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健康かながわ

  第4回かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が、10月31日に神奈川中小企業センタービルで開催された。今回は「健康経営」をテーマに、東京大学政策ビジョン研究センター・健康経営研究ユニット・尾形裕也特任教授(写真右)が「健康経営の推進による企業・組織の活性化」について講演。さらに、神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室・次世代社会システムの市川秀樹担当課長、アルト経営パートナー(株)加藤敦子代表取締役を迎え、神奈川県の健康経営の取り組みを紹介した。当日は31団体43人の参加があった。

米国で健康と生産性のエビデンスが多数

健康経営は、日本でも少しずつ制度が動き出し、市民権を得られつつあると尾形講師は話す。
 欧米ではこの20年ほどの間に、病気になったら医療費を払う「疾病モデル」から、医療や健康問題をコストではなく人的資本への投資と見る「生産性モデル」へと考え方が変わってきている。
 研究例として尾形講師は、米商工会議所が発表した従業員の健康関連コストに関するデータに注目。医療費は全体の4分の1に留まり、最大のコスト要因はプレゼンティーイズム(出勤していても病気やケガで生産性が落ちている状態)にあるという。東京大学健康経営ユニットの研究でもプレゼンティーイズムが健康コストの第1位を占める。
 欧米では医療費と生産性の関係に注目した先行研究も行われている(表1)。コストがかかる疾病を医療費だけで評価した場合は生活習慣病、医療費+生産性で評価した場合はメンタル疾患が上位を占める。医療費を適正化するだけなら生活習慣病予防は有効だが、生産性まで含めて考えると、予防ターゲットになる疾病が変わってくるのだという。
 また、健康経営に熱心な企業は長期的な業績も良好という研究結果も出ている。
 日本でも企業の将来性を見るときに健康経営に対する熱心度が有効な指標になり、健康経営に積極的な企業に特別金利が適用される健康経営格付・優遇金利制度が実施され始めた。

健康経営と皆保険制度

尾形講師は、健康経営を浸透させるうえで日本は欧米より有利だと述べた。皆保険制度で医療費や健診結果がデータ化され、それらを活用できる点が強みとなる。皆保険制度下で全体最適を目指すなら、母体組織(企業など)と保険者が協働するコラボヘルスの推進が重要だといえる。
 さらに、健康経営を推進する戦略として、経済産業省が東京証券取引所と共同で行う健康経営銘柄の選定や、健康経営優良法人の認定制度(表2)を紹介。こうした制度により、従業員の健康管理を経営的視点で捉える企業が増え、社会的評価を得られる環境も整いつつある。

県内でも多様な取り組み

神奈川県の現況については、保険料率から見る地域医療についての説明があり、県内の健康経営の具体策についても言及。2025年に向けて、病床機能の確保や在宅医療の充実を図る「神奈川県地域医療構想」、協会けんぽが主体で職場の健康作りを促進する「かながわ健康企業宣言」についても紹介した。

日本的経営と健康経営は好相性

尾形講師は、従業員を大切に扱い長期雇用を保証してきた伝統的な日本的経営と、健康経営の考え方はフィットすると述べた。また、健康経営を推進するうえで従業員一人ひとりの重要性が増す中小企業を特に重視し、健康経営アドバイザーを含む外部資源を活用し取り組んでいく必要があるとアドバイス。しかしながら外部に丸投げではなく、自社で評価し進めていくことが成功の鍵になると結んだ。

社会が健康経営に注目県の取り組みは高評価
アルト経営パートナー㈱代表取締役 加藤敦子

健康経営の成功には、「経営者の熱意と社内における推進体制の両輪が必要」と指摘する加藤氏。CHO構想を立ち上げ、経営陣の中に健康経営の管理者を置くしくみを確立した神奈川県は、一歩進んでいると評価した。
 健康経営に関心が高まっている背景には、労働人口の減少とそれに伴う人材不足、従業員の高齢化がある。また、健康増進に積極的な企業を社会的に評価するしくみや法制度の整備も順調。健康経営に取り組む企業に対して貸出金利を下げる、金融機関のインセンティブ付与もその一例である。このような動きを受けて、東証上場企業から健康経営に積極的な企業、1業種1種を選定する健康経営銘柄や、健康経営優良法人といった顕彰制度も浸透。健康経営優良法人は、大規模法人部門で235法人、中小規模法人部門で318法人を認定している(2017年現在)。
 一方、中小企業向けの実態調査では、健康経営の実践にあたり「何をしたらいいか不明」「ノウハウ不足」といった課題が見える。そこで経済産業省は、健康経営の実践に至るストーリーや成果をまとめた健康経営ハンドブックを作成。また健康経営アドバイザーを育成・派遣し、実践に必要なノウハウを指導している。
 WEB閲覧できる「健康企業宣言」(全国健康保険協会)や、「かながわ健康企業宣言」(協会けんぽ神奈川支部)も、健康経営のスタートツールとして役立てたい。

神奈川県が健康経営を支援
神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室次世代社会システム担当課長 市川秀樹

県では、超高齢社会の到来という急激な社会変化を乗り越え、誰もが健康で長生きできる社会を目指すヘルスケア・ニューフロンティア政策に取り組んでいます。
 その一環として、企業や団体が、従業員やその家族の健康づくりに責任を持つ、健康管理最高責任者(CHO)を設置し、健康経営に取り組むCHO構想を推進しています(図1)。
 企業の健康経営をサポートするため、本年度、「CHO構想推進事業所登録」および「企業対抗ウオーキング」を実施。
 CHO構想推進事業所は簡単な手続きで登録でき、登録事業所には企業のイメージアップに役立つ登録証やステッカーを配布します。また、県が運営する健康管理アプリ「マイME-BYOカルテ」を通じて従業員の健康状態の分析が受けられるなど、無理なく効果的に健康づくりが実践できます。
 また、企業対抗ウオーキングには「マイME-BYOカルテ」をインストールしたスマホを持って歩くだけで参加でき、毎週県のHPに参加企業ごとのランキングを発表するほか、平均歩数上位企業には知事より表彰状を贈呈する予定。
 登録・サービスはすべて無料。詳細は「神奈川県 CHO構想」と検索。ぜひ県の施策をご活用ください。

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