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健康かながわ

かながわ健康支援セミナーの第3回目が、9月28日、横浜情報文化センターにて行われた。講師に、富士ゼロックス(株)人事部労政グループ健康推進センター ALL-FX統括産業医・丹野優次先生(写真)を迎え、企業のメンタルヘルス対応の実際を紹介していただいた。当日は62団体76人の参加があった。

企業が従業員のメンタルヘルスに責任を持つきっかけとなったのが1996年の労働安全衛生法の改正および2000年の※「電通事件」最高裁判決だといわれている。労働安全衛生法の改正では、一般健康診断の事業者責任がかかることになり、それまで労災といえば有害業務対策であったのに対し、作業関連疾患にまで安全配慮義務が広がることとなった。それにより、過労死(過労自殺)やメンタルヘルスへの企業の対策も迫られることとなる。

 

富士ゼロックス流メンタルヘルス対策

現在富士ゼロックス(株)(以下FX)では、産業医7人と保健師11人、8ヵ所の事業所それぞれにいる専任の衛生管理者が産業保健スタッフとして、社員の健康管理にあたっている。FXの健康に関する基本的な考え方として、〝健康は社員が自分で守るもの。会社はその活動を支援する”というものがある。
 電通事件当時、FXではすでに『4つのケア』(図1)による対策がなされていたという。2014年に現在の新システムに移行するまで、所見の有る無しにかかわらず、産業保健スタッフによる社員全員への面談をしていた。丹野講師によると、「コスト面や産業保健スタッフへの負担はありますが、有所見者だけの面談だと、面談者が肩身の狭い思いをします。毎年面談することで社員との信頼感も増し、相談しやすくなるというメリットがあります。現在は健診結果に所見のある人を主体に、重症化予防という観点での重点化面談に移行しています」とのことだ。
 職場のメンタルヘルス活動の中心になる人は〝管理監督者”で、安全配慮義務を担う存在である。
 「管理監督者がパワハラするのは論外です。労務管理をすることも仕事だという自覚を持ってもらい、部下のいつもと違う変化を見逃さないようにしないといけません。〝いつもと違う”の背景には、病気が隠れているという視点が必要で、そのためには通常の状態の把握が必要です。通常の状態の把握には、日頃のコミュニケーションが重要となります」と丹野講師。
 部下の〝いつもと違う”ことに気付いたら、FXでは「まずは声かけをします。大丈夫ですといわれたら、いったんは引きます。話し始めたら、傾聴ですね。自分の意見を押し付けることなく、まずは聞きます。聞く時は、何かをしながらではなく、時間を取って聞きます。飲み屋はダメです。社内で聞きましょう。一度大丈夫と答えた部下には、様子を見て、必要なようなら再び声をかけます。そこでまた大丈夫だと断られたら、今度は放っておかずに本人に告げて、医師面談を指示します。〝2度目のNOはナシ!”というのがゼロックス流メンタルヘルスです」と丹野講師はいう。。

今後の課題と展開

2016年から義務化されたストレスチェック。FXでは、2013年から実施していた。現在は職業性ストレス簡易調査票(57項目)を使用し、FX流の新しい産業保健システムに組み込んで実施しているが、面談希望者は年々減っているという。
 「ストレスチェックをしたからといって、メンタルヘルス対策をしたことにはなりません。対応策をつくるきっかけとしてはいいと思います。ゼロックスでは、集団分析をして部門ごとにフィードバックをします。経年変化を数字で見せると部門代表者の意識も変わりますね。
 悪いところをたたくより、良くなったところにフォーカスをあて、〝なぜよくなったのか”を掘り下げます。各部門での改善点を水平展開することで、会社全体に改善の機運が広がります」と丹野講師。今後の課題としては、全員面談が終了して、各自のセルフケア対策が手薄になっていることをあげた。これは現在、健康診断時に保健師による相談コーナーを設けたり、各事業所での集団教育を実施するなどの対応をしている。また、グループ会社との体制の格差やグループ内での異動者、海外勤務者への対応を今後、強化していく必要があると結んだ。

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