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従業員の健康管理に関する法律問題

かながわ健康支援セミナーが1月26日、松村ガーデンホール(横浜市中区)で開催された。講師に岩本充史弁護士(安西・外井法律事務所)を迎え「従業員の健康管理に関する法律問題」のテーマで講演が行われた。今回のセミナーでは健康管理に関する裁判例の動向、損害賠償請求・労災請求に対する企業の対応などの法律問題について解説が行われた。このセミナーは神奈川県予防医学協会が事業所の健康管理担当者を対象に、最新の医療や健康づくりに関する情報を提供するもので、当日は90団体から106人が参加した。

近年従業員の健康管理に関する法律問題、中でもメンタルヘルス不全者の過労死、自殺などの裁判例が多く、企業の「安全配慮義務」が議論の前提になっていることが多いと岩本弁護士は説明。
会社と従業員との間には雇用契約がある。従業員は労務を提供し、会社は賃金を支払うというもの。しかし従業員はただ単に働けばいいのではなく、会社の業務命令に従った労務の提供をしなければならない。したがって会社は従業員の労働時間を管理したりするなどして、生命や身体を害さないように配慮する義務がある。

労災と民事の損害賠償請求

労務提供の過程において、労働者に損害が発生した場合、労災や民事の損害賠償請求が考えられる。しかしその二つが決定的に異なることは、労災請求は業務上と認められれば保険給付がなされるが、民事損害賠償請求は、いくつかの要件を満たさなければならない。 その要件は、安全配慮義務の内容、義務違反行為(予見可能性)があったか、損害が労働者に発生したか、相当因果関係があったかなどである。

民事訴訟では損害賠償請求を行う者が主張、立証を行なわなければならないが、訴訟手続きによらず示談交渉で紛争を早期に解決している事例が、相当数あると思われる。
「電通事件」などの長時間労働労働を前提とする事案においては、会社に過失が認められ、損害賠償責任が認定されている。それゆえ現実に労働時間を減らす方策を講ずることが大切である。

人事労務上の諸問題

会社ではなんらかの病気が疑われる従業員に対し、規程を明確に定めておけば「受診命令」(医師の診断を受けてください)を出すことができる。また職場内で異常な言動をする人を産業保健スタッフと会社が慎重に検討し、本人に可能な仕事を与えるために「配置転換」も考えられる。 しかし受け入れ先が見つからない社員やどこへ置いてもだめだという場合は「休職」発令や、「解雇」を検討せざるをえない場合もある。

岩本弁護士は「解雇はあくまでも最終手段、先ずは休職制度の適用を検討してください。その後解雇を検討する場合は、客観的で合理的な、具体的事実関係の理由を準備しておくことが重要です」と注意点を述べられた。
参加者から寄せられた質問の中には「体調の悪い人に自宅療養を勧めても聞き入れない」「個人情報保護の観点からどこまでの情報を上司に伝えたらいいのか」「配置転換でうつ病になったと訴える人がいる」など、各事業所の担当者にとっての問題は多数あることが伺えた。それぞれの質問に対し岩本弁護士は、法的な判断による対応方法について分かりやすく答えた。

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