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社員の健康管理をめぐる法律問題

「社員の健康管理をめぐる法律問題」と題して平成11月12日、第4回健康管理懇談会が横浜商工会議所で開催され、112団体、150人が参加した。講師は中町誠・弁護士である。

中町誠・弁護士は「なぜ、今、企業の安全配慮義務」が問われているのかについて次のように説明した。昭和の頃は企業に対して安全配慮義務という考え方がなかった。従業員が訴えることは稀であったが、企業の不法行為として争われたが時効が3年と短く立証準備できないうちに期限切れになってしまっていた。

しかし、昭和50年の自衛隊事件で最高裁は雇用契約の付随義務として安全配慮義務を示した。使用者はここではじめて従業員に対して安全配慮義務があるとした判決がなされたのである。安全配慮義務は10年の時効で充分な立証準備期間がある。
中町弁護士は、従業員が死亡した場合には労災賠償事件では次の3点が争われることになると述べた。まず、
①因果関係。医学的な因果関係が問われる。②疾病を企業が予見していたかどうか。あるいは予見できた場合に結果回避努力を尽くしたかどうか。例えば、企業は仕事を軽減させる対応をしたかどうかなどである。③個人の責任はないか(過失相殺)。

具体的なケースとして「労働者の健康診断受診義務」について、帯広電話局事件と愛知県教育委員会事件があげられる。
帯広電話局事件(昭和61年)は、頚肩腕症候群に罹患した職員に総合精密検診を受診するように命じた。これに対して個人は医師選択の自由があるとし受診を拒否したので懲戒戒告処分を行った。これに対して懲戒処分は無効であると訴えた。判決は健康管理従事者の指示を誠実に守らなければいけないとした。

愛知県教育委員会事件(平成13年)は、教職員が過去の疾病検査でX線暴露が心配であるとして受診を拒否した。判決は教職員の健康が、児童・生徒の健康に対して大きな影響をあたえるので結核に関するX線検査を受診することを命ずることができるとした。  
「休職制度と復職」については片山組事件(平成10年)があげられる。建設現場で21年間現場監督を行ってきたがパセドウ病に罹患し、当分の間自宅治療(4カ月間)を命ずる業務命令を受けたが、その期間は欠勤とされ賃金の支払いがなされなかった。判決は、会社は本人が事務作業に関わる能力があるのに、本人の配置・異動を検討せずに対応したために賃金の支払い義務を免れないとした。

「産業医の責任」として三菱電機事件(平成11年)があげられる。関連会社に出向中にくも膜下出血(昭和60年)を発病した。平成元年に定年退職したが、その後、会社は出向従業員が出向先の業務によって疾病を発病しないように配慮すべき安全配慮義務違反と訴えた。
判決は、産業医は健康診断などによって従業員が当該業務上の配慮をする必要があるか否かを確認する責任はあるが、労働者の疾病そのものの治療の責任はなく、安全配慮義務違反とはいえないとした。

メンタルヘルスの諸問題

三洋電機サービス事件(平成13年)は、本人が課長に昇進したこと、父親の痴呆・死亡から精神的疾患に罹り自殺したケースである。

1.自殺の予見性の有無。会社および直属上司は日ごろから従業員の健康を損なうことがないよう注意していれば予見が可能であるとした。
2.注意義務違反の有無。 直属上司は悪意はなく、勤務継続させるために叱咤し出社を強要したことは、健康を配慮する注意義務違反にあたるとした。
3.因果関係の有無。自殺は父親の痴呆・死亡、本人の性格、課長職の悩みなど複合の因果関係は認められる。本人固有のものが7割、会社・上司の責任は3割とされた。
4.過失相殺。妻や本人が主治医に自殺未遂など報告せず定期通院しなかったこと。また妻は本人の勤務継続を望み同僚や上司にはげまし仕事するように依頼している。家族の過失といえないまでも過失相殺類似として5割の責任があるとした。

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