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健康かながわ

人事労務管理におけるメンタルヘルス対策

産業保健活動の向上を図ることを目的に行われている「かながわ健康支援セミナー」の第5回目が、1月30日に神奈川県予防医学協会2階の会議室で開催された。今回は「人事労務管理におけるメンタルヘルス対策」をテーマに、株式会社産業医大ソリューションズ代表取締役社長でもあり、産業医科大学講師の亀田高志先生を講師としてお迎えした。今回のセミナーには、事業所の産業保健に携わる81団体94人の参加があった。

職場のメンタルヘルス不調者が増加し、職場でメンタルヘルス対策が人事労務管理の課題となっている。会社として、リスク管理・コンプライアンス・人材の活性化にどのように取り組むのか、その対応策と留意点が紹介された。

リスクの問題

メンタルヘルス不調とは、精神および行動の障害に分類される精神障害や、自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの(中央労働災害防止協会)と説明。

ここ10年、精神障害者などの労災請求が急増し、自殺者数も高止まりしている。また仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスを感じる労働者も6割に達している。
1999年、過労自殺等の認定基準が公表された後増加し、直近で年間1、000件の労災申請が出されている。労災認定基準をみると、残業が多い場合には、生活時間の減少により、睡眠時間が少なくなる。5時間を切ると、脳卒中、心臓発作、睡眠不足がメンタル不調の誘因になるという根拠が採用されている。

労災判断の仕組みは、該当する疾病等の確認、仕事・プライベートの影響による割合、元々病気があったかどうかなど、総合的な判断により決定される。
その他、法的リスクを軸としては、業務の過重性や就業上の安全配慮義務が問われており、民事訴訟では弱者救済の傾向が見られ、管理者の責任追及が行われている。

ストレスは従業員の生産性に影響

ストレスは、従業員の生産性に影響する重要な要素である。例えばメンタルヘルス不調であるうつ状態になると、遅刻や欠勤が目立ち、仕事が滞り、コミュニケーション・身だしなみが悪くなる傾向がみられるようになる。
メンタルヘルス不調の従業員は、上司、同僚、人事担当者や場合によっては取引先にまで影響を及ぼすこともあり、メンタルヘルスの問題は個人から職場に波及することもある。

職場のメンタルヘルス対策と実際

職場のストレスと心の病気の関係を見ると、結果的にメンタルヘルス不調や心身症、問題行動などが出現し、個人と職場の問題となっていく。
しかし、厚生労働省の調査では、職場で心の健康対策(メンタルヘルスケア)に取り組む企業は約三分の一。専門スタッフがいない、取り組み方が分からないなどの理由で、取り組んでいない企業が多いのが現状である。

具体的方法

予防を円滑に実施するには、人事部門によるルールの文書化(目標・進捗・評価・改善)が必要である。その具体的方法として、「主治医対会社の関係を和らげるために産業医機能の強化をする」、「個人対職場の関係緩和のため上司がコミュニケーションを促進する」。さらに「職場のストレスが病状悪化を引起す事実を認識し、その原因がスキル不足であれば、体調に応じて、研修など個人の側への介入も行う」。また「メンタルヘルス不調は簡単に治癒するのではなく、再発・再燃もありうる寛解の状態で不調者は職場復帰してくることを認識する」。メンタルヘルス対策に関する企業方針の公表やルールの周知が重要であり、厳しくなる企業責任に対処できるようにしていく。メンタルヘルスは、人事や労務管理の課題として対策の実施を決定することが必要である。

経営層による企業方針が決まれば、人事の問題として扱い、対策を推進しやすい。
具体的な対策としては、把握された不調者がいるかどうか可能な限り人事部門でリストアップする。個別の不調者が危険な状態なのかまた労災にあたるのかどうかの分析をする。さらに相談や評価を頼むことのできる産業医等の専門家資源が十分なのか、どの機能が不足しているのかを明確にすることも重要である。

事例対応

imageメンタルヘルス不調者への対応は、人事労務機能・上司の機能・産業医機能・窓口機能の4つの機能が、十分働くことが必要である(図)。なかでも上司である管理職がメンタルヘルス不調者を早期発見できる立場にあるので、研修などにより対応方法を身につけることが重要である。不調者への対応として保健師・専門医への相談を勧める、産業医、人事と情報の共有化を図り、職場での対応方法を決めておく必要がある。

「職場でメンタルヘルス対策を行うことは、リスク管理、生産性への影響や損失防止のために、企業として取り組むべき重要な課題となっています」と、亀田講師は講演を終了した。

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