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職場のメンタルヘルス-広がる職場不適応、未熟な人格をどう育てるか-

今回が第6回目の「かながわ健康支援セミナー」。産業保健活動の向上を図ることを目的に開催している。1月26日、神奈川県自動車整備振興会の教育センター(横浜市中区)において、筑波大学の松崎一葉教授による「職場のメンタルヘルス-広がる職場不適応、未熟な人格をどう育てるか-」の講演が行われた。113団体、143人という数多くの参加から、職場のメンタルヘルスへの関心の高さがうかがえた。

わが国では自分の仕事や職業生活に対して強い不安、悩み、ストレスを感じる人が6割を越えている。さらに自殺者は、交通事故死の3倍(約3万人)を越え、働き盛りの自殺が増加している。多くの企業では、メンタルヘルス対策が上手く機能していない悩みを抱えている。
このような状況の中、産業精神医学と宇宙医学に携わり、宇宙飛行士の訓練や支援を行っている松崎教授が、飛行士選抜のエピソードを交じえて講演した。
無重力と閉塞という特殊な環境で働く宇宙飛行士には、究極のストレス状況を乗り切る高いストレス対処能力が求められる。そのストレス対処能力は、ストレス解消の暇もなく働く最先端企業の労働者にも、同じく求められる要素である。

従来型うつ(消耗型)への対応と予防

メンタル不全による休職は、長期化することが多く、企業にとっては多大なリスクを負うことになる。したがってメンタルヘルスの予防活動が重要となる。 予防活動には、1次予防(メンタル不全を発症させない)、2次予防(不調を早くみつけて早く治療)、3次予防(休職から円滑に復職させる)があり、組織全体で包括的に進めることが重要である。

職員がメンタルヘルス不全に陥った場合、「抑うつ状態」には、 広い概念が含まれているため、まずしっかり〝診る〟ことが必要。次にその見立てに従って精神科主治医が適切な〝治療〟を行うことになる。さらに円滑な〝職場復帰〟に向けたケースマネジメントを行うことが必要である。

松崎教授が担当する企業では、問題ない人(青信号)、ちょっと体調不良の人(黄信号)、もっと重症化した人(赤信号)など、レベルにかかわらず誰もが同時に相談に来やすい環境を作り、〝メンタルへの敷居を低く〟することで、よりメンタルの風通しが良くなり、メンタルヘルス対策が順調に進む企業があると説明した。

未熟型うつへの対応

最近若年層では、人格の未熟に起因する「未熟型うつ」と言われる人が増えている。従来型のうつの人とは異なり、自ら精神科に受診し、抗うつ薬を処方してもらい、すぐに休職となるケースが見られる。
彼らへの対応の原則は、まず人材を「育てる」という視点をもつこと。悪意でも、病気でもないので、敵対的に接するのではなく、陰性感情を抑えた対応が必要である。

対応に必須のスキルとして、人の話を聞くためのカウンセリングマインド(受容・傾聴・共感)を心がけることも必要である。
また対応の外枠を明確にすることも重要である。就業規則を整備し、その規則に則って断固とした態度で対応することも重要で、「こういう規則になっている」と堂々といえるようにしなければいけない。さらに、精神科主治医と適切に連携し、臨床医学的情報と会社の事情をすり合わせ、対応していくことが重要である。

効果のある1次予防に取り組むには

ストレスには、増強要因と緩和要因がある。
増強要因である量的ノルマ、質的ノルマ、対人関係の3要素と、緩和要因である裁量度、達成感(やりがい)、サポートの3要素について調査した結果を報告。
その報告で注目することは、同じ企業の中でも、部署によるストレス構造の違いがあるという。その違いを解析し、ストレス構造の悪いところに、ピンポイントでしっかり対処することが重要である。アセスメントに基づいた啓発活動をすることで、ストレス対策効果をあげることはできるのだと松崎教授は強調した。

したがって労務管理においては、仕事量を落とさなくても、ストレス要因を解析することで、1次予防は可能だと解説した。
「単純にノルマを減らさなくても、時間的裁量権や達成感を得られる労務管理をすることで、メンタル不全者は出さないで済むのです。さらに重要な点は、健康管理部門と人事労務管理部門が連携することの重要性を理解した企業は、1次予防が可能なのです」と、メンタルヘルス対策の方法を解説した。

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