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健康かながわ    
第2回かながわ健康セミナー(主催=当協会)が、8月29日、神奈川中小企業センタービルで開催された。今回のテーマは「働き方改革~脳科学の視点からあるべき施策を考える~」。NTTデータ経営研究所ニューロイノベーションユニットアソシエイトパートナーの茨木拓也先生(写真)が講演。茨木先生は、人間の脳・心・行動に関わる科学的知見や技術を実社会に応用する研究に携わっている。その範囲は人工知能、モノづくり、医療・ヘルスケア、人材育成・組織マネジメントなど幅広い。今回は、最新の脳科学の知見をもとに産業保健に応用するヒントを提供していただいた。参加者は51団体62人。

 茨木先生はまず脳の構造や情報伝達・記憶の仕組みなど脳科学の基本について解説。「このように話すと、脳は複雑な構造のように思われますが、意外と単純です」という。脳機能で大切なのが記憶や学習で、犬にベルを鳴らし、餌を与えることを繰り返すとベルを聞いただけでよだれが出る「パブロフ型学習」と、ネズミがレバーを押すとチーズが出てくる体験を積むとレバーを押し続けるようになる「オペラント型学習」について説明し、「これがベースとなる」と茨木先生。

 「それと同じようなことが私たちの脳でも行われ、『習慣脳』として形作られます。脳科学では習慣とは本来の目的を失い、オートマティック(自動的)に繰り返す行動」と説明する。
 例えば、お腹が空いて、ハンバーガー店でハンバーガーを食べ、「おいしい」と感じる。それを繰り返していくと店(あるいは店のロゴ)を見るだけで空腹でもないのに店に入りたくなり、ハンバーガーを食べてしまう。そしてカロリー過剰摂取(肥満)の負の習慣行動につながる。その習慣脳をわかった上で健康支援することが大切だ。

EASTフレームワーク

 健康活動を促進するのにはどうすればいいのか?
 古くから健康行動の変容へ向け、企画者(支援者)は、「健康行動に関する知識と態度」を変えることにフォーカスし、行動のリスクとベネフィットに関する情報を人々に提供し、彼らに行動を変えるよう熟慮と努力を求めてきた。しかしそうした「態度ベース」のアプローチは必ずしも成功しなかった。

 「人の脳は『習慣的・無意識的』で環境の影響も受けやすい。人間の本質は面倒くさがりであり、意識的に努力をして理想的な健康観を築くのではなく〝ちょっとだけ簡単〟に行動を変化する方法にシフトしてしまうから」と茨木先生。そこで健康行動の誘発に有効な次の4つの「EAST」フレームワークを紹介する。
 E(Easy):健康行動を誘発するためのちょっとしたバリア(障壁)をはずす。
 A(Attractive):シンプルでわかりやすいメッセージを発信するか、もしくはさまざまな色や空間のデザインで注意をひく。
 S(Social):われわれは「社会規範( 他の人がどうしているか)」に大きく影響を受ける。そこで他の人が健康行動をとっているところを見せる。
 T(Timely):人が行動を変えやすいタイミングやきっかけを見極める。
この頭文字をとって「EAST」。

また脳科学の知見から人の心を動かすワーディング(言葉のかけ方)も紹介(表)。人格そのものに言及すると人の心に届き動かす。例えば「嘘をつかないで」(行動に言及する)というのではなく、「嘘つきにならないで」(人格そのものに言及)と言葉をかけた方が効果があるという。
脳科学を理解することは、人間の行動や心を理解することにつながる。人により良い行動(健康行動)を促すための方法などへの応用も期待できる。今後の研究にも注目したい。

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