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健康かながわ

 9月26日、横浜情報文化センターで第3回かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が開催された。このセミナーは企業・団体の健康管理スタッフへ向け、最新の産業保健の情報を提供するために年7回ほど開催しているもの。「ネット依存の実態と予防」をテーマに、講師に独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの心理療法士・三原聡子先生(写真)を招いた。参加者は45団体から67人。
  2008年に成人男女を対象に行った全国調査の結果、国内でネット依存傾向にある人が271万人(男性153万人、女性118万人)という推計が得られた。国内屈指の依存症の治療施設である久里浜医療センターが、ネット依存外来を始めたのが2011年7月。前述のネット依存の実態を憂慮し、全国にさきがけて外来治療を開始、2012年には入院治療も開始した。
  最近ではNHKなどマスコミの報道もあり、相談は全国から寄せられ、現在、新患受付はたいへん混み合っている状態、という。


ネット依存の実態

講演の冒頭、三原講師は「ネトゲ廃人」という言葉をあげた。これはネット上で飛びかう言葉。1日16時間もネットゲームにはまり、 食事はおろかトイレに行く時間さえも惜しんでゲームに没頭している人たちのこと。ネットゲームの多くはハイスペックなパソコンで行われるオンラインゲームのため、社会への適応は下がり、ひきこもりの状態となりがちになる。久里浜医療センターを訪れる多くの方は、このネットゲームへの依存によるものである。
  しかし、ネット依存はオンラインゲームばかりではなく、You Tubeなどの動画の配信・閲覧、Twitterで1日700ツイートする、出会い系サイトで多額の金を失うなどインターネット上でさまざまなサービスが多様化している現在、依存のパターンも多様化している。

  ネット依存の状態になるとどのような症状が現れるのだろう。三原講師は本人から聴取した症状として
1.ネットをしていない時でもネットのことばかり考えている。
2.ネット以外に楽しいことはない。
3.ネットがないとヒマでヒマでしょうがない。
4.家族にネットのことをいわれると、とてもイライラする。
5.ネットの人間関係のほうが現実の人間関係よりも大切だと思う、などをあげる。

  最も特徴的な症状が、最後の「ネットの人間関係のほうがリアル」だろう。今、流行のネットゲームはネット上でチームを組んで行う対戦型ゲーム。ヘッドフォンとマイクが一体になったヘッドセットを着けて会話を交わしながら、見知らぬ他人同士が一致団結して敵と戦う。ネット上では賞金付きの全国大会が開催され、ゲームで得たアイテムは高額な現金で取引きされる。
  バーチャル(ネット)の世界ではリアル(現実)では得られない責任感・アイデンティティー・達成感を得られているのでは、と三原講師は分析する。

回復の過程はさまざま

久里浜医療センターでは認知行動療法を中心とした診察・スポーツやミーティングなどのデイケア・入院(開放病棟での入院。期間は6~8週間)・月2回の家族会・内科医や眼科医によるネット依存の健康影響についてのレクチャーなど、多面的な治療を展開している。
  治療の後、はまっていたゲームは依然、利用しているが、時間が短くなり、日常生活に支障をきたさなくなった例。ネットの利用は必要な情報検索だけになった例。ゲームはやっているが人生の目標や現実での人間関係のほうがおもしろくなり、ネットの利用時間が減った例。
  「回復の過程はさまざまです」と三原講師はいう。

社会人の対応のポイント

社会人でネット依存が疑われる場合には、会社から受診勧奨をした場合に、うまくいくケースが多いという。家族に無理に連れてこられた場合では、本人のプライドが傷つき、再診につながらない場合がある。
  「職場で健康管理に携わる方々にはまず、ネット依存という問題があるということ、そしてその実態を知っていただきたい」と、三原講師は会場の参加者によびかけた。

 

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