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健康かながわ

 平成22年度第5回かながわ健康支援セミナーが、22年12月15日松村ガーデンホールで開催された。このセミナーは産業保健活動の向上を図ることを目的として開催されている。

  講師は、産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室研究員の中田ゆり講師。「サービス業・職場・公共空間における受動喫煙の現状と今後の対策」をテーマに講演を行った。今回のセミナーには県内の事業所などから25団体26人の産業保健に携わる方々が参加した。

求められる安全な空気環境~全面禁煙への道~

1998年以前、航空機内は喫煙可能が普通であった。しかし、米国航空会社の乗務員たちが機内の安全な空気環境を求めて声をあげ、現在では航空機内禁煙が常識となっている。
  これがきっかけとなり、公共空間や職場の禁煙化へと広がった。

遅れている日本の受動喫煙対策

 人々に深刻な健康障害を引き起こす受動喫煙に、これ以下なら大丈夫という安全レベルがないことが科学的に証明されている。また、喫煙室や空気清浄機の使用では受動喫煙の防止が不可能であることは国際的研究の共通理解であり、反論の余地はない。

  日本も締約国であるFCTC(たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約)は、2010年2月までに建物内を100%完全禁煙とする全面禁煙法の成立と施行を求めている。しかしながら、期限を過ぎた現在でも、日本は立法化の兆しがない。(立法を実現したのは、神奈川県の受動喫煙防止条例のみである)

  現在、世界各国では厳しい罰則つきの法律による全面禁煙化(酒場も含まれる)が急速に進行中である。
  日本の受動喫煙対策は分煙が主流であり、厚生労働省の「分煙ガイドライン」は喫煙室内の粉じん濃度を0.15㎎/㎥以下と定めている。しかし、この数値は受動喫煙防止対策のために、たばこ煙の特性や有害性を考慮して作成されたものではなく、室外の大気汚染の評価基準を参考に、科学的検討や根拠もなく決定した値である。研究者たちは、「この基準を使用して受動喫煙対策を行うべきではない」との見解を示している。

  最新の技術を駆使した独立型の喫煙室でも、ドアの開閉時に煙が漏れる。また、喫煙終了後の数分間にわたって喫煙者の呼気にはたばこ煙が含まれており、さらには、有害なガス状成分が喫煙者の衣服などから数時間発生する(残留たばこ成分)ため、周囲の人々は受動喫煙に曝露される。
  フロア別、時間による分煙では、喫煙空間に立ち入って働く従業員を受動喫煙から守ることはできない。

飲食店の禁煙が進まない

 現在、日本人の約4分の3以上は非喫煙者である。しかし、飲食店における受動喫煙対策はなかなか進まない。日本社会では、人付き合いで飲食店を利用する際に、グループの中に喫煙者がいる場合は喫煙席(喫煙可能な店)を選ぶ傾向がある。忘年会などの宴会の場合も、グループの中に喫煙者がいると禁煙店は候補から外れるため、集客力が弱い。非喫煙者も喫煙席に座る機会が多いため、結果として喫煙席(喫煙可能な店)のニーズが高くなると考えられる。(図)

  サービス業におけるたばこ煙の濃度は一般の職場に比べてはるかに高い。そのため、顧客や従業員の健康被害が問題視され、各国で全面禁煙化が促進されている。  

求められる罰則付きの受動喫煙防止法

  ①国家全体の心疾患、肺がん罹患率を低下させる、②非喫煙者や子ども、従業員をたばこ煙から守る、③喫煙者自身の健康のため、たばこが吸いにくい社会環境を作る(たばこをやめるチャンスを作る)、④未成年がたばこに手を出しにくい社会にする。以上のために、日本でも飲食店、職場や公共的空間を全面禁煙とする、国際レベルに合わせた罰則付きの受動喫煙防止法の成立が望まれる。

  中田講師は「受動喫煙を防止するために、一人ひとりができることから始めましょう」と講演を締めくくった。

  

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