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 アスベスト(石綿)による健康障害が問題化されているのを受け、神奈川県予防医学協会では、急遽アスベスト対策をテーマに、かながわ健康支援セミナー<特別編>を9月8日に松村ガーデンホール(神奈川予防医学協会7階)で開催した。
  同セミナーでは、アスベスト問題に詳しく、実際に臨床現場でも携わっている横須賀市うわまち病院の三浦溥太郎副院長を迎え、「アスベストによる健康障害と対策」をテーマに講演が行われた。産業保健に携わる92団体120人が参加。今回は講演内容のダイジェストをお伝えする。



アスベストとは?  
 アスベストは天然の繊維状の鉱物で、日本語では石綿(いしわた・せきめん)といいます。種類は、繊維がカールした「蛇紋石系」(クリソタイル)と繊維が直線的な「角閃石系」(クロシドライト、アモサイトほか)の2つあります。現在使われているのは95%以上がクリソタイルです。関西のある企業で問題になったのはクロシドライトで、現在は使用禁止となっています。
  耐熱性、絶縁性、耐腐食性に優れており、断熱材や絶縁材をはじめ、自動車のブレーキや建築材などに広く利用されてきました。一方では人体に有害で、炎症や肺の線維化を引き起こすほか、発がん性もあります。
  日本では良質のアスベストは採れません。戦後復興期から高度成長期にかけて大量に輸入され、1974年には輸入量が35万トンまで昇りました。その後も平均30万トン前後が輸入されましたが、バブルの崩壊と共に輸入量は減少しました。
  アスベストによる疾患のうち、中皮腫という胸膜の病気は、最初に吸い込んでから平均約40年を経て発病します。そのため、これからますます患者が増える可能性があります。



アスベストを曝露した時の医学的な証拠
 アスベストの繊維は非常に細かく、肺の奥にあるブドウの房のような肺胞付近まで届きます。ここまでくると体外には排出されません。どれくらいの量を吸い込めば発症するかはまだわかっていませんが、アスベストを曝露した時の医学的な証拠として、次の3つがあります。
@石綿小体…ある程度大きい繊維が中心となり、串団子状になったもの(写真1)。病理標本1枚のスライドに石綿小体が1本以上あれば、職業的に曝露した証拠といえます。
A石綿繊維…非常に細かい繊維は、石綿小体にはならず、繊維のままで発見されます。
B3胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)…肋骨の内側にある胸膜が厚くなり、本来透明な部分が白く濁ってきます(写真2)。これがあれば、かなりの量を吸っていた証拠になります。ただし、画像診断で100%わかるわけではなく、正確に診断するには、肺の手術時などに確認するしかありません。


写真1 石綿小体(走査顕微鏡像)


写真2 胸膜プラーク


健康障害
 アスベストによる疾患には、次のようなものがあります。
@石綿肺…じん肺のひとつで、胸部X線写真では肺の下のほうに陰影があるのが特徴です。合併症として肺がん、中皮腫などがあります。かなり大量のアスベストを5〜10年といった長期間吸い続けないと発症しません。
A肺がん…アスベストによる肺がんは、石綿肺があれば起きやすいのですが、石綿肺がなくても発症します。潜伏期間は20〜30年で、じん肺よりも低濃度でも起きます。もちろん曝露量が多いほど発生しやすいと言えます。
 また、喫煙により発生率が相乗的に多くなります。職業的に10年ほどアスベストを吸っていた人は、吸ってない人と比べて5倍くらい肺がんが多くなります。一方、1日20本のタバコを30年間吸っていた人も5倍くらい肺がんが多くなります。しかし、アスベストとタバコを両方吸った人では、5×5で25倍も肺がんになりやすいといわれています。
  アスベストを吸った人はできるだけ早く禁煙を。アスベストは肺から消えませんが、タバコを止めれば3年で発症率は半分に減ります。10年後にはタバコの害は払拭され、発症率は5倍になります。
B中皮腫…中皮腫とは、腫瘍細胞が中皮細胞由来、または中皮細胞への分化を示す腫瘍のことで、胸膜、腹膜、心膜に発生します。
  最初の曝露から発病までの潜伏期間は平均約40年と長く、退職してから発症するケースが多数あります。2年生存率が30%と低いのが特徴です。
  診断がとても難しい病気で、胸水細胞診ではクラスXが半分しか見つかりません。しかし血中のメソテリンを測定する方法が新たに開発され、中皮腫を早期発見できる可能性がでてきました。
  治療は、胸膜中皮腫の場合、早期であれば、片側の胸膜と肺を全部摘出する「胸膜外肺全摘術」も選択肢の一つになります。非常に難しい手術ですが、世界最先端の施設では、5年生存率が40%まで上がってきたようです。
  化学療法では最近、アリムタとシスプラチンという抗がん剤を組み合わせた治療の有効性が証明され、我が国でも治験が始まりました。
C良性胸膜疾患…良性石綿胸水とびまん性胸膜肥厚があります。良性石綿胸水には胸痛、発熱、咳、呼吸困難といった症状もありますが、無症状の人も少なくありません。くりかえし発症するうちに胸膜が厚くなり、肺活量が減っていきます。 びまん性胸膜肥厚は、胸膜が厚くなって、最終的に肺活量が減る病気です。%肺活量は、正常では80%以上ですが、びまん性胸膜肥厚では60%未満に減ることもあります。

早期発見が可能
 
 アスベストによる疾患のうち、石綿肺と肺がんは早期発見が有効です。40歳以上でアスベストを吸い込んだと心配している方は、年1回は胸部X線写真とヘリカルCTによる健康診断を受けるとよいでしょう。
 

 

(健康かながわ2005年10月号)

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