法人向けサービス
健康かながわ

わかりやすい健康管理-実践編

第2回健康管理懇談会では八月二十四日、「わかりやすい健康管理―実践編」をテーマに産業医科大学産業保健管理学研究室の堀江正知助教授による「職場における健康情報の取り扱い」の講演が行われた。堀江先生は「労働者の健康情報に係るプライバシーの保護に関する検討回中間取りまとめ」の報告書作成にも関わっており、健康情報の取り扱いについての詳しい解説がなされた。

わが国では労働衛生法規により、事業者が法定の健康診断の結果を保存し、労働者の健康を保持するために必要と認める措置について、医師などの意見を聴いたうえで実施しなければならないと規定されている。また労働者への通知も事業者が行い特に健康保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師、保健婦等による保健指導を行うように努めなければならない。

しかし、職域における法定健康診断以外の健康情報(法定項目以外の健康診断結果、法定以外の健康診断結果、診断書、保健指導や相談の記録など)の保存や利用については、定められていない。

労働者の個人健康管理情報についての国際規範

国際的な動向として最も有名なものは1980年のOECDの「個人情報の取扱いに関するガイドライン」である。そこでは(1)収集制限(2)内容の適正化(3)目的明確化(4)利用制限(5)安全保護(6)情報管理方法の公開(7)個人参加(8)責任、の八原則を挙げている。その他には85年、「職業衛生機関に関するILO勧告」で、労働者の個人の健康情報記録についての守秘の必要性を示している。その後98年には「労働者の健康サーベイランスのための技術・倫理ガイドライン」で、労働者の医療情報の収集や保存は医療上の守秘義務に従って医療職が行い、労働者は自分の健康や医療の記録を見る権利があるとしている。

国内の労働者の個人健康管理情報についての倫理指針

国内はどうかというと、1998年、健康開発科学研究会が「産業医の倫理綱領」で、事業場外からの健康情報は産業医に届けて管理し、事業者には必要最小限の通知をすることを提唱した。また99年、日本産業衛生学会は「産業保健専門職の倫理指針」の中で、産業保健専門職が労働者の健康情報を管理し、プライバシーを保護することを定めている。また労働者の安全と健康を守るために健康情報を事業者に開示する必要がある場合は、労働者の承諾を前提とし、その範囲は職務適性の有無や労働に際して具体的に配慮すべき事項に限定するとしている。

個人情報保護基本法大網

政府としても個人情報の保護・利用の在り方を総合的に検討し、2000年10月、個人情報保護基本法大網を公表した。それによると個人情報の基本原則は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであり、個人情報を取扱う者は、個人情報の適正な取扱いに努めなければならないとされた。

労働者の健康情報に係るプライバシー保護に関する検討会中間取りまとめ

それに先立ち、1999年3月に、旧労働省では、労働者の健康情報に係るプライバシー保護に関する検討会が設置され、労働者の健康情報に係るプライバシーの保護に関する課題と対応について、「中間取りまとめ」が公表された。報告書は、事業者、労働者、産業保健スタッフ等が現行法規の範囲において、当面自主的に取り組むことが望ましい事項についてを「当面の対応」とし、法制度の検討を行う際に整理することが望ましい事項は「将来的課題」として提言している。  それによると"職域の健康情報の区分"を「法定健診結果」、「努力義務に係る健康情報」、「任意の健康情報」、「事業場の外からの健康情報」の四段階に分けている。そして"健康情報の取扱いに関する用語"については、「収集」、「保管」、「開示」、「使用」、の四つに分類し、取扱いの段階を明確にしている。 また"健康情報の取扱いに関する課題と提言"の中で、労働者の健康情報を適正に処理するために必要な内容として次の六項目の提言をしている。

1. 個人の健康情報を取扱う 者に、健康情報に対する認識を向上させること。
2. 個人情報の取扱いについては、事業場でルール化すること。
3. 産業医等はそのルールにおいて、事業者が健康管理上及び人事管理上、就業上の措置や適正配置の観点から必要最小限の情報について的確に事業者に渡す役割を担うこと。
4. 衛生管理者は、事業場内においてそのルールを周知する役割を担うこと。
5. 保健婦(士)等は職種の性質上、家庭問題や対人関係といったものまで含めて労働者個人の健康に関わる情報を広く知り得る立場にあるため、事業場の保健婦(士)等の健康情報に対する役割や義務について、事業場におけるルールの中に盛り込むべきであること。
6. 上司と部下の間の個人の信頼関係に基づいて伝達された健康情報については、その情報が書面として保管された場合には他の健康情報と同様に行う必要があること。

中央診療所のご案内集団検診センターのご案内