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健康かながわ

 平成22年度第3回かながわ健康支援セミナーが、10月20日神奈川県自動車整備振興会教育センターで開催された。このセミナーは、産業保健活動の向上を図ることを目的として開催されている。
今回は、北里大学大学院医療系研究所産業精神保健学医学博士田中克俊教授を講師に迎え、「睡眠保健指導のための基礎知識」をテーマに講演を行った。

今回のセミナーには県内の事業所などから71団体84人の、事業所の産業保健に携わる方々が参加。田中教授の講演の内容を紹介したい。

生活リズムを整えて質のよい睡眠を

  睡眠は人間の生活に必要不可欠なもの。睡眠時間を十分にとることに加えて、質のよい睡眠、特に睡眠の前半に多く訪れる深睡眠は、成長ホルモンなどの内分泌や免疫と関連し、健康のために重要である。

  睡眠の質が悪いと高血圧は2倍、虚血性心疾患は3倍、脳血管疾患は3~5倍、うつ病は3倍になるといわれている。

レム睡眠とノンレム睡眠

 睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類がある。ノンレム睡眠は、脳波の様子から4段階に分けることができる。
深睡眠とはノンレム睡眠の一番深い段階で、睡眠の最初のほうに多く訪れる。ノンレム睡眠は人間だけにある睡眠で、脳を休める役割を持っているといわれている。深睡眠をしっかりとることが、質のよい睡眠といえる。

  一方、レム睡眠は体を休める役割を持つ睡眠といわれている。 レム睡眠とノンレム睡眠は交互に起こり、およそ90分のサイクルで繰り返される。これを一晩で、4~5サイクル繰り返すのが平均的な睡眠時間となる。

よい睡眠のポイント

   質のよい睡眠をとるためには、事前の準備が大切である。朝、遅くても8時頃までに太陽の明るい光を20分程度連続して浴びると体内のリズムにスイッチが入る。スイッチが入って、目覚めてから14~16時間後に睡眠を促すメラトニンが分泌される。だからこそ、朝にしっかりスイッチを入れることが大切になる。

  スイッチが入るためには、3、000~5、000ルクス以上の光が必要といわれている。明るく感じるが、蛍光灯の明かりは必要な明るさには足りないので、太陽の光を浴びるようにしたい。日の光をしっかり浴びることができない場合は、高照度装置(ブライトライト)を使うのも有効だ。この装置は、太陽光に近い明るさを再現した照明で、この明かりを浴びることで朝日を浴びるのと同じ効果が期待できる。北欧など、日照時間の少ない地域では良く使われている。高照度装置は、紫外線が含まれていないので、日焼けが気になる女性にはお勧めだ。

  また、体温勾配をしっかりつけることもよい睡眠に繋がる。眠る2時間ほど前に39~40度くらいの湯で15分程入浴すると深部体温が1度前後上昇し、その後体温が下がっていくことでスムーズに眠ることができる。42度を超えると体は危険だと感じて逆に深部体温の上昇を妨げるのでぬるま湯が望ましい。

  飲酒は途中覚醒しやすいし、深睡眠を得られないので勧められない。また、尿意などで途中覚醒することも避けたい。寝ている状態から急に起き上がると血圧が上がりやすいため、急激な血圧の変化は体への負担が大きく、危険である。

  よい睡眠をとるもう一つのポイントとして、自律神経のバランスを整えることがあげられる。
  自律神経には、昼間に優位となる交感神経と夜間に優位となる副交感神経がある。交感神経と副交感神経は夕方に逆転するが、このバランスが崩れると眠気が生じないようになる。
  体をリラックスした状態にすることが、副交感神経を高めることとなる。

  音と香りは特にリラックス状態になるために影響を与えるので、眠る前に眠りのための音楽を聞くことや、ラベンダーなどアロマオイルの香りを利用する方法は効果的である。
  その他、自分でできるリラクゼーションの方法として腹式呼吸を行うことも有効である。吸うことと吐くことの割合を1対3以上となるように腹式呼吸を行うと、副交感神経の働きを高める効果が期待できる。

  また、交感神経を高めたままにする要因としてカフェインや明るい照明があげられる。
  カフェインを含むものとしてはコーヒーが代表的だが、お茶類にも多く含まれているので、それらは午後から夕方以降の摂取は避けたいものである。

  照明としては、蛍光灯の白や特に青い光はメラトニンを下げ、眠気を抑制するので注意したい。橙色系の色の照明を使用し、できるだけ照度を落とすなどの対応をとることが望ましい。

睡眠の質が及ぼす影響

 睡眠の質が悪いと日常生活に影響することが考えられる。
  例えば、日中眠気がとれずに業務に支障が出る、朝起きられずに遅刻するなどである。若いうちは体力があるので無理できる場合もあるが、睡眠時間が少ない状態が続くと脳を休める時間がなくなり、ストレスがかかり続けることとなるので注意が必要だ。

  

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