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健康かながわ

 2月28日、横浜情報文化センターで今年度の最後となる、第7回かながわ健康支援セミナーが開催された。このセミナーは産業保健の現場で働く企業・団体の健康管理スタッフを対象に最新の労働衛生・健康管理の情報を提供するために当協会が主催している。今回は講師に安西法律事務所・加藤純子弁護士を招き、「法的視点からみたメンタルヘルス問題」のテーマでセミナーは行われた。124団体から156人の参加者が集まり、熱心な質疑応答も行われた。

加藤弁護士は最近の動向として「普段、主に使用者からの労働関係の相談を受けていますが、そのなかでメンタルヘルスの相談が増えています。ひとつは安全配慮義務に関わるもの。過重労働によるうつ発症、自殺といった事例の相談の他、昨今パワハラ・セクハラを受けて精神疾患になってしまった、という訴えも増えています。
またそれ以外にも休職や復職をめぐる労務管理上のご相談もよくお受けします」という。その講演内容の一部は以下のとおりである。

労働時間との関係

 労災の認定にあたっては「業務起因性」といって、業務と傷病との因果関係を明らかにしなければならない。怪我については明らかにしやすいが、精神疾患については因果関係を明らかにするのが労働者側にとって困難なことも多い。

  この点、業務によって疾病になったかどうかの判定について、労災は一定の基準を設けている。メンタルヘルス発症については「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害またはこれに付随する疾病」に該当するか否かが問題となるが、厚生労働省は従前より「判断指針」として、その判断の指標を公開していた。これが、平成23年12月26日付で「心理的負荷による精神障害の認定基準」に改められた。

  認定基準のポイントは、従前の判断指針では時間外労働の時間について具体的な記述がなかったが、認定基準では具体的に数値を出していること。ここがかなり注目されている部分である。

  例えば、従来の判断指針では労災認定される場合として、「極度の長時間労働」とされていたが、認定基準では「月160時間」程度の時間外労働と明示されたことなどである。(表)

  なお、これはあくまで労災の認定基準であり、労災と安全配慮義務違反に基づく民事損害賠償は、その目的も要件も異なるから、この認定基準が民事訴訟にどのように影響するかは今後の動向をみる必要がある。しかし従前の「判断指針」を判断の材料とした裁判例もあり、労務管理上、留意すべき時間数である、と言えよう。

リハビリ出勤

 リハビリ出勤(トライアル出社)は法令上定めがある措置ではなく、就業規則や労使協定に定めがない限り、義務ではない。各社の自由な設計で設定するべき制度である。

  各社でリハビリ出勤を実施する場合は、労使の合意で内容や処遇について明確にしておく必要がある。そのポイントは以下のとおり。
①休職期間継続の有無
  リハビリ出勤をもって復職と認めるのか、休職期間継続中の措置として認めるのか。
②労務提供義務の有無
  労務提供を求めるのかどうか。特にその対象者に何らかの作業をさせる場合に、それが使用者の指揮命令として行うのか、本人の希望で行われるのかを明確にしておく。
③賃金等の支払いの有無
  職場に慣れるという目的で行われるリハビリ出勤で賃金を支払わない場合でも、交通費程度支給することがある。
  何らかの金銭を支払う場合には、名目・額を明確にしておく。
④出勤時間帯や社内滞在場所の特定
  ややもすると社内をふらふらとしてしまう場合もあり、他の社員に迷惑をかけないためにも社内滞在場所を明確にしておく。
⑤体調不良時の申告義務と産業医との面談に応じる義務の明確化
  リハビリ出勤といえども使用者には安全配慮義務がある。リハビリ出勤によって体調が悪化した、ということにならないよう、体調に不調をきたしたときは、直ちに申し出ること。
  また、会社が必要と判断した時は産業医と面談してその指示に従うことを伝える。
  健康状態によってはリハビリ出勤を中止し、休職に戻すことも事前に明確にしておく。
⑥関係諸規則の適用の確認
  労務を提供しないリハビリ出勤でも、労働者として、また会社の施設を利用する者として遵守すべきセキュリティ等の事項がある。リハビリ出勤中でもそれらの規定の適用があることを確認しておく。 

 

 

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