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スポーツの突然死を予防する②

前回は、高円宮急逝を例にスポーツの突然死をいくつか呈示しました。今回はどのような場面で、どのくらいの頻度で突然死が起きているかみてみましょう。 ドイツ・フランクフルト大法医学センターParzellerによれば、1999年に、21年間21,000件の剖検から肉体活動中の突然死をまとめていますが、仕事中227(1.08%)平均53歳、スポーツ中73(0.34%)55歳、性行為中40(0.19%)61歳、女性の突然死は男性より少なく、突然死の原因は冠動脈疾患が最も多かったという報告です。  

横浜スポーツ医学研究センター内科部長の高田英臣らによると、年間8万人の日本の突然死を調べると、睡眠中34%、入浴中11%、休息中7%、労働中5%、排便中4%、歩行中3%、家事3%です。スポーツ中の突然死は1%に過ぎませんが、単位時間当たりの危険率では最も高くなります。 スポーツにおいて、男性が女性の6倍、種目別では、40歳未満は、ランニング、40-59歳は、ゴルフ・ランニング、60歳以上ではゲートボール・ゴルフです。また、高齢者になるほど冠動脈疾患所有者の事故が増加し、運動強度とは無関係に突然死はおきています。
フィットネスクラブでの事故は、クラブの自己申告による調査ですが、488人と年に一人程度で、屋外のスポーツ事故が圧倒的に多くなります。運動時の温度、湿度、日光、風力などの環境、運動時間などの影響が推定されます。
オーバートレーニング、慢性的な睡眠不足などでAT(嫌気性閥値)ポイントの低下、PEAKVO2(亜最大酸素摂取能)の低下などから、運動前には十分な休養が必要であることがわかります。

一方、年齢層を少し下げて観察しますと、学校管理下での死亡は、毎年200件以上あり、ここ10年、死亡数が減っているとは言い難い状況です。 すべてが運動に関わる事故ではありませんが、死亡原因は、心臓病が70-85%、脳血管障害が10-15%、大血管障害5%で、特に運動中におきる突然死はほとんど心臓の異常で、高学年男子に多いとされています。 自律神経の嵐との関連があるか言い切れませんが、午前10時頃と午後下校頃にピークがあり、5月、10月ごろに多いという傾向も、以前と変わりはありません。運動制限のある心臓病管理指導区分でも事故は起きており、教育者側で熟知・徹底されていなかった例もありますが、最近は、管理区分程度の軽い群からの運動中の死亡もでており、運動許可には慎重な対応が必要です。(区分表は最近改訂され、運動種目が入れ替わり具体的な種目が明記されています)また脳血管障害では、脳動静脈奇形(AVMalformation)による出血があります。

アメリカにおける高校大学生のアスリートの年間10万-30万にひとり、約50-100人の毎年スポーツによる突然死があります。(2000.10 Drezner)原因疾患として頻度が多いのは心筋症、冠動脈奇形、解離性大動脈瘤、心筋炎、拡張型心筋症、大動脈弁狭窄症、WPW、ARVD、QT延長症候群、僧帽弁逸脱症があげられています。 次回は、救急処置について考えましょう。

神奈川県予防医学協会の循環器外来

image神奈川県予防医学協会では、健診だけでなく、隠れた疾患を予防する、未病、加齢現象に対しても積極的に立ち向かう、という趣旨から運動療法、栄養指導などを受け付けております。(写真は同外来での呼気ガス分析併用運動負荷試験、写真左が筆者・羽鳥裕 精密総合健診部長)

虚血性心疾患、致死的不整脈を100%予測することは現在の医学では難しいことです。脳血管障害、冠動脈疾患、末梢性動脈閉塞など動脈硬化を基盤とするMULTIPLE RISK FACTOR SYNDROMEの発症を予防するための一つとして、総頸動脈などのIMT(内膜中膜複合体厚)、脈波速度を用いた動脈硬化度の測定、呼気ガス分析併用運動負荷トレッドミル検査、身体組成、ライフコーダによる消費カロリーと運動強度の測定、摂取カロリー調査などを用いて、個人別の運動処方と栄養・生活指導を行いますので、お気軽にご相談ください。

(健康かながわ2003年3月号)
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