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健康かながわ

 産業保健活動の向上を図ることを目的として開催されている、かながわ健康支援セミナー。平成23年度の第6回目が1月30日、神奈川産業振興センターで開催された。
  講師に慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授の小熊祐子先生を迎え、「運動・食事の健康情報の読みとり方・伝え方」をテーマに講演を行った。今回のセミナーには県内の事業所などから71団体84人の産業保健に携わる方々が参加した。

さまざまな健康情報

巷にはさまざまな健康情報があふれている。
  「健康に関する世論調査」(2009年、NHK)によると、年代が高くなるほど健康を気にしている人の割合が増える。健康情報に接触している媒体は、テレビ・ラジオが各年代とも高い。しかし、年代による傾向もあり、年代が高くなるとかかりつけ医からの情報や新聞。

若い年代ではインターネット、友人・口コミなどの割合が高い。では、それらの健康情報をどのくらい信用しているか。かかりつけ医の情報が一番信用されている。また、テレビ・ラジオも信用している割合が高い。広告やチラシなどは信用度が低い。

情報とは

 情報とは、ある特定の目的について判断を下したり行動を起こしたりするために、その材料となる知識(広辞苑第5版)である。情報は、適切性、妥当性、双方向性などの要素が増すほど有用性は高まる。逆に、労力や費用などの要素が増えれば有用性は低くなる(A.Shaughnessy, 1994,中山健夫,2008)。

  健康情報は作る側と使う側がいる。以前は、作る側、研究結果は専門誌などに発表されて完結していた。しかし、現在はその情報を一般の人、さらに医療関係者などが判断、利用するようになっている。その間に情報を伝えるという循環が生れる。また、研究結果が作る側から伝えられるだけでなく、使う側の興味、関心から研究を検討することもあり、双方向のコミュニケーションが重要となってくる。

健康情報の信頼性

 健康情報の信頼性を判断する際の目安として、次の項目を満たすほうが信頼性は高いといえる。
①情報源が中立の立場。
②数が多い。
③体験談、症例報告ではなく、科学的研究に基づいている。しかし、体験談について小熊先生は否定していない。エビデンスだけでは人の心は動かない。体験談を見聞きすることは、気持ちに働きかける効果が期待できる。ただし、体験談は誰もが同様の効果、結果を得られるわけではないので、聞く側が賢く判断する必要がある。
④査読雑誌に掲載されている。学会報告は信頼性が低いとされる。
⑤再現性がある。
⑥培養細胞や実験動物ではなく、対象がヒト。
⑦病気の発症率、死亡率、再発率などにつながる。
⑧仮説を検証した結果。
⑨研究の限界や問題点を討議している。
⑩他の研究と比較している。

伝える側のポイント

 情報を提供する側となった場合は、利用者に正しく、わかりやすく情報を伝える必要がある。それには、購買行動モデルを健康情報にも当てはめて考えることができるのではないだろうかと小熊先生は話す。

  購買行動モデルでは、AIDMA理論が有名だ。これは顧客が商品購買にいたるまでに、注意(Attention)、興味(Interest)、欲求(Desire)、記憶(Memory)行動、(Action)の段階を経るというもの。最近は、AISAS理論も提言されている。これは注意、興味の次に検索(Search)、行動、共有(Share)となる。インターネットの普及により、情報を容易に得ることが可能だ。そこで、インターネット上の情報を読み解くポイントとして、次のことがあげられる。
 情報は誰がどういう目的で提供しているか。商業サイトには注意が必要だ。
 更新日は新しいか。日付のないものは古いか新しいかの判断も出来ないので注意。
 病名+〝根拠〟で検索してみる。エビデンスが発表されているか確認してみる。(「健康医療の情報を読み解く」中山健夫著)
 
  健康情報は日々新たな情報が発信されている。そのなかにおいて、エビデンスは覆されることがあることを認識しておくとよい。
  小熊先生は「健康情報は数多くある。正しく取捨選択して、有効に活用してほしい」と締めくくった。


情報提供- 神奈川県のがん対策について

 講演に先立ち、「神奈川県のがん対策について」をテーマに2題、情報提供が行われた。
  はじめに、神奈川県保健福祉局保健医療部健康増進課の熊丸祐介主事が、「勧めていますか?がん検診」と題して講演を行った。

  現在日本では、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっている。このような状況のなか、内閣府の調査によれば「がん検診を重要だと思う」と回答した人は97・4%にのぼる。しかし、神奈川県でがん検診を受けている人はおよそ4人に1人であり、多くの人はがん検診を重要だと思っていても、実際には受診していないのが現状である。

  受診していない理由は、「たまたま受けていない」、「必要なときに医療機関を受診できる」、「健康状態に自信があり、必要性を感じない」の3つが上位を占めている。

  では、どうすれば受診するのか。がん検診には、〝マンモグラフィは耐えられないくらい痛い〟、〝大腸がん検診=ぎょう虫の検査〟など誤解が多くあるという。誤解をなくし、正しい知識を得ることは受診につながると考えられる。また、がん体験を誰にでも起こり得ることとして身近に感じることもポイントだ。身内や代表者をはじめ、従業員にがん体験者がいる企業は、がん検診の受診率が高いことが多いという。

  がんが検診で見つかった場合と、自覚症状が出てから見つかった場合とでは、がんが見つかってから5年後の生存率が大きく異なる。健康なときこそがん検診が必要であるといえる。従業員に対して、正しい情報の提供、また検診実施という事実だけでなく、受診を促すことが従業員の健康のために求められる。
  熊丸主事は「受診率向上に向けて、できることから始めてほしい」と呼びかけた。


  引き続き、NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーターの今村まゆみ氏が「ご存知ですか?早期発見のメリットを」と題して講演を行った。
  今村氏は2008年2月に乳がんの告知を受けた。発見された乳がんはステージ0、ごく初期で、しこりも自覚症状もない段階であった。しかし、告知を受けた当初はがん=死、治らない病気と思っていた。さらに、ステージ0が何段階の何番目なのか、「非浸潤がん」(転移しにくいタイプ)がどういうものかもわからなかった。医師は「切除すれば99%治る」といったが、がんが治るとは思わなかったという。これは医療知識があまりない人の認識として、よくあることではないかと今村氏は話す。

  発見が早かった要因は、やはり定期的に検診を受けていたことだ。検診で数回にわたり要観察となった。観察続行と精密検査実施の違いが、「切除範囲と余命の違い」という医師の回答から精密検査に踏み切ったところ、乳がんと診断された。

  早期発見だったため、セカンドオピニオンを受ける時間の余裕があった。結果、納得してがんに臨めた。また治療方法も、数ある方法から、納得して選べた。
  早期発見のメリットとして①死、再発不安の減少②病院、術式の選択が可能③早期復帰が可能④医療費負担の減少⑤仕事の質のキープ⑥患者家族の負担減少、の6つを今村氏はあげる。「がん体験者の話を通じて、ひとりでも多く受診を、そして早期発見につなげて」と語った。

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