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健康かながわ

職場におけるロコモティブシンドロームとその予防

 平成22年度第1回「かながわ健康支援セミナー」が、8月30日『職場におけるロコモティブシンドロームとその予防~健康なシニアライフを送るための今からの備え~』と題して、松村ガーデンホールで行われた。講師は、独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター・病態総合研究部部長・福井尚志先生。生命の寿命と運動器の寿命の乖離を減少すべく提唱されたロコモティブシンドローム。その病態と予防方法について解説した。今回のセミナーには49団体60人の産業保健に携る方々が参加した。

ロコモティブ・シンドロームとは

 ロコモティブ・シンドロームとは高齢者の運動器(筋肉、骨、関節、靭帯、腱、神経、脊椎・脊髄など身体の動きに関わる諸組織・諸器官の総称)の複合的な障害についての新しい概念で、骨粗しょう症、変形性関節症、脊柱管狭窄症の3疾患が中心となる。これらの疾患が合併して起こった場合、要介護の状態に陥る危険が高い。要介護・要支援に陥る要因は、脳卒中の23・3%に続き運動器疾患が21・5%と第2位である。2007年に世界で初めて超高齢化社会(65歳以上が21%以上)となった日本にとって、高齢者の増加に伴う要介護者の急増は大きな社会問題である。高齢者の自立を維持し、要支援・要介護になる危険を避けることは社会的にも大きな意味があるうえに、高齢者の生活の質の向上にもつながる。

骨粗しょう症

 骨の作られる量と壊れる量のバランスが崩れ、骨密度が低下し、骨が非常にもろくなった状態。骨折を起こしやすく、その中でも一番問題となるが大腿骨近位部(股関節の周辺)の骨折、次いで背骨の骨折となる。そのほかに骨粗しょう症による慢性的な腰の痛みが生じる場合がある。
  高齢者では骨折をきっかけに要介護の状態になる場合がきわめて多い。しかし、自覚症状がないままに骨粗しょう症が進み、骨折が起こってはじめて気づくことも少なくないので、若年時からの予防が非常に重要となる。またDXA法などを用いることで骨密度を正確に測ることが出来るようになってきた。骨粗しょう症の危険のある人を早期に見つけて、予防や治療を早めに開始することが大切である。日本人のカルシウム摂取量は常に不足気味なので、予防のためにはできれば800㎎/日摂取するようにしたい。また、ビタミンD、ビタミンKも併せて摂取を心がけたい。


変形性関節症

 関節軟骨が次第に変性・消失していく病気で、症状としては痛み・関節の腫れ、曲げ伸ばしの制限、変形、不安定性などがある。
いろいろな関節に生じるが、臨床上一番問題となるのは膝関節に起こる変形性関節症(変形性膝関節症)で、その患者数は日本国内で1?000万人以上とも言われている。
  現在、進行を止める治療法は無く、実施されているのは対症療法のみである。進行を遅らせる為には肥満の解消や膝関節への負荷の軽減があげられる。また、運動も進行を遅らせることはできないが、痛みを軽減する効果がある。
  グルコサミン・コンドロイチン等のサプリメントに関しては、効くか効かないかははっきりしないが、安全性は確認されているので服用しても問題はない。購入の際には成分・含有量・製造元に注意を払うと良い。

腰部脊柱管狭窄症

 椎間板の突出、靭帯の肥厚、脊椎のずれなど年齢に伴う脊椎の変化が複合して脊柱管が狭くなり神経の圧迫が生じた状態で、中年以降に多く緩徐に発症する。歩行中に生じる下肢の痛みが主な症状である。椎間板ヘルニアとはっきり区別できない場合があり、また両者の中間例もある。脊柱管狭窄症も現在対症療法しかなく、ブロック注射・投薬・シップの使用が多く用いられる。その他リハビリやコルセットの着用という方法もある。これらの治療で症状が改善されない場合は手術となる。
  椎間板をいためないことが最大の予防となり、またそのことが腰痛を防ぐ事にもつながる。具体的には肥満の解消と腰椎への負担の軽減、また、腹筋・背筋を適度に鍛え、腰椎の柔軟性を保つことも重要である。

ロコ・チェックとロコ運動

 骨粗しょう症・変形性関節症・脊柱管狭窄症を複合的に、治療・予防をするという考え方は整形外科の医師にもあまり無い。高齢者の生活の自立喪失を予防するためには3つの疾患をまとめてとらえ、ハイリスクの人を早期に発見して、予防したほうが効率的である。
  「ロコモの普及を通じて、生命の寿命の延びに運動器の健康寿命が追いつくことができればそれに優るものは無いと思います。また、労務管理に携る方々は、若年のうちから骨粗しょう症の予防を講じることも大切なことです。」と福井尚志先生は締めくくった。
*DXA法(デキサ法:二重エネルギーX線吸収測定法)  
2種類のエネルギーレベルのX線透過率の差を利用した、骨密度検査法です。


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