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長寿村の100歳食

新年、あけましておめでとうございます。お正月には、お雑煮やおせち料理に舌鼓をうちながら新年をお迎えになったことだと思います。お雑煮やおせち料理は、その地域ごとに異なり、その土地で受け継がれてきた知恵や文化があり、それが今に至っているといわれています。
今年の新年号では「長寿食」を取り上げたいと思います。日本全国各地の長寿村を訪ね歩き、長寿食を研究してきた食文化史研究家で、西武文理大学非常勤講師の永山久夫氏に「長寿村の100歳食」をテーマに寄稿していただきました。

長生きをお望みの世界中の皆さま。どうぞ日本にいらっしゃって下さい。
日本には歴史に裏づけされた、すばらしい「長寿食」のノウハウがたくさんあるのです。現在の日本食にも、古代以来の長寿食がたくさん残されています。
さぁ、いっしょに食べて、仲良く長生きしましょう。歴代の長寿食も、ちゃんと記録されて残っています。

まずはじまりは、あこがれの女王が統治していた、古代の〝長寿村〟である邪馬台国(やまたいこく)。
中国の史書『魏志倭人伝』の中に、「倭人(古代日本人)はたいへん長生きで、一〇〇歳、あるいは八、九○歳まで生きる」とあるのです。倭国の中で超大国だったのが邪馬台国で、そこの女王が卑弥呼(ヒミコ)。
「倭人長命」は『魏志倭人伝』の後に同じく古代中国で記された『後漢書倭伝』にも「多くは長生きで百余歳に至る者はなはだ多し」とあるのです。

2つの長寿食

驚いたことに、両書に、その後現在まで食べ続けられてきた二大長寿食のルーツが記されているのです。
ひとつは『魏志倭人伝』の「生菜」。もうひとつは『後漢書倭伝』の「菜茹(さいじょ)」。
両方とも「菜」が使われている点に注目。菜は野菜の「菜」も示しますが、「おかず」という意味もあります。
前者は「おかず」で生食だから「刺身」とみてよいでしょう。
後者の「菜」は野菜のことで、下に「茹」がありますから、ここでは「野菜汁」。ヒミコの時代は今から1800年くらい前ですが、すでに味噌のルーツともいうべき豆醤はあったと推測されますから「みそ汁」のルーツこそ「菜茹」といってもよいと思います。

現在の日本には100歳以上の方が4万人以上いますが、もっとも好きな食物として「刺身」をあげますし、「みそ汁」は、毎日のようにとっています。

3番目の長寿食

「刺身」と「みそ汁」こそ、日本民族の二大長寿食なのです。
刺身には情報化時代には欠かせない、脳の機能を向上させるDHA(ドコサヘキサエン酸)や血行をよくする成分などが豊富。みそ汁の味噌には物忘れなど脳の老化を防ぐレシチンや女性の骨を丈夫にするイソフラボンなどが多い。

3番目の長寿食は「梅干し」。時代はずーっと下るが、戦国時代の〝長寿村〟ともいうべき村は現在の神奈川県の小田原市です。
この土地を拠点にして戦国時代をしたたかに生き抜き、しかも驚くほど長生きしたのが北条早雲(1432?1519)で、88歳で大往生。早雲は裸一貫で浪人からのし上がり、小田原城を乗っ取って関東制覇の足がかりを築いた実力大名で、三男の北条幻庵は97歳まで長生きしています。この親子が食膳に欠かさなかったのが「梅干し」といわれ、今でも小田原は梅干しで有名です。

梅干しをなめると口中いっぱいになるほど唾液が湧く。その酸味のもとはクエン酸やリンゴ酸などで、たいへん不老長寿に役立つ。唾液の中には若返りホルモンが含まれているためです。梅干しの酸味には肝臓を丈夫にして血行をよくする作用もあります。

長寿食の発見

日本の高齢者の割合が急速に進んでいます。65歳以上が総人口の22パーセント強。75歳以上も急増し、10パーセント強。明治生まれの方が22万人。全員があと3年で100歳となり、日本のスーパー長寿者は10万人を軽く突破します。

筆者は昨年の2月まで日本経済新聞に「長寿の食卓」というタイトルで各地の長寿食レポートをしました。
その取材で判明したのは、若者に負けないほど元気で、陽気で、いつも「ワッハッハ」と笑いながら老春(高齢者の青春)を謳歌している方たちが、実に多いということでした。

食生活をよくよく研究してみると、どこの長寿村でも共通して食べている「食材」があったのです。
取材6年間の収穫は、元気で明るく、いかにも愉快に長生きしている方たちの「長寿食発見」でした。その食材は6種で「胡豆魚梅参茶」となります。
「ごまさかうめじんちゃ」と呼んでください。それぞれの「食材」の長寿への働きを記してみましょう。

東西南北の「胡豆魚梅参茶」とは?

スーパー長寿者が食べて老化を防いでいる6種の食材を参考に長生きいたしましょう。

①胡麻(ゴマ)の力
平安時代の医術書に「久しく服用すると体が軽くなって若返り寿命をのばす」とあります。若さを保つビタミンEや頭の回転をよくするビタミンB、骨を丈夫にするカルシウムもたっぷり。
②豆(大豆)の力
「ワッハッハ」と面白く長生きするために大豆に注目。物忘れを少なくして記憶力をよくするレシチンや動脈硬化を防ぐサポニンも含まれています。
③魚(さかな)の力
一物全体食の可能なイワシは「海の玄米」と呼ばれるほど栄養の宝庫。脳を活性化して記憶力や学習能力を高める成分、さらに心臓を丈夫にするタウリンを含む。
④梅(梅干し)の力
梅干しの酸味には疲労回復や不老作用が認められていますが、カルシウムの吸収をよくする効果でも注目され、血液のサラサラ作用でも期待されています。
⑤人参の赤色の力
赤い色素はカロテンで抗酸化力が強く、老化を防ぐだけではなく、がんや動脈硬化の予防、体の免疫機能の強化効果でも知られています。
⑥茶の力
ストレスや過労、過度の飲酒、排気ガスなど、さまざまな因子が原因となって体が酸化(老化)しますが、それを防ぐのが、お茶に含まれているカテキンなのです。

(食文化史研究家・ 永山 久夫)

(健康かながわ2010年1月号)
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