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健康かながわ

 7月18日、本年度第1回目のかながわ健康支援セミナーが開催された。(主催・当協会)。講演テーマは「職場のメンタルヘルス対策」。講師に富士ゼロックス㈱ALL?FX統括産業医・丹野優次先生を招き、メンタルヘルス対策の現状を解説いただいた。参加者は当協会に健診等を委託する95団体の産業衛生スタッフら110人。

 講演の冒頭、丹野先生は労働者健康状況調査(厚生労働省2007年)のデータを示した。

  「こころの健康対策に取り組んでいる事業所の割合」で、調査の対象となった34%の事業所しかメンタルヘルス対策に取り組んでいないというものである。

  このデータを細かくみていくと事業所規模が5千人以上では100%、4千999~1千人で95・5%が取り組んでおり、大企業ではメンタルヘルス対策は定着しているが中小企業にはいまだ浸透していない、という現状が浮き彫りにされた数値である。同調査は5年に1回実施されており、2012年調査が今年の秋に公表される。

  メンタルヘルス対策に取り組んでいない理由を図に示した。
  「専門スタッフがいない」という理由に対して、丹野先生は「本来は専門職が望ましいが、専門職以外でも核になる人をつくることから始めること」と指摘する。また産業保健推進センターをはじめとする外部機関の活用を勧める。
  民主党政権時代の事業仕分けによって統廃合が進められてきた産業保健推進センターであるが、「神奈川は充分機能している」と丹野先生は評価する。また本年6月の厚労省の発表で、同センターおよびメンタルヘルス対策支援事業を一体化し、ワンストップサービスが可能になるような発展的改変の方向が打ち出された、という情報提供もされた。


必要性を感じない?

  約3割の事業所は「(メンタルヘルス対策の)必要性を感じない」と回答している。これについて丹野先生は、1996年の労働安全衛生法の改正で、企業の安全配慮義務の範囲が拡大したことと、リスクマネジメントとしてのメンタルヘルス対策について言及する。
  「この15年間、国がここまで指針なり方針なりを出しており、その対応をしていなければ、裁判(民事訴訟)になった場合、(企業が)勝てる要素がない」と断言する。
  わが国のメンタルヘルス対策のエポックをつくった「電通事件」を丹野先生は示す。2000年3月、最高裁で成立した和解によって電通が原告に支払った和解金は1億6千800万円。中小の事業所に同様の賠償額が命じられるかは疑問、としながらも「100人以上の事業所で何もメンタルヘルス対策をしていないのは今の時代の企業防衛として、まずいと思います」と丹野先生はいう。

最近のメンタル疾患の傾向

 「適応障害の診断が多くなった」と丹野先生。昔は「自律神経失調症」、今は「適応障害」が安易に診断名として使われているのでは、という。適応障害は背景に発達障害があるケースでもそう診断される等幅が広い。仕事がストレス因だとはっきりしている場合、仕事から離れ、2週間もすれば症状は軽減するはず、という。
  適応障害と診断された際は、真の原因(事実)は何かを見極めることが大切である。事実を把握し、対処をすることにより、問題が解決されることは多いと、丹野先生。
  ただし、発達障害など事実がわかっても対処が困難な事例もある。個々の事例を検討するなど、今後どのような対応が有効であるのか知見を広めることも必要という。

 

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