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健康かながわ

職場環境等の改善によるメンタルヘルス対策の実際

平成18年度第4回かながわ健康支援セミナーが11月17日、当協会2階会議室(松村ガーデンホール)で開催された。講師にソニー株式会社人事センター産業保健部の島津美由紀臨床心理士を招いて、「職場環境等の改善によるメンタルヘルス対策の実際ー成功事例の紹介と効果的な組み立て方ー」をテーマに講演。76団体100人が参加し、参加者を交えてディスッカッションも行われた。

事前説明会の要点

組織支援は、メンタルヘルス施策に置ける一次予防的なものとして、病気の発見ではなく、「ひとりひとりがより元気に、能力を発揮できる環境づくり」が大きな目的となる。
組織支援を行うにあたり、目的や方針が決定した後は、管理監督者、人事担当者、安全衛生委員会などを対象に、次の4点をポイントに事前説明会を行う。
a調査・対策の目的(職場環境の改善)
b結果の取扱についてのルールを説明(人事評価とは無関係)
c結果から職場のストレス対策につなげる施策と理解してもらう
dプライバシーの保護

組織支援の実施手順

では、組織支援の実施手順について事例を交えながら説明しよう。

1. ストレス調査を実施
毎年10月に事業所の社員全員を対象に、「職業性ストレス簡易調査票(12項目版、下光ら、1998)」を無記名により実施。職場環境の改善が目的のため、派遣社員にも受けてもらう。回収率80~90%で、1回目はテスト用紙で、2回目以降は社内イントラネットで実施した。実は回収率は紙の方がよい結果がでた。Webでは後回しにされやすいため、産業スタッフのほか、事業所長からの名前でメールをだすなど工夫している。

2. 結果の集計と返却
職場(部)ごとに、「仕事のストレス判定図」により集計した結果の解説を添付して、管理監督者あてに返却(10人以下の職場ではプライバシーの保護から結果を返却しない)。
なお、「仕事のストレス判定図」では、量的負担と仕事のコントロール(裁量権または自由度)により示される「量~コントロールリスク」と、上司の支援と同僚の支援により示される「職場の支援リスク」、さらに両者を総合的に考慮した「総合リスク」の3つの健康リスクが、全国平均を100として算出される。

3. 結果検討会の実施
産業医・心理職・看護職でチームを組み、各職場を訪問し、管理監督者(課長以上。誰が参加するかは部長に判断を任せる)と意見交換する。職場ごとに各1時間程度の検討会を行う。
結果検討会では、はじめに調査の実施目的の確認やマネジメントの役割について話し、ストレス調査の結果について解説する。職場からの声を拾うため、産業スタッフからの話は最小限に心がける。

次に、「ストレス対策のヒント集」や「職場環境改善のためのヒント集」を使いながら、問題点・ストレス要因の洗い出しを行う。仕事上のストレス要因別に、職場での「具体的な」問題点を探り、「問題の重要度の高さ」と「実施のしやすさ」の双方を考慮し、実施しやすいストレス要因を絞り込む。

最後に、管理監督者が主体となってアクションプランの立案・検討を行う。なかなかアクションプランが出ない場合は、過去の似たようなケースでの対策を探したり、他の職場でうまくいっている例を手本にするなど、問題点に応じたアクションプラン例をヒントとして促す。強制ではなく、あくまで職場から対応策を出してもらうよう産業スタッフはサポートする。
最後に、「対策シート」に実際に立てたアクションプランを書いて提出してもらう。

結果検討会の効果

image結果検討会を行うと、会議に上司が休む職場では上司の支援は低くでるなど、普段うすうす気づいていた問題点が結果として数値に現れる。客観的指標により職場でのストレス要因を把握することで、放っておけばトラブルに発展するかもしれない問題の対策を進めるきっかけになる。

また、検討会を実施した職場(実施群)としていない職場(非実施群)で「尺度得点」の経年変化を調べたところ(図1)、非実施群では量的負担が増え、上司の支援、同僚の支援が減った。逆に実施群では、量的負担が減り、コントロール感が上がり、上司の支援、同僚の支援が増えるという結果がでた。なかでも職場の支援やコミュニケーションの改善が顕著で、検討会は職場内や産業スタッフとのコミュニケーションを提供するひとつの場になることがわかった。

「健康リスク」の経年変化をみると、実施群はストレスが低くなり、健康リスクが減った。以上のことからも、結果検討会の実施がより有効であることがわかる。
今後の課題として、組織の活性化を視野に入れていきたい。「生産性の向上」と「仕事での満足感」には優位な相関がでている。今後は「仕事での満足感」などのポジティブ要因を測定し、職場環境の改善に加え、ポジティブ要因をより向上したいと考えている。

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