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健康かながわ

保健指導サービスの品質管理

平成20年度から特定健診・特定保健指導が実施され、健診後の保健指導が行われるようになりました。その制度を活かすためには保健指導サービスの質の保証が何よりも重要となります。そこで今回は「保健指導の質の評価」の研究に取り組んでいる産業医科大学の森晃爾副学長・産業医実務研修センター所長に保健指導サービスの品質管理にどのように取組むかについて寄稿いただきました。

品質の高い保健指導 サービス機関の選定

特定健診・保健指導の実施によって、健康診断後の保健指導が制度として行われることになりました。制度として提供する以上、保健指導サービスが一定のルールに基づくとともに、安定した品質で提供されなければなりません。これは特定保健指導の実施主体である医療保険者の責任です。しかし、多くの特定保健指導が外部委託されることが予想されたため、厚生労働省は「標準的な健診・保健指導プログラム」を取りまとめ、その中で委託基準としてサービスの品質要件を明確にしました。

保健指導サービスは、専門職による対人サービスであり、提供されるプログラムだけでなく、保健指導実践者の能力や技能が、その品質に大きな影響を及ぼします。しかし、基準として保健指導実践者の質を規定することは容易ではないため、この委託基準の中では、保健指導実践者資質に関する基準は曖昧な表現にとどまっています。また、基準の順守状況は、サービス機関の自己評価に基づくことになっています。そこで、サービスの提供責任がある健康保険組合等の医療保険者が、委託先の品質を確認したうえで委託できるようにサポートするために厚生労働科学研究補助金を受け、多くの優良事例調査に基づいて開発したのが、「医療保険者が保健指導を委託する際の委託先の保健指導の質の評価ガイド(保健指導の質の評価ガイド)」でした。

すでにほぼすべての医療保険者に送付しました。産業医科大学産業医実務研修センターのHP(http://ohtc.med.uoeh-u.ac.jp/index-j.html)からダウンロードすることができます。委託先の選定に際して、候補機関に品質管理状況の質問を出し、その回答によって品質管理状況を確認するためのマニュアルで、質問事項と回答の評価方法について詳しくまとめたものです。サービス購買者の意識の変化により品質要求が高まれば、提供される保健指導サービスの品質は間違いなく向上するはずです。

保健指導サービスの 評価

今回の制度では、保健指導の成果について幅広く評価することが求められます。評価の目的には、優劣の比較、達成状況の確認、改善、仮説の検証などがあります。そのうち特定保健指導の評価の目的を〝改善"に置き、品質管理を進めることが重要と考えます。

それでは、改善のためにはどのような評価を行ったらよいのでしょうか。保健指導の目的が、生活習慣病の有病率の減少ということであれば、生活習慣病の有病率の減少目標を決め、その達成状況を評価することが基本となります。これをアウトカム評価指標と呼びます。しかし、仮にその目標が達成できなかった場合やさらに高い目標を掲げる場合、それだけではどこを改善すればよいか分かりません。

そこで、アウトカムに繋がる途中の段階、保健指導が最後まで完了したか、保健指導の中で行動目標が立てられたか、行動目標は実施され生活習慣の改善が行われたか、などを合わせて評価する必要があります。また保健指導実践者の資質については結果だけでなく、ロールプレイ研修などの機会を通じて技術評価を行っておく必要があります。そして評価結果を分析し、改善すべき事項を明確にします。すなわち評価から改善の流れは、以下のとおりになります。

①保健指導の目的に合った評価指標を幅広い段階に分けて決める。
②各評価指標について、一定期間の達成目標をできるだけ数値化する。
③達成状況を評価・分析し、改善が必要な個所を明確にする。
④改善計画を立てて実行する。

保健指導サービスの 品質管理の方法

保健指導サービスの目的を明確にし、それに合った評価をすることは容易であっても、その結果を分析して改善に結びつけるためには、品質管理のための体制、すなわちマネジメントシステムが整備されていなければなりません。
品質管理マネジメントシステム導入において具体的に求められる取り組みとしては、まず、機関としての保健指導サービスの品質に関する基本方針の明確化と品質管理を行う体制の構築があります。次に、保健指導サービスの品質管理の要素である保健指導プログラムや保健指導実践者の研修プログラム、施設や設備基準を文書化します。

このうち保健指導実践者の研修プログラムには、初期研修と独立したサービスへの移行の判断および継続研修と評価に基づくフィードバックが含まれます。その上で、基本方針の実現のために年間目標を決め、年間目標達成のための年間計画を立て、それらに基づき運用管理を行います。
そして定期的に進捗管理を行いながら、保健指導サービスの評価を、対象集団全体、サービス対象者全体、様々な側面からの層別ごと、そして保健指導実践者ごとに行います。その上で内部監査を行い、その結果と運営状況、評価結果を合わせて品質管理システムの改善を図るという作業が求められます。

各機関でのこれらの取り組みを容易にするために、現在私たちは、厚生労働科学研究費補助金を受け、「保健指導サービス品質管理システム導入支援ガイド」を作成中であり、神奈川県予防医学協会を含む3つの機関でモデル事業を行っています。その結果、今以上に信頼できる保健指導サービスが提供されるようになると期待しております。

おわりに

どのようなサービスであっても、提供業者・機関の品質が向上するためには、サービスの購入者の意識が大切です。従業員や組合員に提供される保健指導サービスの品質については、健康保険組合や企業の担当者にもっとも大きな管理責任があることを自覚してだきたいと思います。また、そのような責任のあるサービスの一部を外部委託するのであれば、当然委託先のサービス品質についても責任を負うことになります。ぜひ、委託先の選定時や一定の期間ごとに、保健指導サービスの品質管理状況を確認していただきたいと思います。

(健康かながわ2009年8月号)
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