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がん対策に関する世論調査

日本人の死因のトップである「がん」。その克服には、予防や早期治療が重要で、検診による早期発見も対策の大きな柱だ。内閣府が昨年秋に実施した世論調査では、多くの国民が「がん検診」に関心は持っているものの、実際の受診率は低調であることがわかった。国は昨年、がん対策推進基本計画を策定し、「5年以内に受診率50%」という目標を掲げた。検診の充実に向けて課題は何か。現状をまとめた。(佐藤良明・読売新聞東京本社科学部次長)

がんによる死者は年間30万人を超す。大雑把に言って、日本人の3人に1人は、がんで亡くなっている。こうした事情を背景に、内閣府の世論調査はがん対策全般について国民の意識を探り、昨年11月に結果が公表された。対象は全国の20歳以上の男女3000人で、回答率は58・9%だった。
調査ではまず、がんについての印象を尋ねている。これに対し「こわい」との回答が65・1%、「こわくない」「あまりこわくない」を合わせて24・0%だった。やはり多くの人が恐ろしい病気だと考えていた。

テレビ・ラジオからがん情報入手

がんに関する情報の入手方法(複数回答)は、「テレビ・ラジオ番組から」が70・5%だった。国もインターネットで各種のがん情報を発信しているが、そうしたサービスを知っている人は20・1%にとどまった。
がん予防のための実践(複数回答)についても尋ねた。禁煙(41・4%)やバランスの良い食事(38・8%)、焼け焦げを食べない(38・4%)などが上位で、「定期的にがん検診を受ける」が29・7%で6位だった。がん予防策の一つとして検診がある程度は意識されていることがうかがえる。

がん検診重要80%以上認識

image世論調査では検診について、さらに突っ込んだ質問をしている。「がん検診を重要と思うか」との問いには、「そう思う」が81・9%、「どちらかといえばそう思う」が12・8%で、合わせて94・7%。「重要だと思わない」は2・1%。重要性に関しては国民に十分浸透していることがうかがえる数字だ。

調査では、胃、子宮、肺、乳房、大腸、その他のがんについて個別に受診状況などを尋ねている。

まず、受診場所(複数回答)については、検診バスなど市区町村の集団検診が28・7%と一番多く、以下、職場での検診(27・8%)、かかりつけ医で勧められて受診(25・2%)の順。

40%に満たない受診状況

肝心の受診状況を見よう。多くの人が重要性を感じているのだから、受診率が高くてもよさそうだが、「2年以内に受診した」と答えた人の割合は、いずれのがんも40%に届いていない。大腸・乳房が最低の32・4%。最も高率の肺でも39・2%にとどまった。受診対象年齢ではない世代の回答者がいることを勘案しても、高い割合とは言えない。

なぜ受診しないのかを尋ねると、一番多かった理由は、たまたま受けていない(28・8%)だった。次いで、健康状態に自信があり、受診の必要性を感じない(17・3%)、心配な時はいつでも医療機関を受診できる16・9%、時間がなかったから15・9%、面倒だから15・4%の順になっている。

半数が一度も受診したことがない

imageこれまで一度もがん検診を受けたことのない人をみると、大腸では54・7%と半数以上が該当。一番低かった子宮がんでも37・9%にのぼった。

この世論調査から、検診が国民の間に十分には浸透していない現実が浮かび上がる。普及へ向け、国の大目標は、「がん対策推進基本計画」という形で既に掲げられている。

2007年4月、国民が安心し、納得するがん医療を受けられるようにと、がん対策基本法が施行された。この法律に基づいて、基本計画が07年6月に策定された。

計画の中で「がんの早期発見」も重点項目として言及されており、未受診者の掘り起こしに、企業やマスメディア等を巻き込んだ普及啓発活動などが必要とうたっている。

昨年11月に開かれた「がん対策推進協議会」の席上、厚生労働省の武田康久がん対策推進室長も「受診率をなんとか上げていくよう引き続き努力したい」と語っている。

要望の1位は「がん検診の充実」

今回の世論調査は、政府に対する要望(複数回答)を最後に尋ねている。がん対策として最も求めているのは、がん検診の充実(61・3%)で、専門医療機関の整備や(49・1%)、専門的医療従事者の育成(45・4%)などを上回った。検診に期待する国民の意識がうかがえる結果だ。
では現状はどうだろう。がん検診は、1982年度から老人保健法に基づく市町村事業として行われてきたが、98年度に一般財源の中で実施するよう施策が変更され、各自治体は苦しいやり繰りを迫られている。

自治体検診以外にも、企業の健康保険組合による職域での検診も実施されているが、こちらの受診状況は正確に把握できていない。
課題は様々ある。それでも検診の有効性について考えたい。米国で乳がん検診の受診率が向上した1990年代に乳がんによる死亡率が減少したという例にも見られるように、効果の確認された検診は推奨できる、というのが専門家の見解だ。

それでも検診が予防の最善の道

厚労省が「がん検診に関する検討会」を設け、04年からは乳がん、子宮がんの検診対象年齢をそれぞれ40歳以上、20歳以上に拡大するなど「有効性の再評価」は時代の流れだ。受診率向上に「妙薬」はない。内容の見直しも段階的に進み、科学的根拠に基づいた取り組みである。予防医学に携わる人々や我々も早期発見によって「がんによる死」の予防効果があることを地道に訴え続けていきたい。

(健康かながわ2008年3月号)
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