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労働安全衛生法の改正―面接指導制度をどの様に実践するか?

年度第1回かながわ健康支援セミナーが4月5日、神奈川県予防医学協会2階会議室(松村ガーデンホール)で「改正 労働安全衛生法」をテーマに労働衛生コンサルタント事務所オークスの竹田透所長が「労働安全衛生法の改正―面接指導制度をどの様に実践するか?」の講演を行い、75団体97人が参加した。

過重労働対策の背景

image厚生労働省では大きなテーマとして、過重労働とメンタルヘルス対策に取組んでいる。脳・心疾患等の労災認定請求件数の推移をみると、ここ数年は年間約800件で、うち約300件が認定され、平成12年を境に、認定件数が急増したことがわかる。
平成元年から12年までは、労災保険に係る行政訴訟は年間約150件で、うち脳・心疾患であり業務上外の判断にかかった事案は約60件であった。

その事案の中に認定件数増加に拍車をかけた労災認定基準の変更に関わる2つの事案も含まれている。その一つは観光バス運転者に発症した高血圧性脳出血の事案と、もう一つは支店長付き運転手に発症した、くも膜下出血の事案である。この判決により、労災認定基準の見直しと過重労働に対する施策の検討が行われることになった。
それまでは過重労働による健康障害は発症前1週間の業務の状況をみて判断されていたが、この裁判で業務の過重性の判断に次の3つのポイントが示された。

①業務の過重性の判断に、「長時間の労働時間」と「精神的緊張や拘束時間の長さ、作業環境、業務の不規則性など、業務の内容や様態による影響」を評価している

②業務の慢性疲労や過度のストレスが長期間持続することが、疾患の原因になり得るとして、「発症から比較的長期間までさかのぼって、その間の業務の状況」を判断要素としている

③業務の重要性を評価する際の比較の基準を、「通常の勤務に耐えうる程度の基礎疾患を有する者をも含む平均的労働者」としている。

これらの判決をもとに厚生労働省では専門家による検討会を開催したが、その報告書の中でも特に「長時間労働」が問題になっている。睡眠時間を削減するほどの長時間労働は睡眠不足を招き疲労回復を困難にしている。長期間にわたって1日4~6時間以下の睡眠状態が続くと、脳・心臓疾患の死亡率を高めるなど、疫学調査からも心血管系の影響(脳血管疾患、虚血性心疾患、高血圧、血圧上昇など)との結びつきが示された。

過重労働による健康障害防止のための総合対策

そこで労働者が疲労を回復できないような長時間の過重労働を排除し、疲労の蓄積を生じないようにするためには、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施する必要がある。
平成12年2月の「過重労働による健康障害防止のための総合対策」によると、
(1)時間外労働の削減
(2)年次有給休暇の取得促進
(3)労働者の健康管理に係る措置の徹底
①健康診断の実施等
②産業医等による助言指導
③過重労働による業務上疾病を発生した場合等の措置の徹底があげられている。

労働安全衛生法の改正
平成18年4月1日、過重労働・メンタルヘルス対策の充実を図ることを目指し、労働衛生法が改正された。
事業者は、一定時間を超える時間外労働等を行った労働者を対象とした医師(産業医)による面接指導等を行うこととする。(図)
面接指導では過重労働による脳・心疾患だけでなくメンタルヘルスについても総合的な考慮が必要であり、働くことと健康・生活のあり方を改めて見直すことが求められている。

恒常的な長時間労働は心身の疲労やストレスを蓄積させ、脳・心疾患の発症リスクを高めており、さらにメンタルヘルスの不調にもつながっている。しかし疲労やストレスは人によって感じ方が異なり個人差のあるものである。したがって医師は面接で心身両面の健康状態を確認することが重要である。それにより脳・心疾患予防の指導や受診勧奨を行うことも必要である。

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