産業保健活動の向上を図ることを目的として開催されている、かながわ健康支援セミナー。平成22年度の第6回目が1月27日、松村ガーデンホールで開催された。
講師に日本ソーシャルスキル協会代表理事の小森まり子先生を迎え、「行動変容のクライアント状況別支援法」をテーマに講演を行った。今回のセミナーには県内の事業所などから56団体65人の産業保健に携わる方々が参加した。
アサーティブな姿勢で受け止め言える雰囲気づくり
行動科学とは、人間の行動を予測し、上手に制御・コントロールしようとする学問である。さらに、行動のみならず、その人の感情や思考などについても幅広く考える。
集団の法則
人間行動には規則性があると言われている。例えば、講習や講義などの際、後ろのほうから席が埋まり、最前列の席は空席が目立つことはよくあると思う。後ろに座る理由を聞くと「答えられないと恥をかくから」、「みんながしているから」、「やる気があると思われると困るから」などの答えが返ってくると言う。
これは、自分の自由な意思ではなく、周りの人や関係を意識して行動を決定していると言える。
このように、人の行動は周囲との関わりによって決まってくる傾向がある。
重大事件や事故の背後にもこの心理状況がある。個人の中に疑問や不安があっても、上司や大多数の考えや場の雰囲気から意見を言えず、重大事故につながってしまう。疑問や不安など言いたいことが言えるためには、言い方と言える雰囲気・関係性が大切となってくる。
誰でも疑問や頼みごとは言いにくいもの。言いにくいことを言われた時、どう反応するか、知識として知っていて、普段はきちんとできたとしても、いざという時に反応できるかがよい関係性の構築につながってくる。
また、うまく反応できなかった時にどう関係性を修復できるかが大切となる。
アサーティブとは
アサーティブであるとは、沈黙でもなく、攻撃でもない。過剰に我慢しないで言葉を工夫して使いながら、感情的にならないで客観と主観で言う、あきらめないで場や間を変えて言うことである。
どんな状況であっても、相手の立場に立ち、相手の思いに沿ってアサーティブな姿勢で受け止めることができるかが重要である。
そこで、相手の気持ちも尊重しながら、自分の気持ちが相手に届くように工夫した自己主張法がアサーティブネス・スキルである。
自分の気持ちや意見を伝える技術だけではなく、相手がなんでも話すことができる、相手を受け止める雰囲気を作ることが大事になってくる。
グループワーク
今回のセミナーでは、数人のグループを作り、アサーティブネス・スキルを実践する時間をとりながら進められた。
参加者の方々は、小森先生の提示するテーマに沿って、活発な意見交換をしていた。相手から返ってくる反応が、自分が考えていたものと違った場合、それが好ましくない時に、自分自身をどう変えるか。まずは、相手からのメッセージは必ず自分が引き出したものという認識を持ち、自分の行動などを少しずつ変えていく。すると相手の受け止め方も変わり、自分にとって好ましくないと思った点が、好ましい反応に変わっていく。
「相手を変えることはできないので、自分が変わりましょう」と小森先生は提案した。
その後、相手から自分が期待する反応が得られるように、アサーティブな指導法として、注意やお願いの仕方や、上手なほめ方について事例をあげて説明。またグループワークでの実践が行われた。
続けて、抑揚をつけた話し方で、相手にやる気を起こしてもらうために、何をどう言えばよいかという傾聴法についてもグループワークが行われた。
受け止め、称賛し、共感することで、相手の元気ややる気を引き出すことができる。
小森先生は「皆さんが面談などを通じて、相手が自分のことを話すことで、変わるきっかけとなる運命の人になってください」と講演を締めくくった。