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健康かながわ

 産業保健活動の向上を図ることを目的に行われている「かながわ健康支援セミナー」。平成22年岡本先生度の第2回目が、9月29日「がん予防活動における国や県の動きと職域・市町村における対応について」をテーマに、当協会2階の会議室で開催された。

今回のセミナーは、地域保健と職域保健の連携推進を目的とした、神奈川県による「地域職域連携推進事業研修会」としても開かれた。講師は神奈川県立がんセンターの岡本直幸講師。講演に引き続き、神奈川県保健福祉局の永井雅子技幹による「職域のがん検診実施状況調査報告」についての情報提供が行われ、事業所をはじめ、県内自治体からも健康管理に携わる69団体79人の参加があった。

 がんは生活習慣病と考えられるようになってきた。国や県ではいろいろな方法でがん予防対策を出している。職域・市町村ではがん克服に向けてどのように対処していくべきか、その対応について岡本講師が解説した。

がん予防の重要性

 わたしたちの身体は、60兆個の細胞からなっている。その細胞は6年ですべて入れ替わる規則正しい活動をしている。しかし、その細胞が異常な活動をするとがんが発生し、増殖することがわかってきた。

  がんの発生後、本人が自覚するまでには時間がかかるが、それまでの生活習慣が影響していることや、がんの要因、予防方法も分かり始めてきた。したがって、がん対策には、がんの治療はもちろんのこと、がんの予防が重要視されるようになってきた。

「生活習慣病」予防の考え方

  生活習慣病は、若いころからの生活と関連があり、子どもの時からの生活が、病気の発生と関係している。(図1)
  さらに、がんの原因は生活習慣の中でも、タバコ・食生活が大きな割合を占め、それに続き運動不足、職業環境、遺伝・家族歴、ウイルス・微生物なども原因と考えるようになった。

そこで、健康管理を主目的とする〝健診〟と、疾病の発見・診断が目的の〝検診〟を受けることで、自分の身体の管理をすることが重要である。

低いがん検診受診率

  ところが、日本のがん検診受診率を見ると、例えば、乳がんの検診受診率の国際比較では、北欧は80%以上、イギリスは75%以上、アメリカは70%以上であるのに比べ、日本は視触診で12%(40歳以上)、マンモグラフィ併用に至っては2~4%と非常に低率なのである。
  さらに、子宮頸がん検診を見ても、20数%と非常に低い受診率であるというのが日本の現状である。

がん対策への国や県の関与

  日本では全体目標として、まず10年以内に、がんによる死亡者の減少を目指している。がんを取り巻く状況は変化し、以前のように対策が取れないという状況ではなく、エビデンス(根拠)に基づく対策が必要となった。

  そこでまず、がん患者やその家族の苦痛の軽減、療養生活の質の維持向上を重要な目標とした。さらに分野別施策・個別目標として、医療従事者の育成、緩和ケア、在宅医療、診療ガイドラインの作成。また医療機関の整備、がん相談支援センターの設置、がん登録など、がん予防のための施策が立てられ、さらにがんの早期発見のためにがん検診受診率50%以上とする(5年以内)も加えられた。

目指す神奈川のすがた

 神奈川県では、「がんへの挑戦・10か年戦略」の中で、平成26年までにがんの予防・早期発見・医療・緩和ケアまでの総合的な対策を挙げた。 「がんにならない神奈川づくり」として、禁煙・分煙の徹底、食生活・運動などの生活改善、がん検診の充実、(図2)がんの情報提供に取り組むことを挙げている。

  また「がんに負けない神奈川づくり」として、がん診療連携拠点病院、高度ながん医療や研究、緩和ケアの充実を施策として掲げている。 さらに数値目標として、都道府県別がん死亡率を低いほうからベスト10以内を目指すこととなった。  

低いがん検診受診率

 現在がん検診は、職域・市町村の努力義務として実施している。受診者は、市町村や職場での集団検診、かかりつけ医などで受診している。しかし、がん検診を受診しない人の多くは、〝不要〟〝面倒くさい〟〝受診する時間がない〟〝受診方法を知らない〟などの理由で、受診していないようだ。

  岡本講師は、「職域・市町村でのがん検診の在り方として、地域の医療機関、住民、行政などのコンセンサスが必要です。そのためには、より多くの人へのがん検診の情報発信や、情報交換の場をもつことが必要です」と講演を締めくくった。 

平成21年度 職域のがん検診実施状況調査

   講演に続き、神奈川県保健福祉局の永井雅子技幹(写真)が、県民健康づくり運動かながわ健康プラン21で実施した「平成21年度職域のがん検診実施状況調査」(一部抜粋)の結果報告を神奈川県からの情報提供として行った。

  がん検診は、がんの早期発見の重要な要素である。国では「がん対策推進基本計画」(平成19年6月策定)の中で、がんの早期発見に向け、がん検診の受診率を5年以内に50%以上とすることを目標に掲げた。

  そのため市町村や職場、さらには人間ドックで行われているがん検診の調査が必要となった。県民の総死亡者数の約3分の1を占めるがんをはじめ、生活習慣病が県民の健康を脅かしているため、その予防が急務となっている。そこで生涯を通じた継続的な保健サービスの提供体制を整備するためにも、職域保健と地域保健が、がん検診の共同実施を目指し、それぞれの健康情報を共有し、連携を図っていくことが必要である。

がん検診実施状況についての調査結果報告が行われたので、ここでその一部を紹介する。

会社企業を対象とした調査

・全部位のがん検診を実施する会社企業を増やすような働きかけが必要。特に、乳がん、子宮がん検診の受診率(10・1%)が低いため、検診の必要性を周知する。
・上司や健康づくり担当者が、従事者に働きかけ受診率を上げる。具体的には上司や健康づくり担当者に対して、講習会等を開催し普及啓発を実施する。
・健康づくりに関心があり、情報提供を希望している会社企業に対して、がん検診の必要性や市町村のがん検診の案内を行い、効果的な受診につなげる。
・市町村や保健福祉事務所などによる健康づくりに関する情報提供が必要である。
・被扶養者については、市町村のがん検診受診へと誘導していくことが必要である。 

健康保険組合を対象とした調査

・がん検診を実施していても、従業員が受診していないことも多く、安全衛生管理者等が受診を促す体制が必要である。
・女性特有のがん検診の受診率(乳がん16・3%、子宮がん15・8%)が低い現状について理解を促すとともに、検診の必要性を周知する必要がある。
・被扶養者へのがん検診を実施していない組合に対して、市町村のがん検診の案内を行う必要がある。

 

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