セミナーレポート

2021年1月20日 オンラインシンポジウム
産・官・学「Withコロナ時代の健康管理」

「治療ノウハウの確立 ワクチンへの期待」 石川義弘・横浜市立大学副学長
 日本ではこれまでに約30万人が新型コロナウイルスに感染し、全人口の約0.03%だ。そのうち重症化率は1〜2%で、重症化しやすいのは高齢者と基礎疾患のある方で、年齢でいうと50歳代以下は0.3%だが、60歳代以上は8.5%になる。30代を「1」としたときの重症化率は80歳、90歳代ではでは70倍以上になる。
ただ日本の人口当たりの感染者数、死者数は全世界の平均と比べると低い水準で推移している。アメリカの感染者数は2400万人、イギリスが350万人、ドイツは200万人で、特に公衆衛生や感染予防研究の先進国であるアメリカ、イギリスでの感染率の高さは驚きだ。日本の感染率が低い要因としてファクターXの指摘もあるが、私は日本人独自の民意、気遣いも関係しているのではないかと思う。

感染が拡大している現在、何度も言われていることだが、職場では「大人数で」「マスクなしで」「会話する」ことに注意したい。もし感染したら、無症状でも外出しないことに限る。感染者がさらに複数の人に感染させないことが大切だ。治療については、特効薬はまだないが去年に比べると治療ノウハウが確立され回復の道筋ができ、死亡率も下がっている。
今最も注目されているのはワクチンの開発、接種についてだと思う。国内外で多数の研究開発が進み、着実に準備が進んでいる。ワクチンを打った後に抗体ができるかがポイントであったが、昨年末に横浜市立大の研究グループは感染を防止する中和抗体を測る仕組みを開発した。その結果、感染から回復した人が半年後では中和抗体を保持していることがわかった。今後、1年後の結果も発表される予定である。これは素晴らしい結果である。
すでに世界の一部では接種が開始され、イスラエルでは3人に一人が接種済である。日本でも2月中下旬から接種が開始される予定だが、今後ワクチンは十分な量が確保されるので、皆さんも接種してほしい。新型コロナウイルスが社会に与えたマイナス面は大きいけれど、一方で「働き方改革」「公衆衛生意識の向上」「バーチャル技術の向上」などブラス面もあると考えられ、「withコロナ」の在り方もみせてくれたと思う。最後に、日本では100年前に「スペイン風邪」が流行ったとき莫大な感染者、死者を出したが、それでもワクチンやPCRもなく、乗り越えた経験がある。日本人はこのコロナ禍もきっと乗りきれるだろう。

「各企業での取り組みが大切」 
成瀬有沙・(株)大成ERC 代表取締役

 弊社は1971年に設立され、現在は総合人財サービスを展開している。主に製造業、物流、食品加工業への人材派遣を行い、派遣スタッフ約160名の9割が南米を中心とした外国籍であることが特徴だ。
新型コロナ感染拡大への対策にはいち早く取り組み、その内容も常に更新している。基本的に朝晩の検温、不織布マスクの使用、アルコール消毒、社内オゾン除菌、アクリル板の設定などを徹底している。昨年11月に派遣先にアンケート調査を行ったところ、徹底した対策が行われていたのは38社のうち約3割だった。規模に関わらず検温もマスク着用の義務、ルール設定のない企業があり温度差を感じた。
第3波以後、スタッフの対策を強化したが、派遣先からも就業中はもちろんプライベートにおいても感染対策を求められるようになった。スタッフ一人ひとりに常に注意喚起をして自覚してもらう。給与明細にはその国の言語で伝える。常に伝え続けることも対策の一つである。どの企業も感染者を出したくない、その点は一致しているので、問題があれば話し合い解決して、情報を共有していくことが大切だ。
残念ながら昨年末に別々の派遣先でスタッフが感染した。保健所の陽性判定から2日後に連絡があったので、指示を待つ前に企業として判断する必要性も感じた。正しい情報を入手して企業としてできるかぎりの体制を整えていくべきと、その後は、感染時における対応マニュアルを作成した。緊急宣言が発令されているなか、さまざまな機会を通して情報収集、交換しながら、先を見据えて取り組みを強化していきたい。

中村隆幸・横浜市 経済局 経営・創業支援課長
 福祉局が連携して市内事業所の健康経営の推進を支援している。健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるとの考えのもと、健康増進を経営的視点から考え、戦略的に実践することである。現在「横浜健康経営認証制度」「健康経営支援拠点の運営支援」「健康経営の効果測定」「ハンドブックの発行等」を施策の柱に、セミナー、相談会の開催、情報発信などを行っている。年々、健康経営の認知は広がり、生産性向上やリスクマネジメントをはじめとするメリットを実感してもらっている。「働き方改革」への取り組みが「従業員の心身の健康」につながっていることもデータとして顕著に表れている。 今年度はコロナ禍においてテレワーク導入助成をはじめ多面的なサポートを展開してきた。また健康経営認証取得の条件に感染症対策を必須化した。民間企業と連携したプロジェクトも進行中だ。コロナ禍であるからこそ、健康経営をいっそう推進していきたい。企業としてできるかぎりの体制を整えていくべきと、その後は、感染時における対応マニュアルを作成した。緊急事態宣言が発令されているなか、さまざまな機会を通して情報収集、情報交換しながら、先を見据えて取り組みを強化していきたい。

2020年12月16日 オンラインセミナー4
「レジリエンス withコロナ時代~変化に求められる力~」

 レジリエンスとは、想定外の出来事が起こった時、その困難と変化への対応力や耐性、挫折や苦境からの回復力や強さ、弾力性や元に戻る柔軟性を意味している。
苦境からの回復、変化への適応力だけではなく、その経験をとおして人間的な成長をしていることもレジリエンスの持つ力だと考えている。
講師の市川佳居氏(臨床心理士・医学博士・レジリエ研究所所長)が、レジリエンスに興味を持ったきっかけは3・11東日本大震災の被災地支援の時であった。メンタルケアの現場では被災のストレスでうつ症状を呈する人がいる一方、大惨事の渦中にいても、他人を思いやり、率先して精力的に復旧作業にあたる人々がいた。「この人たちはどうして、こういられるのだろう、こういった人はうつ病にはならないのか」といった疑問が浮かんだ。その後、米国、欧州の学会に参加するなかでレジリエンスに出会った、という。

レジリエンスの6つの要素
 レジリエンスを高めるために必要な6つの要素(図)。これらのバランスの良さがレジリエンスの向上に重要になる。「自分の軸」はいわゆる価値観。しっかりと自分の価値観を持っている人は判断・決断ができる。1つの考えに縛られず、いろいろな人の意見を聞いて考えられる「しなやかな思考」。目標を定めて、自身をマネジメントしてゴールに向かう「対応力」。危機の時こそ人的ネットワークが求められ、それを築けるのが「人とのつながり」。困難な時にもあせらず、怒らず、追い込まない平常心を保てる「セルフコントロール」が求められる。病気にならず困難な状況を乗り越えるためには、健康的な「ライフスタイル」が必要だ。
レジリエンスの伸ばし方について、市川氏は「短所にフォーカスして、そこを変える努力は必要ありません。自分の長所を知り、そこを使って新しいことにチャレンジしていくと自然と短所も変わってきます」という。

2020年11月26日 オンラインセミナー3
「これからこうなる!?Withコロナにむけた健康管理と労務管理」


新型コロナウイルス感染拡大を機に、多くの企業では、Withコロナの生活や働き方を前提とした健康管理や労務管理が求められている。今回は、テレワークにおける健康管理上の課題、リモート環境下での健康管理などについて、にしのうえ産業医事務所の西埜植規秀所長が講演した様子を伝える。

 新しい働き方への対応
 新型コロナの感染対策で、テレワークをはじめ新しい働き方が導入されて1年近くになる。昨年10月に実施された「働く人の意識に関する調査」では、テレワークの課題として、自宅の環境あるいは通信環境の整備などがあげられ、労務管理においては、仕事への評価や上司などから指導を受けられないことへの不安が浮かび上がっている。コミュニケーションを活性化する機会をもつことが必要だ。上司、従業員、人事労務、産業保健スタッフの連携を考えることで、事業所の労務管理と健康管理が相互機能し、生産性などの面でも良い影響が生まれるだろう。
テレワークが始まりオンライン面談を活用する場面が増えた。メリットとしては、時間的・身体的負荷の軽減、対象者への迅速な対応、遠方・分散事業所の展開が容易といった点がある。一方デメリットは、得られる情報の限界、コミュニケーションに工夫が必要などがあげられる。アフターコロナにおいても、オンライン面談は継続されると思うが、これらメリット・デメリットに留意しながら活用したい。
地理的な面で問題がなければ、メンタルヘルス不調や復職時における面談など判断が難しい対応においては対面面談が望ましい。状況に合わせ、あらかじめ対面面談を行う条件を設定しておくことも必要だろう。

 安全配慮義務を果たす
 テレワークにおいては、従業員の健康管理上の変化に伴い、健康管理の再徹底が大切になってくる。たとえば、在宅従業員がうつ病やエコノミークラス症候群になった場合、使用者は損害賠償責任を負う必要があるだろうか?
重要なのは安全配慮義務の観点から社会通念上相当とされる防止手段を尽くしているかどうかだ。具体的には、適切な健康情報の提供、啓発を実施することが求められる。
詳細については、厚生労働省の『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』を参照してほしい。
テレワークでは、運動不足による体重増加、肩凝り・腰痛やオーバーワークによる疲労蓄積、生活リズムの崩れ、コミュニケーション不足からくるメンタルヘルス不調といった変化が生じやすい。そのため、室内でできる運動や作業環境の整備、規則正しい生活リズム、オンオフ・休憩のとり方などといった情報を定期的に提供しておくことが肝心だ。イントラや衛生委員会などで周知しても一部の従業員にしか伝わっていないことも多い。多くの従業員に伝わるようアプローチ方法を検討いただきたい。

 より健康へシフトするチャンス

コロナ禍において、糖尿病や高血圧などの基礎疾患をもつ従業員が、医療機関での感染リスクを恐れ、通院や内服を怠ることが散見される。その結果、健康状態の悪化や脳・心血管障害など二次被害といえる健康障害を発症する可能性が懸念される。産業保健スタッフはそのリスクを説明、周知するとともに、定期的な通院や内服の継続を促すよう注意喚起することが重要である。受診することに強い不安を感じる従業員には、主治医へ相談の上、オンラインや電話での診療などの活用を勧めるのも一案だ。オンライン診療が可能なクリニックの情報については厚生労働省のHPで確認して欲しい。
事業者には基礎疾患を有する従業員に対し、感染リスクを低減するよう配慮が求められる。また配慮すべき対象者の基準や配慮内容も定められていないため、現場での判断が求められる。本人の健康状態、年齢、感染状況、職場環境(通勤含む)、職務内容等を考慮した上で、必要に応じて実現可能な労務管理上の配慮を実施する必要があるが、現場での判断が難しいこともあるだろう。個人情報の関係から産業保健スタッフが個人を特定し配慮することも難しいため、主治医からの意見書をもとに産業保健スタッフと人事労務担当者が協議し対応することも一案といえる。
 ほかにも検討する一例として3E分析(*)があるので、詳しくは日本産業保健法学会のHPを参考にしていただきたい。
感染予防への意識が高まっている今こそ、「より健康へシフトするチャンス」だと考えている(図1)。基礎疾患を有する従業員だけでなく、すべての従業員の健康レベルを高めることが重要である。前述のような適切な健康情報の啓発や事業所特性を考慮した健康づくりに加え、健康診断の事後措置強化など、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを組み合わせた健康施策の推進を積極的に進めていただきたい。

*感染リスクの分析手法の1つ

 コミュニケーションの機会を増やす管理職の対応がカギ
 「コロナうつ」という言葉が生まれるほど、精神面への影響を来たす人の割合は多い。ウイルス自体への恐れもあるが、コロナ感染を機にテレワークが急速に広がったことでの環境変化も関連するだろう。メンタルヘルス不調の要因として、生活リズムの乱れ、孤立感、双方向の意思疎通の低下などがあげられる。対応のポイントとしては、第一にコミュニケーションの機会を増やすことだ。メールやチャットなどだけでなく、顔が見える形での対応を作ることで、お互いの様子を確認しあうことがいいだろう。またつながりを持つため、雑談の場を作るよう工夫している職場もある。普段話ができない従業員にとってはリフレッシュにつながる。
次にラインケアの強化も重要だ。日頃の様子がわかりづらい環境下では、これまで以上に管理職の関わりが重要となる。管理職には、1on1など個を意識した対応を勧めている。会議などでは話しづらい相談や気持ちなどを引き出すことができる。また部下から相談しやすいよう、管理職の予定がわかるよう明示しておくなどの工夫も有用だ。それでも上司には相談しづらいといった従業員もいる。産業保健スタッフや社外の相談窓口などを整備し、周知しておきたい。
今、各事業所では復職の判断基準を迷うという声を聞く。テレワーク下においては条件設定が難しいが、復職後の働き方をベースに復職の条件とすることがいいのではないかと、個人的には考えている。
今後さらにニューノーマルな働き方に対応した健康管理が求められる。今回、紹介した内容は一部であるが参考にしていただければ幸いである。

2020年11月5日 オンラインセミナー2
「withコロナのセルフケア」


新型コロナウイルスの流行で生活様式が一変し、今まで感じたことのないストレスを抱える人が多い昨今。Withコロナ時代を上手に乗り切るには、まずストレスの整理と理解が必要だという。感染症が流行すると病気と死への恐れや大切な人を失うかもしれない無力感を抱き、自分に感染の疑いがあると仕事を失ったり、隔離されたりするかもしれないという不安に見舞われる。こうした感覚は自分だけでなく、感染症流行時には共通の反応であることを理解しておきたい。コロナは不明瞭な部分が多い未知のウイルスなので、よりナーバスになるのは当然と考えてよいだろう。 また、自宅で過ごす時間が長くなり環境の急な変化にストレスを感じる人も多く、メンタル不調の要因が「テレワークによるコミュニケーション不足・孤独感」と考えた人は60%もいるようだ(図1)。テレワークによるストレスの主要因は、PCや通信などのオンライン環境の変化、在宅ワークによるコミュニケーション不足やスケジュールを細かく管理されることへの苛立ち、そして気分の切り替えの難しさ、家族との生活リズムの相違があげられる。

チェックリストを活用しストレス反応を知る
 在宅勤務などで蓄積したストレスに対処するには、自分がストレスを感じていることを自覚する必要があるため、今回チェックリストを使ってストレス反応の自己分析を実施した。チェックリストは「急に息苦しくなることがある」「好きなものでもあまり食べる気がしない」など30項目で構成され、該当項目が11個~20個だと本格的なストレス状態にあり、21個以上は日常生活に支障をきたす可能性があるため専門医に相談することが望ましい。 チェックリストは該当数だけでなく、自分がストレスを感じたとき心身に現れる反応を知るバロメーターとしても役に立つ。ストレス反応を感じたらコロナのネガティブ情報から距離を置き、この状況でストレスを抱えるのは当然と考えたほうが楽になる。加えて規則正しい生活を心がけ、理解してもらえる相手と不安を共有し、必要であればカウンセラーのいる相談窓口を利用してストレスを溜めない工夫をしていきたい。

習慣化したいストレスマネジメント
 「ストレスマネジメント」を知り習慣化すると、ストレスの蓄積を防ぐことができる。デスクワーク勤務であれば「筋弛緩法」(図2)が有効だ。長時間同じ姿勢をとり、硬くなった上半身と下半身の大きな筋肉にアプローチし、一度筋肉を緊張させてからストンと力を抜く。すると筋肉が緩む感覚を意識でき、その状態を維持しやすい。 思考からくるストレスには考え方の転換が有効だ。例えば「上司に挨拶をした際に返事がなかった」といを感じたとき、「頭に浮かんだ考え」と「そのときの感情」を言語化してみる。大抵はネガティブなことが浮かぶが、もしかしたら挨拶が聞こえなかったのかもしれないなどの「別の考え方」を書き出す。考え方を変えるとどの程度ストレスが減るのか、数値化すると実感を得やすい。感情はセルフコントロールでき、視点が柔軟であるほどストレスを減らせることを覚えておきたい。 また、Withコロナで疲れた脳にはマインドフルネス瞑想が効果的。過去への拘りや未来への不安には、目を閉じて呼吸に集中して今この瞬間に意識を向けることで、感情の安定と脳の休息につながる。雑念が浮かんだときは、息を吸ってお腹が膨らむ、吐いてお腹がへこむ感覚に意識を移すと集中力が持続する。 他には心配事を人に話すまたは文章化することでネガティブな感情を解放したり、散歩やランニング、筋トレなどを行ったりするなど、自分に合ったストレスマネジメントを見つけて習慣的に続けることが大切。それでもストレスから逃れられないときは会社の仲間、友人、家族に打ち明け、時には専門の窓口に相談して不安定な現状や感情から抜け出す糸口を見つけたい。

2019年8月20日 実践セミナー3
「働き方改革と脳活・腸活」


 8月の実践セミナーのテーマは「中小企業の働き方改革」と「はじめよう!脳活、腸活」。神奈川働き方改革推進支援センター相談員で特定社会保険労務士の渡辺栄英先生を講師に迎えた「中小企業の働き方改革について」では、働き方改革の目的と内容、取り組みをテーマに、細部の枠組みの解釈や、年次有給休暇の取得、時間外労働の上限規制、正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差の禁止が、それぞれ2019年、2020年、2021年と段階的な施行など、中小企業ならではの働き方改革の注意点を改めて確認した。特に人事労務と従業員の意識にギャップがありがちな残業時間の問題など、現場での悩みが質問として会場から寄せられた。 後半はメンタルヘルス面にも効果がある元気の出る食事のとり方を管理栄養士、公認スポーツ栄養士である本協会の今井愛栄養士の「はじめよう!脳活、腸活」。脳と腸の関係、食事と仕事のパフォーマンスの関係を学んだ。

2019年7月24日 体力検査
「あなたのロコモ度調べます」

 横浜金沢ウェルネスセンター7月の月例イベントは24日、「体力測定で健康年齢を知ろう」と題して、周辺の職場に勤務する人々の体力測定を横浜市金沢産業振興センター、ランチョン・オアシスで行った。

運動器が衰え、「立つ」「歩く」など日常の動作が困難になるロコモティブシンドローム(運動器症候群)は、日常生活の自立度を低下させ、健康長寿を疎外する大きな要因の一つである。骨・筋肉・関節・靭帯など、身体の動きに関わる組織や器管を維持するには、現在の状態を知り、それに合わせた日々の運動や食事、生活習慣を心がけることが必要。
体力測定では、個々の身体の状況を知るために「握力」「長座体前屈」「閉眼片足立ち」「立ち上がりテスト」「2ステップ」「下肢伸展能力」の測定と「ロコモ度テスト」のアンケートを実施。体力検査といっても、動ける服装であれば約15分で測定できる簡単なもの。参加者は自分の結果に一喜一憂しながら、和やかに行われた。

2019年6月27日 実践セミナー2『かながわ健康企業宣言』
-企業の元気は従業員の健康から!活力あふれる企業のヒント-

横浜市金沢産業振興センターで行われた2回目の実践セミナー。
前半は「かながわ健康企業宣言〜企業の元気は従業員の健康から!活力あふれる企業づくりのヒント〜」と題して、協会けんぽ(全国健康保険協会)神奈川支部の滝川樹弘さんから、中小企業の従業員や家族をはじめ国民のおよそ3人に1人が加入している協会けんぽの事業の概要や検診、保健指導など健康経営へのサポート、企業の健康経営への取り組み事例を聞いた。
後半は湘南とつかYMCAウエルネススポーツクラブ健康運動指導士の瀬戸俊孝さんから、コグニクション(認知)課題とエクササイズ課題を同時に行うことで脳と体の機能を高め認知症予防の効果があるコグニサイズの実践指導を受けた。しりとりや短時間に知っている情報を回答数を数えながらで出し合い、さらに足踏みや、決めた数とその倍数に手や足の動作を組み込むエクササイズは、意外に難しく、脳に刺激を受ける感覚が得られた。
また、当協会では9月30日まで振興センターサービス棟1階のランチョン・オアシスにブースを開設。健康情報の展示に加え、血圧、体重などを自由に測定できる。

2019年5月22日 横浜市大Presents 地域連携 特別セミナー
食と健康『インドスパイスを科学する』

 今回は食育月間を前に、横浜市立大学と連携し、「横浜市立大学地域連携セミナー」と銘打ったはじめての試み、食と健康をテーマとしたセミナーを開催した。会場はヨットハーバーを臨むヨコハマベイサイドマリーナプラザ。

当センターの運営パートナーである横浜市大医学群長・石川義弘教授のレクチャーからセミナーは始まった。石川教授は柳とアスピリンの関係から、植物の持つ抗菌作用、坑酸化作用に触れ、インドやスリランカ、インドネシアなどに多くみられるスパイスは、日本や中国では漢方薬に、ドイツなどのヨーロッパ圏ではハーブ薬として、薬効が科学的に証明される以前から、人々は経験からその効果を知り、生活の中で使われ続けてきた。
最近はこれらのスパイスの研究が盛んに行われるようになり、科学的根拠が証明され、スパイスと健康に大きな関わりがあることがわかってきた。「どうせカレーを食べるなら、ルーカレーよりもスパイスカレー」と石川先生。

続けて、カレー専門の出張調理人として活躍し、スパイスについて造詣が深い、AIR SPICE代表水野仁輔氏からスパイスカレーの作り方のレクチャーを受け、スパイスや素材に対する深いこだわりに触れた。水野氏作のスパイスカレーの試食では「ルーカレーよりも簡単に作れそうですね。スパイスを十分に煮込んでからチキンを入れるのは意外でした」「口に入れる部分によって、スパイスの味が変化しますね」「想像していたよりもあっさりしていますね」と参加者はさまざまな感想を語っていた。

2019年4月18日 経営者のための健康セミナー6
『マインドフルネスの基礎と実践』-集中力と受容力を高める-

マインドフルネスを健康経営へ

今回の健康経営セミナーは、職場のメンタルヘルス対策として、近年クローズアップされているマインドフルネスをテーマに、精神保健指定医、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長であり、臨済宗建長寺派林香寺住職、川野泰周先生を講師に迎え、「マインドフルネスの基礎と実践-集中力と受容性を高める-」を講演いただいた。
今ある状態、今ある生活、今ある自分自身の存在を受容して、それを受け入れる心を育むのが、マインドフルネス。「マインドフルネスは生き方のスタンスと思ってください」と川野先生。セミナーではマインドフルネスの理念、「気づき」と「受容」の二大要素から始まり、社員のウェルビーイングや業務向上に、医療の世界では病気の発症予防、再発予防につながる健康経営への効果、また、大脳生理学、疫学、臨床心理学など脳科学的な研究に基づくエビデンスについて紹介された。

さらに、会場ではマインドフルネスな状態を学ぶためのトレーニングである瞑想、「呼吸瞑想」「慈悲瞑想」も行われた。
個人のレジリエンス、ストレス耐性を高めていくために、その人の心の有り様を変え、心幹を養っていくマインドフルネスはこれからも注目を集めるだろう。

2019年3月29日 経営者のための健康セミナー5
「アミノインデックス検査と働く人のがん対策」

 働く人のがん対策として早期発見と予防をテーマに2部構成で行われた3月の健康経営セミナー。
前半は味の素株式会社バイオ・ファイン研究所の四方菜穂子氏を講師に迎え、新しいがんリスクのスクリーニングテストとして注目を集めるアミノインデックス検査について聞いた。  ヒトの体内で重要な役割を担うタンパク質は20種類のアミノ酸の多彩な組み合わせで構成されている。ヒトの健康状態によって血液中の濃度が変化するアミノ酸の性質を利用し、がんのリスク判定を行う新しい診断技術がアミノインデックス検査。わずか5ミリリットルの採血でさまざまな種類のがんのリスク判定が可能で、しかも早期発見もできるなど、多忙な現役世代には有効な検査として期待が高まる。

後半は神奈川県立がんセンター名誉総長でがん専門医である本協会、小林理がん予防医療部部長による「働く人のがん対策」。胃がんを中心に、がんの病因論に基づいて、予防、検診の現状から復職に向けての治療と仕事の両立支援まで、健康経営に求められるがん対策を幅広い視点から考えた。

2019年2月21日 経営者のための健康セミナー4
「レジリエンスを養う」-ストレスとうまくつきあうために-

 この2月には、働く人のメンタルヘルスやEAP(従業員支援プログラム)に取り組む、医学博士・臨床心理士、市川佳居先生を講師に迎えた。レジリエンスとは「困難・変化への対応力や耐性」「挫折・苦境からの回復力や強さ」「弾力性やもとに戻る柔軟性」を指す。

レジリエンスを高めれば、挫折や苦境からの回復する力の強さやもとに戻る柔軟性を身につけ、不調から回復し、仕事のパフォーマンス向上につなげることができる。
セミナーではレジリエンスの概念や歴史に続いて、個人のレジリエンスを高めるトレーニングの方法を参加者のグループワークやエクササイズを通して学んだ。
「レジリエンス」の6要素、「自分の軸」「しなやかな思考」「対応力」「人とのつながり」「セルフコントロール」「ライフスタイル」について各4問ずつ答え、レーダーチャートを作成。チャートの6角形が自分の強みや弱点を表す。さらに各要素について、周りの参加者と話し合い、また、講師から出されるエクササイズで考えを具体化し、それぞれの項目についてのセルフコントロールの仕方や各要素について考え、自らを振り返った。

2018年12月12日 経営者のための健康セミナー3
「健康を見える化する」

 今回のセミナーのテーマは、生活習慣病予防を目的に、日常生活でのライフスタイルを数値化(=見える化)して、ライフスタイルの自己改善に役立てようというもの。

LINKAI横浜金沢ウエルネスセンター長で横浜市立大学特任(名誉)教授の杤久保修先生を講師に、ウエアラブル端末「健康腕時計」から取得できるデータの読み方と意味を学んだ。日常の心拍数や体の動きから測定できる、消費カロリー・睡眠の質・ストレスの量は生活習慣病との関わりも大きい。そこから得られるデータから、常に体の状態を知って、いい状態になるようにコントロールすることは健康寿命を伸ばす大きなポイントになる。

2018年11月9日 実践セミナー1
「支援や助成などの紹介-神奈川産業保健総合支援センター」
実践講習「すぐできる健康づくり運動編①」

 11月の「実践セミナー」はこれまでと趣向を変え、前半は従業員50人未満の小規模事業者で働く人々のこころとからだの健康を支援する神奈川県産業保健総合支援センターの重河順一副所長から、産業医専任義務のない小規模事業場へ向けて同センターが提供しているサービスなど、中小企業の健康経営を支援するさまざまな内容について聞いた。
後半はどこででも誰でもできる、脳を活性化するプログラム「シナプソロジー」を高橋亜紀インストラクターのリードで体験した。例えば、リーダーの出すグー・パー・チョキに「勝ち」や「負け」を考えて後出しをする「相違ジャンケン」。頭を使い、声を出しながら簡単な動作を行い、脳の活性化を促す。認知症防止だけでなく、職場のコミュニケーションにも効果的で定期的に行うことで生産性が向上した企業もある。 参加者から「早速、職場に持ち帰って試してみます」という声も上がった。

2018年10月5日 経営者のための健康セミナー2
「従業員の健康を守る」〜中小企業こそ健康経営

 2回目の「経営者のための健康セミナー」が開かれました。今回のテーマは「企業で健康経営を実践するには、どうすればいいか」です。大企業数社の産業医を経て、現在、にしのうえ産業医事務所開設。複数の企業の産業医を務めながら、労働衛生コンサルタント、講演、執筆、学生指導、研究活動に忙しい日々を送られている西埜植規秀(にしのうえのりひで)先生に中小企業の健康経営を聞きました。
「担当者が健康の大切さを認識しないと、健康経営を推進していく力になりません」から、講義は始まりました。「どんな時に健康を感じますか」。「何歳まで生きていたいですか」。西埜植先生のリードで会場では一人ひとりが「健康をどう考えるか」改めて確認し、実際に起こりうる事例にあてはめながら話し合い、「自分ができること」「企業ができること」と、対応の方法を考えました。
健康経営の目標は同じでも、職場の規模や業務内容、従業員の健康への意識が違えば、アプローチの方法も違います。健康経営推進チームが職場の環境を十分に理解し、全社員のヘルスリテラシーの向上を目指し、相応しい対策や方法を考えることが、成功への近道とわかりました。
次回の実践セミナーは、小企業に働く人々のこころとからだの健康を支援する神奈川産業保健総合支援センターの支援事業や助成と専門のトレーナーによる職場でできる「健康づくり運動」がテーマです。

2018年8月29日 経営者のための健康セミナー1
「健康経営のための健康管理」

 日本経済新聞が8月18日の夕刊1面に取り上げたように、今、健康経営は注目を集めています。講師の竹田透先生は日本産業衛生学会専門医・指導医。さまざまな企業での産業医の経験を生かして、現在労働衛生コンサルタント事務所オークス所長としてご活躍。長きにわたって研究された奥深い知見と多角的な視点から企業の健康管理と健康経営の持つ意味、効果、取り組みへの導入についてお話をいただきました。
欠勤による生産性の損失・アブセンティズムと、出勤はしても健康上の問題で労働に支障をきたすプレゼンティズム。生産性向上には社員の健康が大きく関わります。その中でもプレゼンティズムが最も生産性の低下を招く要因、と竹田先生は解説します。風邪ひき、二日酔い、悩みごと、花粉症、夏バテなど、ちょっとした問題が仕事のパフォーマンスを低下させます。ビタミンB不足、更年期障害…。その原因や対策も検証しました。
 「主治医と産業医の所見が一致しない時はどちらを優先するべきか」「企業の医療関係者が対策として、まず、できることは何か」など、講演後の質疑応答では興味深い質問が集まりました。それぞれに具体的な解決法を回答した竹田先生。「解決法は一つではありません。効果を上げるには、企業内部のしくみ作りと経営者の決意がポイントです」。

2018年7月18日  オープニングセミナー

 LINKAI横浜金沢ウエルネスセンターのキックオフイベント「オープニングセミナー」が行われました。中小企業が単独では難しいとされる健康経営を支援するために、横浜市健康福祉局・経済局、金沢区、横浜市金沢団地協同組合、横浜市立大学医学群などと連携した本センターが拠点となります。行政や多くの団体から期待が集まったセミナーには、約100名の企業経営者、総務人事担当者が参加。健康経営に対する関心の高さが伺えました。
 セミナー初回の基調講演は横浜市立大学名誉教授・特任教授で本センター長の杤久保修先生による「働く人の元気を創る~睡眠とストレスを「見える化」する~」。健康長寿社会での生活習慣改善の必要性や健康経営との関わりを、ヘルスウォッチを用いた生活習慣の見える化の視点からひも解きました。会場では身体の状況の「見える化」に活用される測定機器や心身のリラックスを促す機器などにも直接触れることができました。
横浜市では積極的に健康経営に取り組む事業所を、「横浜健康経営認証事業所」として認証していますが、セミナーではこの認証の概要と取得方法についても説明がありました。認証には取り組みによって、クラスAからクラスAAAまで3つの区分があり、認証を受けると経営にもさまざまなメリットがあります。また、健康経営に対する企業の姿勢を社会に示すことによって、企業イメージの向上にも大きな効果を生みます。