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特定健診・特定保健指導事業の現状と課題

今回で第4回目の「かながわ健康支援セミナー」。産業保健活動の向上を図ることを目的に、毎回多彩な講師を迎えている。11月9日は、神奈川県中小企業センタービルにおいて、横浜市立大学の水嶋春朔教授による「特定健診・特定保健指導事業の現状と課題」についての講演が行われた。参加は47団体60人。ディスカッションでは、熱心な質疑応答が交わされた。

特定健診・特定保健指導がスタートしてから1年半が過ぎ、20年度の実施状況が明らかにされてきた。その受診率は、全国の加入者全体で59・8%(速報値)。きょうかい健保での健診受診率が35・9%(速報値)、全国の市町村国保の特定健診受診率は28・3%(速報値)であった。また、水嶋教授によると、「公務員で80%、地方公務員が71・7%。受けてしかるべきところですら100%でないのが現状」なのだそうだ。
このことから、まずは健診受診率の向上が大きな課題であることが見えてくる。

課題は受診率の向上

これからの超高齢化社会を迎えるにあたって、重症化・合併症を予防して、高額な入院医療費などを減らすために始まった特定健診・特定保健指導。
「健診で要医療が早期に見つかり、それが外来診療で対応できれば、入院の必要がありません。これが理想的ですね。自覚症状が進んでからの受診だと、検査入院も含めて、入院が必要となってしまいます」と水嶋教授がいうように、実際、山形県のように健診受診率(65%)が高いところは入院受療率も低く、一人当たりの老人医療費も47都道府県中、長野県に次いで低い。逆に高知県などは健診受診率は低く、入院受療率が高くて、医療費も高い。

では、受診率を向上させるためには何をすべきか。水嶋教授は次のように話す。
「"特定健診・特定保健指導"という言葉は、世間ではあまり知られていません。でも"メタボリックシンドローム"は90%以上の人が知っています。そこで、"メタボ健診"など、わかりやすい言葉に置き換えて発信していくことも有効ではないでしょうか。そして、毎年受診を受けることの重要性を説明することや、保健指導を受けやすい環境作りも大切です」。

効果的な保健指導とは

保健指導が生活習慣病の予防に効果的で、それを成果として示すためには、「"ターゲットの選択と集中"という概念は、保健指導の現場ではあまり使われませんが、成果を出すために必要です。 
保健指導は、はじめから全員ではなく、優先順位をつけて効果の出やすい人から始めるのがいいでしょう。それは、次年度に対象者を減らすことで、保険者にとってコストが減らせるというメリットもあります。
また、喫煙者が禁煙することで、積極的支援対象者が減り、コストカットにつながります」と水嶋教授。

imageそして、アプローチは40~50歳代の男性に加え、30歳代の男性もターゲットにすべきだという。なぜなら「30歳代は筋肉が落ち、脂肪がつきやすくなるメタボ化の入り口。また、40歳代は生活習慣が出来上がっていて、リスクをコントロールしにくいので、その手前から健康に関する情報提供が必要です」ということだ。
特定保健指導事業に対する評価はまだ出ていないが(2009年11月9日現在)、20年度の事業を振り返り、さらに21年度のデータと比べ、それによって今後のあり方が検討される(図)。

最後に、保健事業を効果的に進めるための、水嶋教授からのアドバイスを紹介する。
「大切なことは、まずは対象集団の現状把握です。健診データやレセプトデータ、受診データなどのデータ類と受診率、健康指導実施率、生活習慣改善率などの資料を駆使して、自分が対応する集団の実態を明らかにすることです。そこから、その対象集団にあった健康指導のプランをたてます。これが、始めにプランをたてるところから入ると、現状に沿わず実現できないものになるからです。
そして指導の現場では、最初に健診データの説明から入るのはやめて、まず対象者の話を聞くことから始めましょう。それによって、対象者との間に信頼関係が生まれ、その後の指導に有効性が生まれます」。

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