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健康かながわ

乳がん市民公開講座

3月14日、県民共済みらいホールで神奈川乳房画像研究会・神奈川乳房超音波画像研究会*主催の乳がん市民公開講座が開かれた。元宝塚歌劇団の東地美佳さんを迎えたトーク&ミニ宝塚ショー、ミニレクチャー、講演という演出で、訪れた人たちに乳房の自己触診と乳がんの早期発見・早期治療の大切さを訴えた。

出演したチャリティー番組のビデオが紹介され、華やかな衣装で登場した東地美佳さんは、歌を披露したのちに自らの乳がん体験を語り始めた。6年ほど前、右胸に「何かがぶつかる感じ」の異常を見つけて乳腺外科へ。検査の結果、乳がんの宣告を受けた。発見時のがんは悪性度の最高レベル、間もなく抗がん剤による化学療法が始まった。

医師から副作用の説明を受けた東地さんは「さあ、がんと闘うぞという心構え」のために美容室で剃髪ウィッグを用意し、ベッドでメイクを欠かさず治療に臨んだ。家族を安心させるために食事をたくさんとり「闘病中に20キロも太った人は珍しいと言われた」と当時を振り返って笑う。

がんに立ち向かうことができたのは宝塚の多くの仲間と家族、周囲の人たちの励ましと支えがあったから、と東地さん。私に限ってがんになるわけがない。東地さんもそう考えていた一人だが「私を看てくださった看護師長、画像診断技師も乳がんになって、女性にとって乳がんは他人事ではないと実感した」と言う。発見(検診受診)の遅れが、苦しいがん治療を招いた自らの体験を元に「どのがんも早期発見・治療が第一です」と訴えていた。

このあと、依田香保健師によるミニレクチャー「乳房自己検診の方法」があり、啓発ビデオ上映と自己触診のポイントが紹介された。入浴時などに乳房に触れ、鏡に映す習慣をつけると〝マイスタンダード(その人の標準を知ること)〟が設定され、ちょっとした異常に敏感になる、という行動心理学に基づいた指摘があった。

乳がん体験者から学ぶ…

続いて医師の立場から、コスモス女性クリニック院長の野末悦子さんが講演した。42歳で高校時代の友人を乳がんで失い、その3年後に自身も発症した。乳がん検診が制度化されていない時代だった。

最近では、乳がんにかかる人は4万人を超え、死亡する人は1万人を超えるなど、スライドを上映しながら乳がんについて話す野末さんに参加者は聞き入る。「早期の乳がんにはしこりや体調不良などの自覚症状はありません。痛みがあるかないかで判断するのは危険です。症状があったらすぐに乳腺外来を受診するようにしましょう」。

医療機関などの指導で自己触診率が向上した例を挙げて「20~80歳代まで、どの年齢でも乳がんにかかります。特に30歳代後半から急増し、40歳代後半がピークです。男性も乳がんにかかります。平均年齢は65歳前後、女性に比べて高齢者に見られます。何か異常を感じたら乳腺外科、乳腺外来を受診してください」と会場に語りかける。

乳房と生命を守るのは あなた自身
「20歳代では、まず毎月1回の自己触診から始めて、画像診断を含む検診をすすめます。40歳代以降は乳がん検診を1年に1回、一生続けるようにしてください」。
同じ苦しみを乗り越えて得た多くの仲間の大切さ、本人はもとより家族を含む周りの人の人生をいい方向に変える一面もある。自らの乳がん体験、エピソードを交えて語り、野末さんは講演を締めくくった。

男性や家族にも乳がん啓発を

乳がん体験者・東地さんのトーク&ミニ宝塚ショーを中心とした今回のイベントは、聖マリアンナ医科大学・川崎市立多摩病院に勤務する加藤善廣画像診断部主査を中心に準備が進められた。「楽しみながら乳がんの基礎知識を知ってもらえれば」という発想から知人を通じて東地さんに協力を打診、実現にこぎつけた。自分で見つけ、検診を受ければ乳がん死は減らすことができるというメッセージを発信できた手ごたえを感じながらも、「男性や家族にも関心を持ってもらえるイベントにすることが今後の課題」と気を引き締めていた。

乳がんの早期発見に向けて、多くの人と手を組んで
神奈川県予防医学協会検診計画部長
野口正枝

「ピンクリボンかながわ」(事務局:神奈川県予防医学協会)は、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝える啓発活動を行っています。昨年は行政、団体、企業、スポーツ施設などを会場とした15を数えるイベントに共催・協力し、多くの方に自己触診、定期的な検診の大切さを紹介しました。

イベント会場での検診車展示、ビデオ・映画の上映や触診体験を通じて、「私はかかるはずがない」という意識の方、乳がんではないかと気になっている方、不安に感じている方たちの背中を押すことができ、男性やお子さんにも乳がんに関心を持ってもらうきっかけを提供できたと思っています。

「ピンクリボンかながわ」は、乳がんの早期発見・早期治療の啓発に積極的に取り組む市町村と連携して、草の根運動を続けていきます。当県の乳がん死亡率が全国2位(平成16年)から4位(18年)へ改善したのは、地道な取り組みの成果の一つと受け止めています。今年も、地域や大学のキャンパスで自己触診方法の紹介、検診車体験を計画するなど活発な啓発運動を進めます。乳がん撲滅に取り組む方々のお問合わせをお待ちしています。

ピンクリボンかながわ http://pinkribbon-kanagawa.jp/

(健康かながわ2009年4月号)
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