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労働安全衛生法改正案 国会へ

労働安全衛生法の改正案が平成17年3月4日に閣議決定され、通常国会に提出された。企業の自主的な安全衛生活動の不足による重大災害の発生、業務の集中する層の長時間労働に伴う健康障害の増加といった労働者の生命や健康に脅かす問題が深刻化。法律の見直しによる関係者の自主的な取り組みの促進を求めることが法改正の柱となっている。今号では「法改正の概要」(最下)と、その大意を当協会産業保健部部長・井澤方宏が概説する。

危険性・有害性の低減に向けた事業者の措置の充実

①(事業者の行なうべき調査等)
事業者の自主的な取組を促進するため事業場における危険性・有害性の要因を把握(特定)し、必要な対策を樹立するリスクアセスメントの手法を取り入れ、労働安全衛生マネジメントシステム指針を踏まえて、事業者が自主的に危険性・有害性の低減に向けた措置を適切に行なっており、安全衛生水準が高いと行政機関が認めた事業者については、機械等に係わる事前の届け出義務を免除することが予定されている。

②(製造業等の元方事業者の講ずべき措置)
建設業や造船業において行われている同一の場所において行われる請負事業(特定事業)に関わる規定を、製造業等の業種にも一部適用されることによる規定である。

③(化学物質等を製造し又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の措置)
設備の改造・修理・清掃の仕事の外注化が進展する中で、爆発等のおそれがある化学設備について、その仕事を発注する者が請負人に対して必要な情報を提供することの規定である。

④(化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善)
化学物質管理促進の観点から、GHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)国連勧告への対応として、

1、表示及びMSDS(化学物質等安全性データーシート)の対象を健康障害を生ずるおそれのある有害化学物質だけでなく、爆発性、発火性、危険性をもつ化学物質を対象とすること
2、化学物質の危険・有害性を容易に認識できる絵表示などを導入すること
3、事業所内で取り扱う容器などにも同様の表示を行なうことが予定され

GHSでは化学物質の危険性・有害性を、急性毒性(高毒性、低毒性)、発がん性、呼吸器への作用、腐食性などに分類し、ドクロマークなどの絵表示(ラベル表示、ピクトグラム)で示すこととしている。

MSDSは平成11年の安衛法改正により638物質が指定され、リスクアセスメントへの活用や有害性情報の共有化、安全衛生教育等に利用されていたが、さらに対象化学物質が拡大されることになる。
化学物質に対する社会的関心の高まりや、国際動向などを踏まえ、厚生労働省では、平成15年5月より「職場における労働者の健康確保のための化学物質管理のあり方検討会」を設置し、平成16年6月、事業者による自律的な化学物質管理をより一層促進することが必要であると報告している。

健康診断実施後の措置等

平成16年4月、厚生労働省では「過重労働・メンタルヘルス対策のあり方に係る検討会」を設置した。同省は、平成14年に「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定して、労働時間短縮や労働者の健康管理に係る措置等について行政指導を実施。メンタルヘルスに関しては平成12年に指針、13年に自殺予防のマニュアルを策定して周知徹底を図っているが、さらに施策を充実させる必要があると判断した。

改正法では法第68条の8を設け、「事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令が定める要件に該当する労働者に対し医師による面接指導を行わなければならない」と義務づけている。

この厚生労働省令が定める要件は、いわゆる長時間労働、過重労働としてこれまで通達等で示されているものと予測されるが「時間外労働が月100時間を超え、疲労の蓄積が認められる者であって、面接指導の申し出を行った者」になる見込み。ただし、1ヶ月以内に診察を受けて健康上問題がないと医師が認めた場合は対象外になる」との記述もある(日本医事新報、17.3.12)。

労働安全衛生法 一部改正の概要

(1)危険性・有害性の低減に向けた事業者の措置の充実

①(事業者の行なうべき調査等)
事業者は建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉塵又は作業行動等による危険性や有害性等を調査し、その結果に基づいて労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

②(製造業等の元方事業者の講ずべき措置)
製造業等における業務請負の増加に対応するため、元方事業者は、労働災害を防止するため、関係請負人と作業間の連絡及び調整その他必要な措置を講じなければならない。

③(化学物質等を製造し又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置)
化学物質等の製造又は取り扱う設備の改造・修理・清掃等の仕事の発注者は、請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

④(化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善)
危険・有害な化学物質の容器又は包装に表示しなければならない事項として、それを取り扱う労働者に注意を喚起するための「標章」を追加すること。また譲渡又は提供に際しては相手方にその名称等を文書の交付等の方法により通知しなければならない物質を追加すること。

(2)健康診断実施後の措置等

①健康診断の結果についての医師又は歯科医師の意見を、衛生委員会等へ報告することについて、健康診断実施後の措置として明記すること。
②特殊健康診断を受けた労働者に対してその結果の通知を、一般健康診断の結果の通知と同様に行なわなければならない。

(3)過重労働・メンタルヘルス対策の充実

事業者は一定時間を超える時間外労働等を行なった労働者に対し、医師による面接指導等を行わなければならない。また、労働者はその面接指導を受けなければならない。

*施行期日は、平成18年4月1日の予定。ただし④の化学物質等の表示及び文書交付制度の改善については平成18年12月1日から施行の予定。
*経過措置として、(3)加重労働・メンタルヘルス対策の充実については、平成20年3月31日までは常時50人以上の労働者を使用する事業場に限るとしている。

(健康かながわ2005年4月号)
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