法人向けサービス
前のページへ戻るHOME > 法人向けサービス > 健康情報(法人向け) > かながわ健康支援セミナー>Withコロナ時代における健康管理と労務管理
 
健康かながわ    新型コロナウイルス感染拡大を機に、多くの企業では、Withコロナの生活や働き方を前提とした健康管理や労務管理が求められている。今回は、テレワークにおける健康管理上の課題、リモート環境下での健康管理などについて、にしのうえ産業医事務所の西埜植規秀所長が講演した様子を伝える。産業保健に関わる産業医や保健師など81人が視聴した。

 新しい働き方への対応

 新型コロナの感染対策で、テレワークをはじめ新しい働き方が導入されて1年近くになる。昨年10月に実施された「働く人の意識に関する調査」では、テレワークの課題として、自宅の環境あるいは通信環境の整備などがあげられ、労務管理においては、仕事への評価や上司などから指導を受けられないことへの不安が浮かび上がっている。コミュニケーションを活性化する機会をもつことが必要だ。上司、従業員、人事労務、産業保健スタッフの連携を考えることで、事業所の労務管理と健康管理が相互機能し、生産性などの面でも良い影響が生まれるだろう。

  テレワークが始まりオンライン面談を活用する場面が増えた。メリットとしては、時間的・身体的負荷の軽減、対象者への迅速な対応、遠方・分散事業所の展開が容易といった点がある。一方デメリットは、得られる情報の限界、コミュニケーションに工夫が必要などがあげられる。アフターコロナにおいても、オンライン面談は継続されると思うが、これらメリット・デメリットに留意しながら活用したい。
 地理的な面で問題がなければ、メンタルヘルス不調や復職時における面談など判断が難しい対応においては対面面談が望ましい。状況に合わせ、あらかじめ対面面談を行う条件を設定しておくことも必要だろう。

 安全配慮義務を果たす

 テレワークにおいては、従業員の健康管理上の変化に伴い、健康管理の再徹底が大切になってくる。たとえば、在宅従業員がうつ病やエコノミークラス症候群になった場合、使用者は損害賠償責任を負う必要があるだろうか? 重要なのは安全配慮義務の観点から社会通念上相当とされる防止手段を尽くしているかどうかだ。具体的には、適切な健康情報の提供、啓発を実施することが求められる。詳細については、厚生労働省の『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』を参照してほしい。

 テレワークでは、運動不足による体重増加、肩凝り・腰痛やオーバーワークによる疲労蓄積、生活リズムの崩れ、コミュニケーション不足からくるメンタルヘルス不調といった変化が生じやすい。そのため、室内でできる運動や作業環境の整備、規則正しい生活リズム、オンオフ・休憩のとり方などといった情報を定期的に提供しておくことが肝心だ。イントラや衛生委員会などで周知しても一部の従業員にしか伝わっていないことも多い。多くの従業員に伝わるようアプローチ方法を検討いただきたい。

 より健康へシフトするチャンス

 コロナ禍において、糖尿病や高血圧などの基礎疾患をもつ従業員が、医療機関での感染リスクを恐れ、通院や内服を怠ることが散見される。その結果、健康状態の悪化や脳・心血管障害など二次被害といえる健康障害を発症する可能性が懸念される。産業保健スタッフはそのリスクを説明、周知するとともに、定期的な通院や内服の継続を促すよう注意喚起することが重要である。受診することに強い不安を感じる従業員には、主治医へ相談の上、オンラインや電話での診療などの活用を勧めるのも一案だ。オンライン診療が可能なクリニックの情報については厚生労働省のHPで確認して欲しい。

 事業者には基礎疾患を有する従業員に対し、感染リスクを低減するよう配慮が求められる。また配慮すべき対象者の基準や配慮内容も定められていないため、現場での判断が求められる。本人の健康状態、年齢、感染状況、職場環境(通勤含む)、職務内容等を考慮した上で、必要に応じて実現可能な労務管理上の配慮を実施する必要があるが、現場での判断が難しいこともあるだろう。個人情報の関係から産業保健スタッフが個人を特定し配慮することも難しいため、主治医からの意見書をもとに産業保健スタッフと人事労務担当者が協議し対応することも一案といえる。  ほかにも検討する一例として3E分析(*)があるので、詳しくは日本産業保健法学会のHPを参考にしていただきたい。

 感染予防への意識が高まっている今こそ、「より健康へシフトするチャンス」だと考えている(図1)。基礎疾患を有する従業員だけでなく、すべての従業員の健康レベルを高めることが重要である。前述のような適切な健康情報の啓発や事業所特性を考慮した健康づくりに加え、健康診断の事後措置強化など、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを組み合わせた健康施策の推進を積極的に進めていただきたい。

 コミュニケーションの機会を増やす管理職の対応がカギ

 「コロナうつ」という言葉が生まれるほど、精神面への影響を来たす人の割合は多い。ウイルス自体への恐れもあるが、コロナ感染を機にテレワークが急速に広がったことでの環境変化も関連するだろう。メンタルヘルス不調の要因として、生活リズムの乱れ、孤立感、双方向の意思疎通の低下などがあげられる。対応のポイントとしては、第一にコミュニケーションの機会を増やすことだ。メールやチャットなどだけでなく、顔が見える形での対応を作ることで、お互いの様子を確認しあうことがいいだろう。またつながりを持つため、雑談の場を作るよう工夫している職場もある。普段話ができない従業員にとってはリフレッシュにつながる。

 次にラインケアの強化も重要だ。日頃の様子がわかりづらい環境下では、これまで以上に管理職の関わりが重要となる。管理職には、1on1など個を意識した対応を勧めている。会議などでは話しづらい相談や気持ちなどを引き出すことができる。また部下から相談しやすいよう、管理職の予定がわかるよう明示しておくなどの工夫も有用だ。それでも上司には相談しづらいといった従業員もいる。産業保健スタッフや社外の相談窓口などを整備し、周知しておきたい。

 今、各事業所では復職の判断基準を迷うという声を聞く。テレワーク下においては条件設定が難しいが、復職後の働き方をベースに復職の条件とすることがいいのではないかと、個人的には考えている。
 今後さらにニューノーマルな働き方に対応した健康管理が求められる。今回、紹介した内容は一部であるが参考にしていただければ幸いである。
*感染リスクの分析手法の1つ

中央診療所のご案内集団検診センターのご案内