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健康かながわ    今年度第1回目となるのかながわ健康支援セミナーが9月25日Zoom配信によって行われた。
 新型コロナ対策において在宅勤務が増えるなか、産業医や産業看護職がオンラインで従業員と面談する機会も多くなっている。今回は法制度上の問題や実務上の課題、今後の産業保健活動への応用などについて労働衛生コンサルタント事務所オークスの竹田透所長が講演した。オンラインセミナーの参加者は産業保健に関わる保健師や看護師など84名。

 法的側面を検証

 まず気になるのは、産業医のオンラインによる面接指導や保健指導はオンライン診療にあたるのかという点だが、これは臨床的な医療業務と異なる労働衛生管理業務と位置付けられている。労働衛生に関する業務を労働安全衛生法に基づいて行っているために、診療行為とは異なると法律上で定められている。昨年改正された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」においても、これらの産業医活動は遠隔医療相談にあたるとし、オンライン診療との線引きが明確にされている。

 情報通信機器を用いた面接指導においては、適切な指導のために一定の条件が定められている。面接指導を実施する医師は対象従業員の所属する事業場の産業医であることなど、4つ設けられた条件のいずれかに該当すること。また面接指導に用いる情報通信機器が映像、音声の送受信において安定性があることや情報セキュリティが確保されていること。さらにはその実施方法について衛生委員会などで審議を行い、従業員のプライバシーに配慮し、事前に周知することなどがあげられている。保健指導、健康相談にあたる場合は、これらをクリアする必要がある。

 衛生委員会はどうなるのか、という疑問もあると思う。新型コロナウイルスの感染拡大防止において、6月末まではテレビ会議などが推奨されていたが、これは特例だった。情報通信機器を用いた衛生委員会の開催については、8月に通達が発出されているので、詳細は通達内容を確認していただきたい。
 オンラインでの職場巡視については、現場の人にカメラで写してもらい巡視するという考えがあるようだが、巡視そのものは五感を用いるものだ。視覚である程度は確認できるだろうが、聴覚、触覚、嗅覚、温度感覚などを使わないと的確な判断ができないと思うので、これは難しいと思う。

 オンライン活動の実際

 次にオンラインでどのようなことができるか、私自身の産業医としての取り組みを例に面接指導の方法を紹介したい。週1回訪問していた事業場に、現在は週1回のオンライン面接指導を実施。オンライン面接時の画面設定は、相手が大きく表示されて、表情をはっきり見えるようするのがポイントである。

全体の流れは、①面接希望者からストレスチェックの結果を提供してもらう。②テレビ会議の設定は私が行い、面接希望者に直接連絡を行う。この連絡のメールアカウントは事業場が持っている専用のもので、パスワードは私と本人しか知らないのでプライバシーが守られる。③実際の面接後は意見書、報告書を作成するが、その内容は本人の了解をとる。それらの書類は事業場へオンライン提出となるので、パスワードをかけてメールで送付する。④必要であれば、私と面接者の上司との面接、あるいは措置内容の報告を人事から受けるといったことを行っている。

オンライン面接のメリットとしては、直接対面より緊張感が緩和されフランクで話しやすいことや全員面接の実現性が高くなっていること。また緊急事案への対応力アップや小規模事業場への面接導入の実現などがあげられる。
今後のオンラインによる産業保健活動において、個々の従業員の自宅での通信環境の整備、個人情報保護の規定の整備、ICTリテラシーの向上とサポートなど何点か課題もあるが、コロナ後もオンライン活用する場面は今まで以上に増えていくだろう。そこでは、対面でなければならないシーンとの使い分けを明確にするなど、どのように活用していくのかきちんと整理しておくことが必要だと思われる。
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