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健康かながわ

健康診断の事後措置 -積極的に話を聞いて組織の健康を向上させる

imageかながわ健康支援セミナーが9月15日、松村ガーデンホールで開催された。講師に富士ゼロックス㈱全社産業医・河野慶三先生を迎え「健康診断の事後措置-積極的に話を聞いて組織の健康を向上させる」のテーマで講演が行われた。  このセミナーは神奈川県予防医学協会が事業所の健康管理担当者を対象に、最新の医療や健康づくりに関する情報を提供するもので、当日は89団体から109人が参加した。

富士ゼロックス株式会社の社員数は約15,000人。開発・製造部門は首都圏を中心に6事業所、販売・管理サービス部門は北海道から沖縄までおよそ200ヶ所にある。
同社の産業医である河野慶三先生(左 写真)は今から10年前に、健診後3ヶ月以内に産業医が直接、社員の一人ひとりと面談する「全員面談」を開始。現在、産業医10人、保健師11人の態勢でこの全員面談を行っている。実施数は年間13,000(昨年度実績)でそのうち、産業医が7~8割・保健師が2~3割の面談を担当している。

この全員面談のコンセプトは「全社員に産業医が年1回会うこと」。原則として初回から3回目までは産業医が担当することになっている。産業医・保健師は全員首都圏の事業所に在籍しているため、出張の多い多忙な業務であることがうかがわれる。

同社では1996年に社員の健康に関する基本的な考え方をまとめ、最高意思決定機関である経営会議で承認を受けた。そして1998年、就業規則の一部である「安全衛生規程」を全面改訂し①社員の健康は社員にとっても会社にとっても資源であること②健康はセルフケアが基本であること③会社は社員のセルフケアを支援すること、を定め、社員に明示したのである。企業自らが「組織の健康」について基本的な考え方をまとめたことで、健康管理のプライオリティは明確になっている。

セルフケアを支援する

「面談のポイントは"聴く"ことです」と河野先生。相手の関心のあるところに焦点があたる面談でなければならない、というのだ。相手の満足感を大切にしながら健康に関する考えを表現してもらうことが15分間の面談のポイントになる。そうなると健診結果を見せて、所見や数値の説明だけを行う相談は通用しない。

まず健診結果をいっしょに見ることから始める。相手の関心に相談者が気づくことが大切で、そこから会話を始める。そしてその人のできることを探っていくことが相談のゴールになる。 例えば高血圧に人の場合には血圧の記録をとること、そしてその記録を1ヵ月後に提出することを約束して面談は終了する。1ヵ月後保健師が記録の提出の有無を確認するが、もし提出されていなくても深追いはせず、来年の面談を待つことになる。 健康管理の基本はあくまでセルフケアであり、一人ひとりの社員の自律を促すことが全員面談の目的となる。

組織の健康

企業が勝ち残りをかけて労働生産性をあげるために行ったさまざまな施策は、結果として社員の業務量を増やし、作業密度を高めた。過重労働にみられる、いわゆる「ゆとりのなさ」が日本企業に蔓延している。
こういった状況下ではメンタルヘルス不全をはじめとした社員の疾病が増えてくる。河野先生は、この状況は1995年くらいに始まったという。

「今期、最高益を上げたとしても、ある部署では数年後には意欲的に働く社員がいなくなってしまう」、河野先生はこういったショッキングな指摘を経営陣に行うことがある。経営陣は即座に「その根拠は?」と尋ねる。「毎年、全社員に会っているから」と答えることができることが河野先生の強みだ。

全員面談で得た情報を「組織の健康」として経営トップにフィードバックすることで、産業保健活動が経営支援に結びついてゆく。組織の健康状態を把握するためには、遠回りのように見えるが、全社員に会い直接話を聞くことは実際的だ、と河野先生は言う。

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