法人向けサービス
前のページへ戻るHOME > 法人向けサービス > 健康情報(法人向け) > かながわ健康支援セミナー> 健診・保健指導を通したヘルスプロモーション
健康かながわ

  産業保健活動の向上を図ることを目的として開催されている、かながわ健康支援セミナー。平成22年度の第7回目が2月21日松村ガーデンホールで開催された。


  講師にヘルスプロモーション研究センター長の岩室紳也先生を迎え、「健診・保健指導を通したヘルスプロモーション」をテーマに講演を行った。今回のセミナーには、県内の事業所などから44団体56人の産業保健に携わる方々が参加した。

かかわり・つながり・ささえあう環境整備

 現在、日本の高齢化は進み、対策は待ったなしの状態である。
  生産年齢人口の減少から税収はダウン、老齢人口の負担はアップしており、国民医療費は増加の一途をたどっている。
  そこで国が打ち出した健康づくり対策が、健康日本21である。

  健康日本21では、後追い対策の二次予防だけでなく、先取り対策の一次予防を再認識し、個人への教育と同時に、社会全体で取り組むための環境整備の重視を掲げている。
  また、ハイリスク戦略に加え、多くの人に分布するリスクへのポピュレーション戦略が重要であるとしている。

ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ

 効率のよい予防医学的方法として、疾患を発症しやすい高いリスクを持った個人に対象を絞り込んだ戦略がハイリスクアプローチである。 ハイリスクアプローチでは、まず対象である高いリスクを持った個人を抽出し、抽出した個人の経過変化によって評価が行われる。
  一方、集団全体にリスクが広く分布する場合、対象を一部に限定しない集団全体への戦略が必要となってくる。これがポピュレーションアプローチである。

  ポピュレーションアプローチはリスク自体に対するアプローチであるので、社会全体に蔓延するリスクの確認が基本となる。
  そのリスクへの対応が次のステップとなる。

  例えば脳卒中のリスクの一つである塩分を減らす取り組みを行うと、全員の血圧が少しずつ低下することで、脳卒中の患者数が減少することにつながるのである(図1)。
ハイリスクアプローチは効率的だが、ポピュレーションアプローチも必要不可欠だと理解している人は少ない。さらに、健康日本21で唯一成功しているポピュレーションアプローチ中心の8020運動の成功要因に学んでいないのではないか。   

健康づくりの考え方

 社会に蔓延するリスクへの対応を行う際、やる気を起こさせ、続けることができるために大切となるのが、かかわり・つながり・ささえあう環境づくりとなってくる。

  現代社会において、健康づくりの最大の課題は人と人との関係性の喪失であり、関係性の再構築のためには、コミュニケーション能力の再開発が必要であると言われている。
  地域の中、仕事上、家庭でのコミュニケーションが、健康づくりの環境整備につながるのである。

  健康づくりを考える上で、大事なIEC。
IECとは、Information(情報)・Education(教育)・Communication(関係性)の頭文字を取ったもので、情報をどんなに教育しても、知識が増えるだけ。知識を活かすためには、コミュニケーションを通した課題の実感、仲間からのプレッシャーがあってはじめて生きる力が育まれるという考え方である。

  生きる力を育むために、知識に加えて、コミュニケーション能力が必要となってくる。
  コミュニケーション能力とネットワークを育てるために、地域や学校、家庭の中で様々な取り組みが求められている。

  心地よいコミュニケーションに必要なのは、ほめて、感謝して、認めてあげることである。
  人と人との関係性の中で、プライドが保てない、こだわりや被害者意識が解消できないと、ストレスがたまる。

  挫折や失敗したときに、その人が、誰かの経験や情報に学んだり、または自身の体験があったりすると、ストレスに対処できる。
  「関係性が希薄になり、情報は個人で取得するように変化している現代だからこそ、自分の〝居場所〟が必要だということを意識したい」と岩室先生は提案する。

ヘルスプロモーションの理念

 そもそも健康とは何か。1999年WHOでは1948年の定義に「あり続ける」ことと、「スピリチュアル」を追加した改正案、「健康とは、身体的、精神的、スピリチュアル、ならびに社会的に完全に良好な状態であり続けることであり、単に疾病がないとか、虚弱ではないことである」が論議された。
  スピリチュアルなものとは、ほめられたり、認められたり、感謝されたり、自己肯定感を感じられることである。

  自己肯定感とは自己の存在を肯定的に受け止められる感覚のことである。自己肯定感は自分の中で完結するものではなく、肯定的に認めてくれる他者との関係性の中で育み、確認し続けるものであり、自己肯定感は人が健全に育つ、健康になるために不可欠なスピリチュアルな感覚である。
  ヘルスプロモーションとは、人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセスである。
  ヘルスプロモーションにおいて目指すものは、疾病予防だけではなく、QOL(生活の質)を高めるための環境づくりである。

  誰もが持っている生きづらさ。その生きづらさを小さくするために環境整備を行う。関係性を再構築し、自己肯定感が維持し続けられることが必要となる。
  自己肯定感を維持し続けるには、いるだけでその人の存在が認められ、排除されない環境や、居場所と感じられる家庭や学校、仲間があること。多様性を認め、多様な人、世代が交流する地域があることなどである。

岩室先生は「様々なアプローチのなかから、一人ひとりが、自分にあったできることからはじめ、お互いが支え合う健康づくりを進めましょう」と講演を締めくくった。

中央診療所のご案内集団検診センターのご案内