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健康かながわ    
本年度初の「かながわ健康支援セミナー」が、7月9日、神奈川中小企業センタービルにて開催された。ストレスチェック制度における「ストレスチェック実施後の集団分析結果を活用した職場環境の改善」について、取り組みが十分でない現状を踏まえ、北里大学医学部公衆衛生学単位の井上彰臣先生(写真)が、科学的な有効性が確認されている従業員参加型の職場環境改善の具体策を中心に講演した。当日は、68団体85人の参加があった。



ストレスチェックとは

ストレスチェック制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防と労働者自身のストレスへの気づきを促すことにある。ストレスチェックで「高ストレス者」と判断された場合、希望すれば医師による面接指導が行われ、必要に応じて就業上の措置を講じることが事業者に義務づけられており、それにより労働者が不利益な扱いを受けることを禁じている。もう1つの大きな目的は、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善だが、努力義務であることから、法制化から3年半経過した現在も具体的な取り組みを行っている事業場は少ないのが現状である。

 ストレスチェックで用いることが推奨されている「職業性ストレス簡易調査票」は、職場のストレス要因・ストレス反応・緩衝要因の3側面を57項目で判定する。検査結果として「あなたのストレスプロフィール」が労働者本人に通知され、事業者には集団分析結果を示した「仕事のストレス判定図」のみが通知される。仕事のストレス判定図は、仕事の量的負担・仕事のコントロール・上司の支援・同僚の支援の平均点と全国平均を比較し、その職場の総合健康リスクを数値化していく。
 職場環境改善は、仕事のストレス判定図と連動した「メンタルヘルスアクションチェックリスト」を用いながら具体的な方針を練っていく。

評価ツールの活用を

職場環境改善を行うにあたりケース別に方向性を見ていくと、仕事のコントロールや上司・同僚の支援が低い場合、それらを高める対策を講じる必要がある。仕事の量的負担が高い場合は、それが繁忙期など一時的な負担増でないか確認し、そのような要因がなければ量的負担を軽減する対策が必要である。その際、漠然と改善策を討議するのではなく、6領域にわけて職場環境改善活動のヒントを掲載した「メンタルヘルスアクションチェックリスト」(表1)を使って道筋を立てるといい。

 チェックリストを使うことで職場環境の改善点に気づくと同時に、何を改善するべきか見えてくる。また、職場を多角的に見られ、ストレスとなる職場環境に関心が持てる点もメリットといえる。そして、具体的な改善策が書かれているため優先して取り組みたい改善ポイントが明確になるほか、職場環境の改善における目の付け所や考え方のヒントを得られる。

 例えば、仕事の量的負担を軽減するヒントになる「勤務時間と作業編成」に関連する改善活動に取り組みたい場合、役割分担表を作成して繁忙期の作業方法を改善する、ノー残業デーを設けて残業の恒常化を見直すなど、低コストですぐに応用可能な提案がなされている。

職場環境改善活動の進め方

職場環境改善活動は、①職場環境の評価 ②組織づくり ③改善計画づくり ④対策の実施 ⑤効果評価、の順に進めるのが効果的である(図1)。職場環境の評価は調査票、観察、巡視等によって行い、改善計画づくりでは問題点をリストアップし改善方法を議論、グループワークで改善計画を作成する。

 グループワークでは、事業者が職場環境改善の意思表示をして従業員のモチベーションを高める意味で所属長が挨拶を冒頭で行い、グループワークの意義をシェアすることが大切である。その後、職場環境改善の論点を明確にする調査票とチェックリストの使い方を解説。従業員参加型のグループ討議を行い、その結果を発表するという流れがベターと考えられる。
 グルーブ討議では、職場のよい点と改善したい点を3つずつあげる。よい点に気づくと職場への愛着を再確認でき、モチベーションアップにつながる。なお、グループ討議を行う際、仕事のストレス判定図は犯人探しや管理監督者の人事考課が目的でないことを明確にしておく。

 また、仕事のストレス判定図にないストレス要因についても討議を重ね、仕事の量的負担が少なすぎる場合も従業員のモチベーションを下げかねないため、ストレス要因を多角的に話し合うようにしたい。
 グループワークで討議した改善策を実施する際は、毎年進捗状況を確認し障害の有無を把握して、問題があればその都度打開策を検討していく。効果は従業員の感想、調査票、健康診断をもとに見ていくが、医療費や疾病休業などへの効果が出るまでには数年かかる場合もあり、息の長い取り組みが必要である。ストレス対策が負担にならないために、よい点の強化とスモールステップ(目標達成を助けるために、目標への階段を細かく設定すること)を意識すると同時に、よい改善事例があれば他部署にも広め、水平展開を進めていってほしい。

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