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健康かながわ

産業保健活動と特定健診・特定保健指導

平成19年度第3回かながわ健康支援セミナーが10月31日、神奈川中小企業センターで開催された。労働衛生コンサルタント事務所オークスの竹田透所長が「産業保健活動と特定健診・特定保健指導―それぞれの役割と連携を考える―」をテーマに講演を行った。このセミナーは神奈川県予防医学協会が事業所の健康管理担当者を対象に開催しているもので、111団体145人が参加した。

来年4月にスタートする『特定健診・特定保健指導』。果たして、その仕組みはどの程度理解されているのだろうか。冒頭、竹田先生は参加者に尋ねた。結果、「ちゃんと(あるいは大体)分かっている」と答えたのは約1割。講演は、最初に特定健診・特定保健指導について確認した上で、産業保健活動との関連を中心に進められた。

特定健診・特定保健指導とは?

image医療保険者の役割分担として法律に基づき40~74歳の加入者を対象に行われる、内臓脂肪型肥満に着目した生活習慣病予防のための健康診査・保健指導である。

特定健診の項目は表1の通り。竹田先生は「重要なのは既往歴の調査に服薬歴と喫煙歴が含まれること。労働安全衛生法(安衛法)の定期健診項目との違いは、胸部X線検査が入っていないことと、貧血検査と心電図検査が基本項目ではないこと。そして安衛法の定健項目では総コレステロールがLDL-Cに変わり、腹囲測定が加わったこと」と説明。

産業保健との関連

産業保健活動の目的をまとめると、①業務を行うことによって労働者に健康障害が発生するのを予防すること②労働者の健康状態に合わせた配置を行うことで健康状態の悪化を予防すること―の2つ。

では安衛法の定期健診の目的は、労働者が健康を確保しながら就業できるようにすることである。保健指導に関しては、労働者の自主的な健康管理を促進することを目的とし、産業医の選任義務のある事業場では個々の労働者の健康状態等について詳細に把握しうる立場にある産業医を中心に実施されることが適当とされている。

一方、特定保健指導の目的は、生活習慣病に移行させないことが第一。特定健診は、その対象者を抽出するためのものである。「特定健診・特定保健指導は産業保健活動の一部とは言えない」と竹田先生は言う。理由は、目的が一致しないこと。さらに、実施責任者も異なる点である。

混乱をどうするか

現在、現場で生じている混乱に対し竹田先生は、役割分担が曖昧なまま物事が行われてきたことも一因ではないかと指摘し、「まず、産業保健活動や産業保健スタッフの役割および業務内容は何なのか、はっきり認識すること。そして事業者のやるべきこと、保険者がやらなければいけないことは何なのか、それぞれの責任を明確化することが一番大事。その上で、どう協力していくかを考えていくべきではないか」と述べた。

実務面での問題

image実務面では基準値のズレが大きな問題となる(表2)。当然、「どうして?」と思う受診者が出てくる。「実施前までに診断基準やメタボリック対策の重要性について十分説明し、周知徹底しておくことが大切」と言う。

特定健診で扱われない安衛法の健診項目や特定保健指導の階層化に用いられない検査結果等については、産業保健スタッフが対応する必要がある。

また、事業所健診が優先されるので、事業者は保険者の求めに応じて特定健診項目の結果を抽出して提供しなければならない。抽出せずに全てのデータを提供する場合は、受診者に同意を得る必要が生じる。

連携の重要性

「特定保健指導の概念は非常に良いものなので、今回の制度をきっかけに保健指導の方法や質の向上について問い直し、保健活動の責任と役割分担を明確化する良いチャンス」と竹田先生。アウトソースを活用した事業展開になることも多く、効率的で質の良い保健指導を実現するには、各担当スタッフの連携が非常に重要になる。「大事なのは、対象者のことを第一に考えて事業者、保険者、産業保健スタッフがしっかり話し合うこと。皆で一緒に考えて良い方向に進めていって欲しい」と強調し、講演を締めくくった。

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