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健康かながわ

2021年度第1回 かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が7月21日(水)「身体を守る免疫の話」~コロナ禍のストレスと感染対策~のテーマでオンラインで開催された。講師に順天堂大学 大学院医学研究科 研究基盤センター 細胞機能研究室 准教授の竹田和由氏を迎え、コロナ禍で問われる「免疫」について、最新の知見を含めあらためて認識できる研修となった。 産業保健に関わる産業医や保健師など78人が視聴した。

 感染予防の鍵を握るのは、自然免疫のNK細胞

 新型コロナウイルス感染症を機に「免疫」という言葉を頻繁に聞くようになったが、免疫にまつわる誤解は多い。免疫とはリンパ球が異物とされるウイルスや細菌を排除する反応であり、結果として病気を防ぐ、病気が治ると解釈するのが正解。免疫が上がると健康を害さなくなるが健康状態が今より良くなるわけではない。

 免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類あり、それぞれ性質が異なる。自然免疫は初対面の敵にも反応しひとつの免疫細胞が多様な敵を攻撃するのが特徴。しかしその時々の状況に左右されやすく、生活習慣や食習慣が乱れると免疫は低下する。一方の獲得免疫は初対面の敵には反応しないが学習能力が高く、初回の情報をもとに二度目は的確に反応し一つの免疫細胞が一つの敵を攻撃する。またワクチンによって活性化するのも特徴だ。自然免疫は体内に侵入した異物を最初に攻撃するいわば最前線部隊であり、排除しきれないと樹状細胞が敵の情報を獲得免疫に伝え、今度は獲得免疫が抗体を使って攻撃を続け異物を排除する。このように人の体は、自然免疫と獲得免疫の連携プレーによって守られている。

 免疫を高めようとしたとき、獲得免疫を上げるには病気の数だけワクチンを打つ必要があり、副反応のリスクも考えると合理的とはいえない。さまざまな病気にかかりにくくなり、発症しても重症化を避けるには生活の中で「自然免疫を上げる」のが適切だ。そのとき鍵になるのが自然免疫の代表格である「NK細胞」で、NK活性(病原体に対する攻撃力)が高いとがんや感染症になりにくい。

 乳酸菌でNK細胞を活性、ワクチン効果を高める効果も

 NK活性は加齢、ストレス、喫煙、過剰なアルコール摂取によって低下しやすく、NK活性を下げないために「運動」が有効だ。しかし強いストレスはNK細胞の大敵であり、心臓に負担のかかるような激しい運動をすると一時的にNK活性は上がるが、運動をやめると一気に低下してしまう。なので、心拍数100程度(話したり笑ったりしながらできる位)を維持できる運動を週2~3回続けるのが望ましい。運動には健康増進の効果もあるため、適切な強度と頻度を守りながら運動習慣を身に付けたい。(図1)

 「食事」でもNK活性を上げることが可能だ。注目したいのがプロバイオティクスという体にとって良い働きをする生きた微生物で、その代表格が乳酸菌やビフィズス菌。「乳酸菌飲料を飲んでNK活性が上昇した」「1073R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを食べて風邪をひくリスクが減少した」という報告があり、乳酸菌飲料を飲む実験ではNK活性が下がっている人ほど飲用による効果が出やすいことがわかっている。乳酸菌が免疫細胞にアプローチするメカニズムは、腸管のM細胞を通して乳酸菌の成分や代謝物が腸に取り込まれNK細胞を活性化。

この腸管免疫(粘膜免疫)というシステムにおいて、M細胞が腸内細菌のモニタリングを行い、免疫が善玉菌は排除せず悪玉菌だけを攻撃するしくみを持つため、日常的に腸内細菌が免疫をコントロールしており、プロバイオティクスはこれを利用しているのである。

 では、乳酸菌でワクチン効果(獲得免疫)を上げることは可能だろうか。インフルエンザウイルスに感染させたマウス実験では、蒸留水を飲ませたマウス群は7日目で全数死亡したのに対し、1073R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを飲ませたマウス群では約40%が生存した(図2)。インフルエンザ抗体とウイルス価の推移を調べると抗体は約2倍、ウイルスの数は約半数に減少したことから、乳酸菌には獲得免疫を活性化させて抗体の産生を上げる効果があることも明らかになった。

さらに、ヒト飲用試験で、3週間前からの継続的な乳酸菌の摂取がインフルエンザワクチンの効果が上がることも示されている。これは、腸から乳酸菌の成分や代謝物が吸収されて樹状細胞が活性化し、この状態でワクチンを打ったため、獲得細胞に早く強く情報が届き抗体の大量産生を促したため、ワクチン効果が増強したと考えられる。体にストレスのかからない程度の運動を行い、プロバイオティクスのような免疫を高める食事を意識的に摂ることで、感染から身を守る免疫という防御壁を作ることが可能といえそうだ。

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