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健康かながわ

呼吸器と肺の疾患

今年度の第3回目が、9月26日「呼吸器と肺の疾患」をテーマに行われた。まず、神奈川産業保健推進センターの石渡弘一所長が、「今なぜ結核―正しい知識をもてば怖くない」を、そして予防医学協会中央診療所の井出研所長が、「肺がんの早期発見」をそれぞれ講演した。フォーラム横浜(横浜市西区)の会場に、52団体、63人が参加した。

いまなぜ結核か

結核は減少を続けていたが、平成9年、38年ぶりに増加に転じ、厚生労働省は平成11年に結核対策の取り組みを呼びかけた。そこで神奈川産業保健推進センターの石渡弘一所長が「今なぜ結核―正しい知識をもてば怖くない」をテーマに講演した。

平成11年の1年間に新たに保健所に登録された結核患者数は48,264人で罹患率は人口十万対38.1である。また年齢階級別にみても年齢が上昇するにつれて罹患率も有病率も高くなっており、これは「休止していた結核菌が再燃したと考えられます」と石渡所長は説明した。 結核対策  わが国の結核対策は結核予防法に基づいて行われており、 制度的には健康診断、予防接種、患者管理、結核医療を基に行われている。その中の 健康診断はツベルクリン反応、エックス線検査、かくたん検査などがある。また定期健康診断や予防接種は事業所、学校及び施設において実施されている。しかし健康診断後、要精検となっていても再検査を受診しない人もいるという。 集団感染  結核集団感染は"同一の感染源が、二家族以上にまたがり、20人以上に結核を感染させた場合をいう。ただし、発病者1人は6人が感染したものとして感染者数を計算する"と定義されている。

その中で、近年の問題としては、自然感染率の低下による若年層での未感染者の増加による集団感染の危険が増加していることが挙げられた。 また近年事業所や高校などにおいて特に多く見られる結核集団感染に対しては迅速に適切な判断、対応が行えるように結核定期外健康診断ガイドラインも示された。  結核は伝染病であり感染源に対する措置はきわめて重要で結核を伝染させるおそれが著しいと認められる者に対して、保健所への必要な手続き、従業禁止、医療費の公費負担の手続きなどいくつかの措置が必要である。

石渡所長は「結核菌は短時間で分裂・増殖していく怖いものですが、きちんとした治療のもとで規則的に服薬すれば治る病気でもあるのです」と説明し、感染症としての結核の重要性を認識し予防対策を進めることが必要と話す。

肺がんの早期発見

予防医学協会中央診療所の井出研所長が「肺がんの早期発見」について講演した。肺がんの死亡が平成10年に胃がんを抜いて第1位になり、この傾向はアメリカやヨーロッパに追従しており、その理由として生活環境が似てくるからではないかという。また全年齢層で死亡率の増加傾向も認められ、特に70歳以上の高齢者層にはその傾向が著しく、死亡者数も死亡率も30年間で急激に増加している。

肺がん診断とヘリカルCT
肺がんは大きく分類すると肺野型腺がんと肺門型扁平上皮がんの二種類に分けられる。そして肺がんは診断も治療もかなり困難ながんといわれる。

肺がんの診断はX線診断と、かく痰細胞診が診断法の両輪という。そのX線診断には単純撮影と輪切り状の断層撮影であるヘリカルCTという最新機器がある。そのヘリカルCTは肺野型腺がんに威力を発揮し"小さな淡い"がんを見つけることができるという。したがって単純撮影であれば2年後、5年後に発見していたものをヘリカルCTでは早期に発見し、治療に結びつけることができるというものである。
しかし肺がん検診にも、検診カバー率、継年受診、比較読影、細胞診の実施、直接撮影か間接撮影か、などいくつかの問題点もあり今後の課題という。

喫煙と肺がん
たばこが何らかの影響を及ぼしていると考えられるのが肺門型扁平上皮がんである。扁平上皮がんの手術をした人のほとんどがスモーカーだったと井出所長は言う。たばこは肺がんばかりでなく、肺の疾患を含めた心筋梗塞など、ほかの疾患にも影響を及ぼしていると考えられている。

そこで神奈川県予防医学協会では、たばこをやめたい人を応援するための禁煙外来を行っている(毎週水曜日午後1時~:045-641-3697)。禁煙外来で行っている療法は、"ニコチン代替療法"という。その方法は、禁煙を困難にしている離脱症状に対してニコチンを補充することによって、一時的に離脱症状を軽減し、禁煙を容易にする方法である。実際には、ニコチン貼付薬を皮膚におよそ8週間貼ることで、ニコチンを体内に吸収し、無理なく禁煙ができるというものである。副作用はほとんどなく、パッチを1日1回貼るだけで、70%の成功率という。

井出所長は「治せる肺がんとは言っても、やはり大変な病気です。検診を受けることで、小さな淡いうちにがんを発見し、早期治療につなげましょう」と説明した。

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