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健康かながわ

第3回かながわ健康支援セミナー(主催=当協会)が9月1日、横浜情報文化センターで開催された。今回は「ロコモティブシンドローム:健康な老後を過ごすために気を付けること」をテーマに、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部の福井尚志教授(写真)が講演。ロコモティブシンドロームの要因である骨粗しょう症・変形性関節症・変形性脊椎症脊柱管狭窄症・サルコぺニアの詳細な解説をいただいた。県内の健康管理担当者ら50人( 38団体)が参加した。  

丈夫な運動器が健康寿命延伸の鍵

 「ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)は、骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉といった運動器に障害が起こり、立つ、歩くなどの機能が低下した状態のこと。ロコモの概念を提唱した背景には、要支援・要介護の高齢者の増加が関係している。
 要支援・要介護になる原因の第1位が運動機能の障害であり、それによる自立喪失を予防し、健康寿命と平均寿命の差を縮めることが超高齢社会においては極めて重要」と福井先生。
 ロコモは、骨粗しょう症、変形性関節症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、サルコぺニアのうち2つ以上が合併した状態をいい、その場合要介護になる危険性が高い。セミナーでは各疾患の定義、予防法や治療法について解説した。

骨粗しょう症の予防は食事、運動、検診

  最も治療法が確立されている骨粗しょう症は、骨密度の低下により骨折を起こしやすくなる骨の障害で女性に多い。骨は、骨を作る骨芽細胞と、壊す破骨細胞によって一定の割合で作りかえられ(リモデリング)、破骨細胞の働きが強まると骨粗しょう症になる。症状は、骨折、背骨の圧迫骨折による円背、身長低下、腰や背中の痛みなどがある。
 女性が骨粗しょう症になりやすいのは、若年時の骨密度の最高値が男性より低く、また閉経により骨密度が急激に低下する時期があることが原因といえる。
 予防には、若年時の骨密度をできるだけ上げて、壮年期以降の骨密度低下の速度を遅らせるのが有効。そのために適切な食事と運動、壮年期以降は検診を心掛け、正確な骨密度を測り、危険性があれば治療を開始するとよい。現在では有効な治療薬が次々と開発され、骨折を防ぐ効果が証明されている。

疾患への理解を深め適切な予防と治療を

変形性関節症は、関節軟骨の変性・消失に伴って関節の隙間の狭小化や、骨の一部が棘状に突出する骨棘(こつきょく)が現れる疾患。関節の痛みや腫れ(水がたまる)、曲げ伸ばしの制限、O脚などの症状が特徴だ。
 また、変形性脊椎症は、腰の骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が変性することによる背骨の骨同士の隙間の狭小化、骨棘の形成が原因であり、変形性関節症に似た変化が背骨に見られる。変形性脊椎症になると、さまざまな変化により神経の通路である脊柱管が狭くなり、神経に障害が起こる脊柱管狭窄症が生じる場合がある。
 さまざまな変化とは、椎間板が前方に突出する、背骨の間にある靭帯がたるみ脊髄を後方から圧迫する、背骨のずれなどがあげられる。
 脊柱管狭窄症では、安静時には症状がなく、歩き始めると下肢に痛みやしびれが生じるようになる(間欠性跛行)。また腰痛を伴うことも多い。
 そして、加齢に伴い筋肉量が低下し、筋力や身体機能が低下するのがサルコペニアだ。青信号で横断歩道を渡り切れない、買い物の荷物を持って帰れないなど日常生活に支障をきたし、転倒しやすくなるために骨折が生じて、寝たきりの原因となる場合もある。
 いずれの疾患も「防ぐことのできる要因」を取り除くことが予防につながる。たとえば、変形性関節症は肥満、膝関節に加わる過度の負荷、筋力の低下を避けることが重要。症状が見られたら、運動療法や装具療法、理学療法、薬物療法、重症時には手術をするなど 適切な治療を受けることが望ましい。

ロコチェック&ロコトレでいきいき生活

ロコモになる危険性はロコチェックで判定できる。「片脚立ちで靴下がはけない」など、7つのチェック項目(上図)に1つでも該当すればロコモの可能性があり、改善策としてバランス訓練(片脚立ち)と筋力訓練(スクワット)などのロコトレを取り入れたい。  今回の講演で、高齢化が加速する現在、ロコモを理解し、予防することが高齢者を寝たきりにさせないための重要課題という認識が深まった。
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