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健康かながわ

過重労働(長時間残業)とメンタルヘルス)

産業保健活動の向上を図ることを目的に行われている「かながわ健康支援セミナー」の第2回目が、9月9日に神奈川県予防医学協会2階会議室で開催された。今回のテーマは「過重労働(長時間残業)とメンタルヘルス」で、富士ゼロックス(株)全社産業医である河野慶三先生を講師としてお迎えした。富士ゼロックスは産業医・保健師が社員全員に面談するという仕組みを導入し、社員の健康状態を把握し同時に健康の自己管理を促している。今回のセミナーには、66団体76人の、事業所の産業保健に携わる人々の参加があった。

労働者のメンタルヘルスに関する事業者の法的責任の範囲がこの10年で急激に拡大し、事業者はこの問題に対処しなければならなくなっている。これは労働契約下にある労働者の健康問題をリスクとして捉える必要があることを示している。過重労働を手がかりに、事業者のするべきことについて考えてみる。

メンタルヘルス不調が発生する職場状況

メンタルヘルス不調は、「精神および行動の障害に分類される精神障害、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものである」と定義されている。
職場ではメンタルヘルス不調者が増加しており、その多くに共通して見られるのはうつ状態である。そこで「うつ」が発生する職場状況をみてみよう。

1.過重労働の問題
過重労働には、量的な面と質的な面があるが、まず問題となるのは長時間労働である。長時間労働を許容する職場風土の存在、そして管理監督者のマネジメント不足が問題となる。
さらに現場からみれば達成困難なことが明確な事業計画がそのまま承認され、恒常的な未達成が生じる。それをカバーするために特定従業員への業務集中が起こり、その従業員が疲弊する。それがメンタルヘルス不調を含む健康問題を発生させる下地となる。

2.職場環境の問題
職場では管理監督者、同僚が相互に助け合って仕事を進める雰囲気が希薄になっている。自分の業務をこなすのに精一杯で、周囲の状況に気を配る余裕がないという問題がある。また部下とのコミュニケーションがうまくできず、その対応に苦慮している管理監督者も少なくない。

3.労働者本人の問題
社会の大きな変化を受け止めるだけの資質が求められるようになったが、それが困難な従業員にとっては、負荷が大きい。また成果主義で評価されるのであれば自分の希望業務を担当できる部署に配属して欲しいと思っている従業員も多い。しかし、人事部門にとっては、従業員の希望に沿った人事異動をすることは難しい。これも解決が容易でない課題である。

4.事業者への不信感
従業員の中には、現場の情報が事業者に正確に伝わっていないと感じている人も多く、これが従業員の不安や不満に直結している。

5.グローバリゼーションへの不安
今やカネとモノは国境を越えて動いている。従業員も海外のどこへ行かされるかわからない。さらに国内においても企業の買収や合併、それに伴う転籍、子会社への出向など、自分が将来どうなるのかわからないという漠然とした不安がある。

事業者がするべき事

過重労働による健康障害を防止するために「長時間労働をしている労働者には産業医の面接相談を受けさせる」ことが事業者の法的な義務となった。
産業医面接をすることで労働者の健康状態を確認することができる。さらにその結果を過重労働と考えられる労働者を減らすことに繋げていくのである。 事業者には、過重労働防止のために、全従業員の労働時間をしっかり把握することが求められている。

この評価表はメンタルヘルス対策として企業が何をすればいいかを考える際の指標としても有用である。

富士ゼロックスの取り組み

富士ゼロックスでは、毎年従業員の定期健康診断を実施した後、産業医・保健師が全ての社員を対象として、1人につき15分間の面談を行っている。全員面談の狙いは従業員が自分の健康状態を把握することで健康に対する意識を高め、健康の自己管理を実行するよう促すことである。

面談では、健康上の問題のほか、職場での人間関係や業務によるストレスなど、仕事に伴うメンタルヘルスの問題も含めて何でも相談できるようになっている。産業医が常駐していない地方の営業所についても、事業所の規模や場所を問わず、担当の産業医が訪問している。

全員面談を10年間続けたことが、自分の健康に関心を持ち、健康管理に気をつける従業員を徐々に増やしているという印象がある。風土が少しずつ変化しているのである。
従業員の健康は、企業が持続可能であるための不可欠要素である。富士ゼロックスが導入した全員面談は、従業員の心身の健康をケアする仕組みとして定着したといえるだろう。

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