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前のページへ戻るHOME > 法人向けサービス > 健康情報(法人向け) > かながわ健康支援セミナー>職場で高める『こころの基礎体力』~育て鍛えるアプローチ
 
健康かながわ

平成28年度第2回かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が7月29日、横浜情報文化センター・情文ホールで実施された。慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室特任准教授で同大学ストレス研究センター副センター長の白波瀬丈一郎先生を迎え、「職場で高める『こころの基礎体力』~育て鍛えるアプローチ」をテーマに開催された。企業や団体の健康管理に携わるスタッフを中心に116人(96団体)が参加。  

 メンタルヘルス対策で『こころの基礎体力』を考える際、「変化する社会の中で絶対的な対策を探すのではなく、継続した対策が大切」と白波瀬先生。
 まず、「レジリエンス」について触れ、その定義をシステム、企業、個人が極度の状況変化に直面した時、基本的な目的と健全性を維持する能力と説明。「現代社会で、変化やストレスを避けることは不可能という前提が必要。何が起きても翻弄されず、学び、変化し、問題を克服できる力を人は備えることができる」と白波瀬先生はいう。
 レジリエンスが高い状態になるために必要な要素として、ハーディネス(心の強さ)が挙げられる。ハーディネスは、コミットメント(関わり合い)力、コントロール(制御)力、チャレンジ(挑戦)力が高いことが特徴。しかし、ストレス下でこうした力を発揮するのは難しい。
 そこで知っておきたいのが「マインドフルネス」の考え方だ。不安な状況下では、思考の反芻によりネガティブになり、思考を現実と思い込み、不安の渦に巻き込まれる。断ち切るために人は、考えない、気にしないという行動に出るが、マインドフルネスではこれを悪循環の原因と考える。
 不安に巻き込まれないために、心のモードを今の感覚に注意を向けて、あるがまま受け入れる「あることモード」にするといい。目標を設定して段取りを考えてゴールに進む「することモード」は、不安を気にしないようにして余計に不安になりゴールに辿りつけない。不安は遠ざけるより、向き合い続ける方が巻き込まれずにすむ。

適切な環境と養育者がレジリエンスを育む

  レジリエンスを育むには『環境』も重要。個人の平均的な身体的・心理的発達を可能にする適切な環境があれば、人は能力を発揮しやすい。またその環境でどう生活をするべきか教えてくれる、上司などの養育者がいることが大切。
 講演の中で何度も耳にしたのが、「メンタルヘルス対策を考える時、完璧を目指さないこと」という言葉。現代社会は、快適な職場環境づくりは会社だけの責任と考えがちな傾向がある。ある程度快適な環境は必要だが、会社にのみ完璧を求めすぎると個人の自立心や対応力が育たなくなる危険性がある。その意味で職場は、環境の要請に応じて個人が変わっていく「自己可塑的適応」を促進する場としても重要である。
 そして、仕事の負担増が健康問題を引き起こし、負担が増えると上司の支援や公平な評価といった仕事の資源が減るという構図にも言及。実は、仕事の負担はそのままでも、仕事の資源が増えれば健康を維持し、パフォーマンスの向上といった陽性結果に導ける。こうした対策がなされたレジリエンスが高い職場は、社員の幸福と満足度を高め、生産性の向上とイノベーションをもたらす。
 「育て鍛えるメンタルヘルス支援」というトピックでは、白波瀬先生も参加する職場復帰支援を中心としたメンタルヘルス支援プログラムKEAP(キープ)の支援内容を紹介。KEAPは、精神医学の専門家チームが職場に出向き、職場に戻ることがゴールではなく、働き続けることを目的に本人と職場の双方を支援する。

働き続ける意欲をチーム一丸で支援

復帰支援は過剰に保護的なものではなく、本人の挑戦を周囲が支援するのが基本。
 また治療期・復帰準備期・試し出勤期・復帰後支援期と目標を設定して復帰プロセスを可視化し、育て鍛える支援を行う。体調の悪化などでプロセスの途中でつまずいた時は、それを成長につなげる工夫を行っていく。目標設定を下げて働く可能性を奪うのではなく、つまずきの原因と解決策を探ることを方針としている。
 「一度メンタルヘルス不調を抱えたら職場に戻れないと思いがちですが、そんなことはありません。家族、主治医、産業医、上司・同僚・人事、KEAPによるチーム支援のもと、可能な限り精一杯働くことができるのです」と締めくくった。

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