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健康かながわ

 
  昨年12月5日に横浜情報文化センターで、「第5回かながわ健康支援セミナー」(主催・当協会)が開催された。このセミナーは、企業・団体の健康管理スタッフに向け、産業保健分野の最近の話題となる情報を提供していくというもの。今回は、『睡眠から始めるメンタルヘルス』のテーマで、富士ゼロックス(株)健康推進室の専属産業医・相良雄一郎先生を講師に迎え、メンタルヘルスと睡眠の関係を講演いただいた。当日は77団体95人の参加者があった。

 

睡眠の役割とは

睡眠には、疲労回復やストレスの解消、成長の促進、記憶の定着をするなどの役割がある。睡眠に問題があると、生活習慣病やメンタル疾患のリスクが上昇し、本人のダメージだけではなく、社会的にも大きな損失になるという。
  「日本人は世界的に見ても、睡眠時間が短いといわれています。ワースト1が韓国の7時間49分、次いで日本の7時間50分(図1)」と、現在の日本の睡眠事情について説明をする相良医師。
  また、睡眠障害とメンタルヘルスの相関関係はよく知られていて、「現在うつ病は注目の疾患となっていて、2030年には世界で疾患の第1位になると予想されています。今後はうつ病が健康の大きな障害となるのではないでしょうか」と相良医師はいう。 

産業保健としての睡眠指導

相良医師の所属する富士ゼロックス(株)では、新入社員の研修で、食生活に加えて睡眠の指導もしているという。そこで行った〝アテネ不眠尺度テスト(表1)〟で、入社時点からすでに不眠傾向がみられた。
  「学生から社会人になるというのは、生活が大きく変わる時期でもあります。単身になって悪い方向に変わることもありますが、ピンチはチャンス。良い方向に向かうこともできます。ここで不眠を放置すれば、20年後にはうつ病の社員が2倍に。その頃今の新入社員は40歳代。働き盛りの年代でうつ病が増えれば、会社としても、本人も、大変困ります。新人のうちに睡眠の立て直しを図るのが合理的ですね」と相良医師。
  また、職場での従業員の面接で、うつ病を判断するのはなかなか難しい。そこで相良医師は、睡眠障害に注目しているという。
  「うつ病の82~100%の人が、不眠を訴えています。卵と鶏、どっちが先かという議論がありますが、うつ病と不眠は、ほぼ同時か不眠が先に始まります。特に再発うつ病の8割が、前か同時に発生します。そのため、〝眠れない〟は、うつ病のアラームとしても優秀なのです」。
  メンタルヘルスのバロメーターとしての睡眠。逆にいえば、快眠生活を続けられれば、メンタル不全を遠ざけることができるのではないか。
  『働く世代の快眠10ヶ条』の1つとして、相良医師は実際に自社でも取り組んでいる、昼休みの〝パワーナップ(Power nap‥仮眠)〟を推奨した。
  これは、眠気が訪れる午後の仕事効率を高めるために、昼休みに15分ほどの仮眠をとるというもの。いわば〝昼寝〟なのだが、①寝る前にコーヒーなどカフェイン入り飲料を飲む ②寝る時間は15~20分(長いと逆効果)③目覚めたら太陽光にあたる という3ステップで、脳をクールダウンし、認知能力・集中力を回復させる効果があるらしい。
  最後に相良医師は「産業保健の中で睡眠指導を積極的に取り組むところはまだ少ないが、メタボ対策としても有効なので取り組む価値はあると思います。睡眠はムダな時間ではない。眠ることは楽しいこと、と思えるように指導していきたい」と語りました。




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