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前のページへ戻るHOME > 法人向けサービス > 健康情報(法人向け) > かながわ健康支援セミナー>正しく怖がろうインターネット依存・ゲーム障害 ~その理解と予防・対応~
 

健康かながわ

2020年度第3回 かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が2月18日(木)「正しく怖がろうインターネット依存・ゲーム障害」~その理解と予防・対応~のテーマでオンラインで開催された。講師に独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター主任心理療法士の三原 聡子氏を迎え、ゲームにのめりこんでしまって職場を休んでしまうなど、日常生活に支障が生じる「ゲーム障害」について依存の機序や治療の実際についてお話しいただいた。 産業保健に関わる産業医や保健師など63人が視聴した。

 適切なサポートのために、依存を正しく理解する

 スマホやパソコンで気軽にゲームができるようになり、コロナ禍で在宅時間が増えたことも引き金となってインターネット依存やゲーム障害に陥る人が増えている。依存に悩む人と向き合うためにまず必要なのは、依存のしくみを理解することだ。
 依存は「依存行動+その行動による問題」と定義され、どちらか一方だけでは依存に至らない。ここで言う依存行動とは酒、薬物などの物質、ゲーム、ギャンブルなどの行動がやめられなくなることを指す。依存行動に手を出すと中脳から快感物質のドーパミンが分泌され、その行動が連続すると脳は快感物質が出ている状態を普通とみなす。分泌が途絶えると禁断症状が出るため、行動を続けるように脳が指令を出して依存に陥ってしまう。こうした特定の物質や行動を好む「嗜癖」に陥りやすい人は、普通の人が心地良いと感じる程度では満足できず、強い刺激を追い求めて連続飲酒などに走る「報酬欠乏症候群」のリスクが高いこともわかっている。

 ゲーム障害は、ゲームを行う頻度、熱中度、期間をコントロールできず仕事や学業よりゲームを最優先するのが特徴だ。しかも仕事、勉強、健康面などに問題が生じてもやめられない状況が一定期間続き、本人をとりまく環境に著しいダメージを与えていく。こうした条件がすべてあてはまる場合にゲーム障害と診断される。インターネットやゲームへの依存が続くと、体は運動不足による骨密度の低下、視力低下、栄養の偏り、エコノミー症候群といったダメージを受け、脳については感情や欲望を司る島皮質という部分が死滅する。

また精神面なダメージも大きく、意欲低下、うつ、ひきこもり、自殺願望が生じる場合がある。加えて退学や解雇、課金による浪費と借金、家族が家庭内暴力に悩むケースも少なくない。完全なゲーム断ちによって心身のダメージは回復するが、少しなら大丈夫だろうと再開するとあっという間に依存状態に後戻りする「再発準備性」の高さも指摘されている。

 依存症の克服は、現実生活の充実度が鍵

 ゲーム依存を防ぐために必要なのは意思の強さではない。インターネットやゲームの依存は、促進要因(現実生活の不全感やはまりやすい性格)が抑制要因(現実生活の充実感やストレス発散)を上回ることで発症すると考えられ、今とは逆の状態を作ることが克服のポイントとなる。

 そのためにはインターネットやゲームの「使用開始年齢を遅らせる」「使用時間を減らす」「まったく使用しない時間を作る」。加えて「家族のネット使用も減らす」「リアルの生活を豊かにする」のが望ましい。また子どもを依存から守るには、使い始める前に使い過ぎを防ぐルール作りをしておきたい。このとき大人が一方的にルールを押しつけるのではなく、ルールが必要な理由を本人に考えさせ、本人の意向を取り入れながら実現可能な目標を家族と話し合って決めるようにする。

 依存になった人を回復させるには早期発見と早期対応が必要だ。依存の原因に「生きづらさ」が隠れている場合があるので、サポートにあたっては対話を通して現実生活で本人が抱く苦しみを理解する姿勢が大切。また背景に学校や職場でのつまずき、注意欠如多動性障害やアスペルガー症候群など発達的、精神的な問題がないかも注意深く観察したい。回復のためにはゲームのプレイ時間を減らす必要があるが、本人にプレイ記録をつけてもらい使い過ぎを可視化すると自覚が生まれやすい。そのうえで趣味、アルバイト、将来の目標に対する努力などゲームに代わる活動時間を増やし、強制ではなく自分の意思でプレイ時間を減らせるようにサポートしていく。

 家族内で対応が困難なら医療機関に助けを求めるのが得策だ。その際に「あなたは病気だから検査に行く必要がある」という誘導は自尊心を傷つけて拒否感を生むため、「私」を主語にして「私はあなたが心配だから検査を受けてみない?」と伝えるアイ・メッセージの手法が効果的。通院を続けると必ず改善に向かうため、必要があれば躊躇せず依存症の治療施設や相談窓口を利用したい。

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