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総合的健康支援-健康開発による医療費の動向

image第六回健康管理懇談会が、一月二十二日、フォーラム横浜で開催された。今回は「総合的健康支援―効果的な健康開発による医療費の動向」をテーマに、藤沢市保健医療センターの小堀悦孝診療所長と、健康保健組合連合会保健婦業務室の飯島美世子室長が講演し、50団体、70人が参加した。

藤沢市保健医療センター診療所の小堀悦孝所長は「健康増進施設と職域(産業)保健との連携」と題して健康支援の実践について紹介した。  
藤沢市保健医療センターは、診療所、保健センター、訪問看護ステーションの三つの機能を同時にもっている総合保健医療機関である。(図1)

同センターでは市民の健康度を上げることを目的に高血圧、肥満、糖尿病、高脂血症など生活習慣病といわれる疾患群の予防に力を入れている。

生活習慣病

まず血圧と脳卒中の関係を見ると血圧が高いほど脳卒中の発症率は高くなる。脳卒中の発症率を血圧110を1とすると血圧180以上では発症率が7倍以上になるという。このように血圧が高くなるにしたがって加速度的に発症率は上がってしまう。そのために脳卒中の発症予防には血圧の管理が重要になってくる。

次に動脈硬化性の病気とコレステロールの関係をみると、虚血性心疾患と脳血管障害の発症率はコレステロールが高くなるにつれて発症率も高くなってくる。これらの疾患のリスクを下げるにはコレステロールの管理が重要である。 コレステロールを下げる方法としては、一般的には食事療法・運動療法・薬物療法の三つの方法がある。しかし運動療法と食事療法で食い止めることができれば薬物療法は必要なく医療費の削減につながるという。

また肥満を表す指標であるBMIと有病率の関係をみると高脂血症、糖尿病、高血圧などはBMIの数値が高くなるほど有病率も上がっていく。このため体脂肪率を下げる必要がある。肥満を解消すれば有病率は下がるからである。  さらに糖尿病は、遺伝的素因を持っている人がある一定期間エネルギーの過剰摂取などの環境因子が加わって発症するという。

しかしこれだけでは発症せず何らかのきっかけが必要である。例えばストレス、加齢、風邪などの感染、運動不足などの要因が重なってはじめて発症する。そこで糖尿病の発症を防ぐには環境因子、特にエネルギーの過剰摂取に気をつけることが大切である。

健康づくりシステム

image同センターでは市民の健康支援のため「健康づくりシステム」(図2)が考えられている。生活習慣病といわれるこれらの疾病を改善するには、禁煙、休養、運動、栄養などの、ライフスタイルを変えることが重要になってくる。

そのプログラムはまず健康度と体力度のチェックを行い、その結果に基づく「生活習慣予防改善教室」「食生活教室」「健康づくり教室」「健康相談」「トレーニング事業」など に参加してもらう。

運動療法

高血圧、肥満、糖尿病、高脂血症という疾患をもっている人やその予備軍には運動療法を中心にした「健康づくりトレーニング」が用意されている。例えば「高血圧の人だけのプログラム」を高血圧やその予備軍の人が実践することで、体重の変化や体脂肪率の減少を目指せるという。  
このプログラムの体験者の中には「体が動きやすくなった」など効果を実感した声も多いという。さらにこのトレーニングに慣れてくると安静時の血圧も下がり運動による降圧作用も認められるという。  
小堀所長は「ある程度管理された運動であればどんな人でも効果をあげることができます」と説明した。

地域保健と産業保健

地域における保健活動の対象は、主婦層と退職者の占める割合が多い。しかし産業保健が担うことになっている中小企業で働く人の健康管理は、十分に行われていないのが現状である。そこで医師、保健婦、栄養士、運動指導員などの人材を有する地域保健の担当する施設が、中小企業従事者の健康管理などの保健指導を行えば、地域保健と産業保健との連携に結びつくと小堀所長は説明した。

「事例からみる効果的な健康事業とは」
健康保険組合連合会保健婦業務室の飯島美世子室長は厚生労働省では現在生活習慣病予防対策として地域・職域の連携保健事業のあり方の検討を行っており、最後の詰めに入っているという。   
健保組合と事業所の連携について、保健事業をどのようにすれば効果的にできるのか。ライフスタイルの違いは医療費にどのように影響を及ぼすのか。喫煙、飲酒、肥満、運動などの習慣と医療費の関連を調べ、健康と医療利用による効果を評価することを目的にした調査研究の「大崎国保コホート研究」(主任研究者:東北大学辻一郎助教授)について説明した。

医療と健診受診の状況を調べると、「毎年五年間継続して受診した人」は、「めったに受診していない人」や「まったく受診していない人」に比べ医療費が低いという。健診の継続受診者は、疾病の早期発見・治療が可能であるために医療費が低いと考えられる。また健診後に行われる医師・保健婦による健康相談で疾病予防効果もあるのではないかという。その結果健診の継続受診者は健康レベルが高く生活習慣も健康的なことがわかる。
さらにたばこを吸わない、飲酒習慣がない、肥満度が低い、毎日よく歩く人は、医療費が低く、たばこを吸う人は少し高くなり、飲酒習慣、肥満など二つ三つと重なる人ほど医療費は高くなっていくデータが出ている。  医療費節減への方策としては①健康増進と疾病予防の徹底、②予防の実践による負担と給付の公平化、③医療の有効性に基づく給付(東北大学久道茂セミナー報告抜粋)が考えられると報告した。

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