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かながわ健康支援セミナー

2021年度特別編 かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が3月28日(月)「長時間労働による健康障害防止対策における最近の話題~産業保健スタッフに必要な 過重労働対策の基礎と応用」のテーマで講師に梶木繁之先生(産業医科大学特命講師、株式会社産業保健コンサルティングアルク代表)を迎え、オンラインで開催された。産業保健に関わる産業医や保健師など80人がリアルタイムに視聴した。

産業医科大学と神奈川県予防医学協会の共催による今回のセミナー。冒頭で同大学副学長の堀江正和教授は次のように述べた。 「産業医科大学は平成28年に、過労死等防止対策を効果的に促進する人材育成を目的にストレス関連疾患予防センターを設置。法令改正や蓄積した科学的エビデンスをわかりやすく提供するために、卒業生でこの分野の再教育を受けた方を特命講師に任命し講演を行っている。本日は特命講師の梶木繁之先生に『過重労働に関連したエビデンス』『近年の法改正・労災認定基準の改定Q&A』『医師による長時間労働面接指導実施マニュアル』について解説していただく」

余暇時間・生理的時間が減ると脳・心疾患のリスク増

 まず過重労働の弊害を科学的根拠をもとに見ていくと、労働時間が長くなると最初に余暇時間が削られ、さらに休めずにいると食事・排泄・睡眠に費やす生理的時間が削られていく。その状態で一定のパフォーマンスを維持しようとして頑張るとストレスがかかり、脳・心疾患の発生リスクが増加する。最新の研究結果によると勤務時間が週55時間以上(15時間超勤/週)の場合、週35~40時間の勤務の場合と比較して虚血性心疾患の死亡リスクは1.17倍に。同じ比較条件での脳卒中の発症リスクは1.35倍になる。

注視したい、過労死・働き方に関わる法令改正

 近年、過労死に関する様々な法律が改定され、働き方の多様化によりテレワークや副業・兼業のガイドライン改定も行われている。今回は5つの質問に沿って、法令改正のポイントをチェックしていく。

Q1 管理監督者は、1カ月の時間外労働時間が100時間を超えても、労働基準法違反による会社への罰則はない。(正解:はい)
『長時間労働者への医師による面接指導制度』の改変により、労働時間が80時間を超えた場合、管理監督者は一般労働者と同じく面接指導が義務化されているが、100時間を超えた場合の罰則は一般労働者のみ適用される。ただし罰則を免れるために一般労働者を管理監督者に昇格させても、労働基準法における管理監督者の定義に該当しない名ばかりの管理者だと罰則の対象になる。

Q2 狭心症と診断された労働者の6カ月平均の月の時間外労働時間は79時間なので、労災認定はされない。(正解:いいえ)
『脳・心臓疾患の労災認定 過労死等の労災補償』の中で労災の対象疾病に「重篤な心不全」が追加されたほか、業務の過重性の評価にも追加事項が加わった(資料1参照)。それによると平均の時間外労働時間が80時間/月以下でも、労働時間以外の負荷要因が加味されて労災認定される可能性がある。改定後の負荷要因も確認しておく必要がある(資料2参照)。


〈精神障害の労災認定基準について〉
 精神障害の場合、労働時間の管理に加えてパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど業務以外の心理的負荷も評価基準に含まれるようになり事業者は留意が必要。事業者の義務としてハラスメント教育や相談体制の整備、起きた場合の迅速かつ適切な対応体制が急がれる。

Q3 テレワークをしている労働者が、「集中できるので、家族が寝静まってから仕事をしています。通勤もないから楽です」と言っていたので、自分のペースで仕事ができる環境であると判断してよい。(正解:いいえ)
テレワークはオン・オフの切り替えが難しく健康障害や長時間労働を助長させる可能性があり、勤務間インターバル制度の導入をはじめ『テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン』で定められた、時間外・休日・深夜の「メール送信を行わない」「システムへのアクセス制限をする」「手続きを整備する」を遵守し、長時間労働の生じる恐れがある労働者への注意喚起を行う必要がある。また副業・兼業については『副業・兼業の推進に関するガイドライン』 を参照したい。

Q4 長時間労働者の面接指導で得た情報は、労働安全衛生法に規定されている面接指導なので、すべて会社に報告すべきである。(正解:いいえ)
 労働者の心身状態に関する情報の取り扱いは、情報の種類によって事業者が講じる措置が違ってくる。通院状況を報告する場合などは取り扱い規定を定めたうえで本人の同意を得る必要があるので詳細を把握しておくこと(資料3参照)。

Q5 毎月のように長時間労働者の面接指導の対象になる労働者がいる。医師による面接指導を行っているので安全配慮義務は果たしているといえる。(正解:いいえ)
 業務の軽減措置や医師の面接指導を行っていても会社の安全配慮義務は不十分とみなされる。上限規制いっぱいの平均の労働時間は60時間/週で、過労死等の防止のための対策に関する大綱では週の労働時間が60時間以上の労働者を5%以下にすると掲げている。また年5日の年次有給休暇を取得させることは事業者の義務であり、2025年までに取得率70%を目指している。

■医師による面接指導マニュアル・教育動画は、「過重労働対策ナビ」をチェック。(2022.3.28)

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