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健康かながわ

これからのメンタルヘルス対策をどう進めるか

神奈川県予防医学協会主催によるかながわ健康支援セミナーが7月26日、当協会2階会議室(松村ガーデンホール)で開催された。今年3月末にメンタルヘルスの新しい指針が出され、これをきっかけに職場のメンタルヘルス対策をさらに進めることが必要になってきた。このような状況を受け今回のセミナーは、アデコ㈱健康支援センター長の廣尚典統括産業医を講師にお迎えし、「これからのメンタルヘルス対策をどう進めるか―新指針を踏まえて―」をテーマに開かれた。企業や自治体などの健康管理担当者など96人(78団体)が参加した。今回はこの講演要旨をお伝えする。

メンタルヘルスに関する行政の動向

1990年代の半ば頃から企業のメンタルヘルス問題がクローズアップされ、民事訴訟に持ち込まれる事例もみられるようになった。また、1999年に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」が出された。この指針は、精神疾患が労災として認められるための要件を明示したもので、その内容は①一定の精神疾患を発症している②業務による強いストレスが発症前6ヶ月間にあった③業務以外には強いストレスになるような出来事がなく、精神疾患を発症しやすい個人要因もないという3つからなっている。以降、労災認定件数は急増して現在に至っている。

翌2000年に示された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」は、国が職場におけるメンタルヘルス対策の推進について、初めてまとまった形での方向性を示したものであった。事業場全体でメンタルヘルスに対し、計画的・継続的に取り組むことが求められた。

さらに2004年に「心の病気により休業した労働者の職場復帰支援のための指針」がまとめられた。精神疾患で休業した労働者に対する復職支援のポイントとして、①システムを構築する②病状の回復度、業務遂行能力の改善度、受け入れ職場の準備体制について評価を行う③本人と職場(上司や同僚)の2方向の支援を行う④主治医と産業保健スタッフ間、産業保健スタッフと職場(上司、人事)間の情報交換を適切かつ円滑に行う、といった点が強調されている。

昨年には、労働安全衛生法が改正された。主要な改正点のひとつに過重労働対策がある。この主眼は、過重労働による脳卒中や虚血性心疾患の発症予防にあるが、メンタルヘルスとも関連が深い。なお、これに伴って「過重労働による健康障害防止のための総合対策」も改正された。具体的には、長時間労働者に対する医師の面接指導が規定されている。
さらに、本年3月「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が示された。2000年の指針の改訂版にあたるといえる。

過重労働対策として

上述した安衛法改正により、残業時間が月100時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者に対して、本人の申し出に応じ、医師の面接指導およびその事後措置を行わなければならなくなった。
産業医は、必要に応じて、労働者に対し面接指導を受けるように勧奨することができるため、この部分をどのように生かすかが、各事業場(およびその産業保健スタッフ)に問われるところと言える。

また、月80時間超の時間外労働者や、各事業場で制定した基準を上回る労働者にも面接指導等を行うことが努力義務となった。
ここで留意すべき点として、保健師等による保健指導が認められていることがあげられる。健康診断後の保健指導は、医師による結果判定を受けて行われるものであるが、この保健指導は、そのようには明記されていない。保健師等が、医師による何らかの判断を経ず、面接指導を行う際には、いままで以上に、対象となる労働者の健康状態につき、適切な評価・見立てをすることが求められる。

ちなみに、過重労働対策は、この長時間労働者への面接指導が話題となっているが、時間外労働をできるだけ削減することや有給休暇の取得を促進するための取り組みがまず優先されねばならないことを強調しておきたい。

職業性ストレス簡易調査票などの活用も

新指針では
新指針は、旧指針の枠組み、主要事項(事業者主導、計画的・継続的実施、マネジメントシステムの導入、4つのケアの確実な実施、教育研修の充実、個人情報保護の重視など)を踏襲しながら、衛生委員会の活用、事業場内メンタルヘルス推進担当者の選任といった、新しい内容も盛り込んでいる。

事業場内メンタルヘルス推進担当者は、事業場内産業保健スタッフ等の中から選任することになっており、常勤の保健師(看護師)あるいは衛生管理者(衛生推進者)が候補となる。事業場内のメンタルヘルス対策の事務局的な活動を行うとともに、外部機関を活用する場合にはその連携役を担うことになり、期待される役割は大きい。そのために必要な知識、技術の修得が求められる。国の事業としても、教育研修やテキスト作りがなされる動きがあるようである。

職場環境等の把握と改善

職場環境等の改善は、まず職場環境等を評価し、問題点を把握することから開始される。これは、工場の有害物管理などと同じ考え方である。
管理監督者による日常の職場管理、労働者からの意見聴取の結果、事業場内産業保健スタッフ等による「職業性ストレス簡易調査票」などのストレスに関する調査票等を用いた職場環境等の評価結果等を活用して、職場環境等(ストレス要因)の具体的問題点を把握する必要がある。「職場環境等に関するチェックリスト」を用いると、人間関係、職場組織等を含めた多面的な検討を行うことも可能になる。

こうした職場環境等の評価、問題点の把握を踏まえ、幅広い観点から職場環境等の改善を行うことが望まれる。また、その取り組みの効果を定期的に評価し、それを次の活動に反映させるという継続的な取り組みが重要である。

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