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健康かながわ

過重労働対策と生活習慣病との関連

imageかながわ健康支援セミナー(特別編)が3月31日、神奈川県予防医学協会2階会議室(松村ガーデンホール)で「産業看護職研修会―過重労働対策と生活習慣病との関連」をテーマに開催された。同協会産業保健部の朝山光太郎産業医と蒲浦光正産業医の講義と、富山明子ヘルスコンサルタントによる演習が行われ、70人が参加した。

最初の講演として「過重労働による健康障害の背景因子」をテーマに当協会産業保健部の朝山光太郎産業医(写真右)が講演を行った。
過重労働による新しい認定基準と対象疾病(2001年)が発表された。それによると「月100時間以上の超過勤務、または2~6か月平均月80時間以上が過重労働認定の要件。この過重労働による脳血管疾患や虚血性心疾患が対象疾病」とされた。

働く人々の生活時間配分を見ると、1日13時間以上労働が続くと過労死の頻度が確実に増え、それに伴って睡眠時間が6時間を切ると高血圧をはじめ、脳・心臓疾患発症のリスクが高くなるという。
ブレスローの7つの生活習慣(①1日睡眠7~8時間②適正体重③禁煙④適正飲酒⑤十分な運動⑥朝食を摂る⑦間食をしない)からみてもその悪化は、ほとんどの生活習慣病の原因となる。「この7つの良い習慣を守っている60歳代の高齢者の追跡調査による死亡率から見た健康度は全く守っていない30歳代の若年者の健康度と同じであるといわれている」と朝山医師は解説する。

また長時間労働と精神疾患発症に関してのエビデンスはないが、ある事例調査によると、就業中の外来患者に接する精神科医の3分の2は、「睡眠時間の短縮が精神疾患発症の主因となりうる」と回答した。労働のストレス(カラセックのモデル)は、仕事のきつさ,自己裁量度・上司などの支持が少ない場合はストレスが大きく、精神的緊張とメンタルヘルス不全の危険を高めているとも話す。

最後にメタボリックシンドロームの診断基準についても説明。内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲径:男85cm、女90cm)とそれに加えて①血清脂質異常②血圧上昇③空腹時血糖上昇のうち2項目以上があってメタボリックシンドロームと診断された場合は、動脈硬化・組織障害などの危険性が特に高くなる。

「このような健康障害の背景因子は、過重労働とそれに伴う睡眠不足のストレスを増強すると考えられます。今回安衛法が改正されて医師による面接指導が義務化されたので、このような背景因子を十分に留意すべきです」と朝山医師は講演を行った。
次に同部の蒲浦光正産業医が、「過重労働対策について」と「疲労度チェックの意味するところ」をテーマに、「長時間労働による健康障害防止のための医師の面接指導」について講演。

安衛法改正と 疲労度チェック

「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」が平成14年2月に行政指導となったが、昨年秋、労働安全衛生法(=安衛法)改正が行われ、「長時間労働による健康障害防止のための医師の面接指導制度」が4月1日より施行される。
安衛法改正の重要点は「医師による面接、面接記録の保存、事後措置」が義務づけられたことである。まず面接対象者は「月100時間以上の超過勤務かつ疲労の蓄積が認められる者」とされた。また面接指導の実施方法は「労働者の申し出により実施するか、産業医が該当者に面接を勧めることが可能である」と規定している。

今回の改正安衛法施行前に、産業医学振興財団が厚生労働省の委託を受け「長時間労働による健康障害防止のための医師の面接指導マニュアル及びチェックリスト」が作成された。内容はⅠ、面接指導の担当者および場所、Ⅱ、面接指導の対象疾病と目的、Ⅲ、面接の進め方(情報の把握から評価、判定および意見書の具申まで)という構成からなっている。このチェックリストは安衛法改正に基づく面接指導を適切に行うためのもので、昨秋から産業医を対象に、周知徹底が促されている。

蒲浦医師は、「管理監督者であっても原則として月100時間以上の超過勤務者全て、月残業100時間未満であってもラインからの面接の依頼のあった者を呼び出してチェックリストを用いて面接を行うべきです。なぜなら該当者が自主的に面談を申し出ることはあまり期待できないからです。大きな事業所で、対象者が多すぎて十分に対応できない可能性のある場合は、事前にチェック票を配布し、その結果から対象者を絞り込むことも可能です」と説明した。

講義の後、富山明子ヘルスコンサルタントの指導による演習「過重労働対策―現場での取り組み」が行われ、「長時間労働による健康障害防止のためのチェックリスト」を使用した実践的演習が行われた。

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