診データの活用は不可欠である。飲酒とγ-GTPの高値はよく知られている。肥満による肝機能障害との判別に用いられるのがGOT/GPT比。この値が1に近いものはアルコール性の肝障害、0.5ならば肥満による脂肪肝を疑う。もちろん尿酸・HDLコレステロール・中性脂肪・血糖も要チェックとなる。

アルコール・プライマリー・ケアプログラム

アルコール関連問題は「生活習慣」に深く結びついており、節酒や断酒の指導を企業内の限られた健康づくりスタッフが行うことはなかなか難しいかもしれない。

国立久里浜病院ではアルコール依存症に至る恐れのある人(プレアルコホリック)を対象に「アルコール・プライマリー・ケアプログラム」を実施している。1週間の入院(内科)による身体疾患のドック式検査とアルコール依存症の予防教育が主な内容で内科医・精神科医による診察と指導、心理療法士によるストレス度・性格テスト、栄養士による栄養指導、作業療法士による体力測定など多彩なプログラムが実施される。 同プログラムには健康保険が適応(本人負担約6万円)される。

今後、産業医との連携をとりながら退院後のフォローアップも充実させたい、と丸山院長。アルコール・プライマリー・ケアプログラムを積極的に利用してもらいたい、と参加者に呼びかけた。

同プログラムへのお問合せはTEL046-8478-1550(国立療養所久里浜病院医事課・内線217 担当 荒木氏)まで

中央診療所のご案内集団検診センターのご案内