法人向けサービス
 

健康かながわ

写真2023年度第2回かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が、9月25日(月)にオンラインにて開催された。今回のテーマは、「睡眠マネジメント~質の良い睡眠で生産性を高める技術」講師にユークロニア株式会社代表 菅原洋平氏を迎え、睡眠に関する正しい知識を解説していただいた。

毎日誰でも必ず行う睡眠、睡眠のメカニズムやご自身の睡眠を改善する方法があることはご存知だろうか?「睡眠は誰でも改善することができます」と菅原先生、今回の講演では、睡眠に関する誤った認識をチェックし、それを修正しながら、睡眠改善に必要な行動を、メカニズムと共に解説していただいた。 参加者は、産業保健に関わる産業医や保健師131名が視聴した。



 睡眠の質を良くして仕事の生産性を高めるには、まず睡眠を正しく理解する必要がある。睡眠は心理現象ではなく生理現象で、午前中に最も頭が冴え、就寝前に最も眠くなる本来あるべき睡眠リズムをトレーニングによって自分自身で取り戻せる。適切な睡眠時間の基準は週50時間以上で、質に関しては起床から4時間後に頭がすっきりして知的作業のピークがくる睡眠リズムが理想といえる。

 仕事の効率に差が出る、睡眠改善の方法

 睡眠の質を改善する方法の一つが、行動のきっかけとなる刺激をコントロールしその後の行動を変える「刺激統制法」。脳は場所と行為をセットで記憶するため、たとえばスマホはベッド以外の場所で閲覧し、眠くなったらスマホを置いてベッドに入り「ベッド=睡眠」の記憶を脳に覚えさせていく。また、脳が眠くならないうちにベッドに入り考え事が浮かぶと、ベッドは考え事をする場所として学習されるので眠くならないうちに就寝しない心がけも重要となる。   
  
 不眠の克服には規則正しい生活も大切だが、睡眠の質を上げるには就寝時間ではなく起床時間を揃えるのが正解。人は網膜に光が届いた16時間後に眠くなるので、起きる時間が遅くなれば眠る時間も遅くなり、起床時間を3時間差に収めるのを目標にしたい。二度寝をするなら、脳は重力のかかる方向で覚醒レベルに差が出るので、座って上から重力がかかる状態で眠り30分以内であればだるさが残らず日中の作業への影響が少ない。
  
 睡眠時間に関しては、30分や1時間単位で考えるのではなく、1日15分の早寝を1カ月続けるなどして「累積睡眠量」を増やすという考え方にシフトしたい。また、寝ていない時間が長いほど夜の本睡眠が深まるので、眠れない人は日中のうとうと寝をやめて眠ろうとする力「睡眠圧」を高めて本睡眠に入ると深い眠りが期待できる。

「リズム」を整えて質の良い眠りにアプローチ

 睡眠リズムとホルモンの関係を見ていくと、眠りの前半は睡眠の深さに影響する成長ホルモン、中盤は光によって増減し活性酸素の除去に関係するメラトニン、後半は起きる時間に関係するコルチゾールというホルモンが分泌される。これらのホルモンを適切に分泌するのに覚えておきたいのが「4-6-11睡眠の法則」。朝は起床から4時間以内に光を見て、昼は起床から6時間後に計画仮眠をとる。夕方は起床から11時間後に姿勢を正し、それにより筋肉を使い体温を上げておくと寝入りがよくなる。夜は部屋を暗くして眠る前に起床時間を3回唱えると決まった時間に起きられる。朝昼夕夜の習慣のうちどれか一つを2週間程度続けるとシンクロして他も整ってくる。

睡眠のリズム

 加えて実践したいのが、メラトニンリズム・睡眠覚醒リズム・深部体温リズム・自律神経リズムを整える方法。メラトニンリズムの場合、メラトニンは分泌量が増えるほど眠くなり減ると覚醒し、光によって分泌量が変化する。そのため朝は起床後4時間以内に窓際に行く生活動線を作り、夜は500ルクス以下の暗い部屋で過ごすのがベスト。また、眠気による交通事故やケアレスミスを減らすには睡眠覚醒リズムに注目。人の脳は起床から8時間後と22時間後に眠気を覚えるので、眠気が出る前に30分以内の計画仮眠をとると回復が早い。

 深部体温リズムの深部とは内臓を指し、内臓の温度が低いほど眠くなる。深部体温は起床から11時間後が最も高く、22時間後に最も低くなり、最高体温のときに仮眠をとるとその後体温が下がらず睡眠の質が悪くなる。逆に深部体温が高い時間帯にスクワットなどで筋肉を動かし熱を生むと夜にしっかり体温が下がり眠りにつきやすい。自律神経のリズムで大切なのは就寝中に副交感神経を優位にすることで、そのために眠る前に目や仙骨を温めれば心拍数も下がりやすいと覚えておきたい。

 なお、交代勤務で体調を崩さないためには、夜勤明けにすぐベッドに入らず日勤と夜勤の起床時間の差を3時間以内にするなど、就寝と起床を自らコントロールするのがポイントになる。

まとめ
                                                     (2023.9.25)
中央診療所のご案内集団検診センターのご案内