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健康かながわ

 日本人のがんの罹患率は2人に1人という驚くべき現状。その中でも女性の罹患率が最も高いがんが「乳がん」だ。第7回「かながわ健康支援セミナー」では、湘南記念病院かまくら乳がんセンター長、乳腺外科の土井卓子医師による「がんに負けない!自分、そして大切な人のために」と題した講演が行われた。定期検診と自己触診の重要性や最新の治療法に、産業保健分野に携わるスタッフなど60人の参加者は熱心に耳を傾けた。

高い罹患率と 低い受診率が問題

 日本女性のがん罹患率を部位別に比較すると、乳がんが最も多く、10万人に対して77・5人の割合だ(国立がんセンター2005年資料より)。死亡率は、胃、肺、結腸、肝臓がんに続いて5位となり、「かかりやすいが、命は守れる病気といえる」と土井医師。
  1年間に5万5、000人もが罹患し、40~60歳代の社会や家庭で重要な役割を果たす年代に多いのも特徴。近年では、欧米のように、70歳代以上の罹患も増加。年に1万2、000人が死亡している現状だ。
  「日本では、40歳以上の人に2年に1度の対策型定期検診を実施しているが、受診率の低さが問題」と指摘する。世界各国のマンモグラフィ検診受診率はオランダ88・1%、アメリカ81・1%などと比べ、日本は23・8%と低迷(OECDヘルスデータより)。土井医師は「受診率を上げれば、死亡率は減ります」という。
  日本で乳がんが増えた要因には、早い初潮、出産の減少、閉経後の肥満などがあげられるが、日常生活で減らせるリスクもある。

自己触診と検診で ぐんと下がる死亡率

  アルコール量の目安として、ビールを毎日ジョッキ2杯以上摂取すると、量と罹患率は比例するというデータもある。昼夜逆転などの不規則な生活を、10年以上している場合も要注意だ。逆に週3回以上の運動や肉体労働は、罹患率が2~3割減る傾向にある。家族歴や良性の乳腺疾患がある人もハイリスクだ。
  「リスクに負けず、検診と自己触診で体を守りましょう」と土井医師はいい、自己触診は、仰向けで乳房を広げた状態で行い「いつもと違う硬いものを感じたら、専門医へ行きましょう」と促す。とはいえ、自己触診より、検診で乳がんが見つかる場合の方が、早期の発見であることが多い。
  平成20年度の神奈川県内の検診受診者は22、171人で、乳がんが発見された割合は0・3%だ。初診に限ると0・5%に上昇する。いかに初めての検診が有用であるかがわかる。「未受診者の掘り起こしが重要です」と土井医師。
  マンモグラフィ検査による死亡率の軽減効果は、40歳代で17%、50歳代では23%と顕著だ。「検診を受けるだけで、これだけ死亡率が減るがんはありません」。

乳がんの 治療方法を考える

 マンモグラフィ検査や超音波エコー検査、視触診や問診などから乳房の状態を読み取り、しこりがあった場合は、細胞診や針生検を行う。悪性の場合、がんの病理学的特徴を知り、治療戦略を立てていく。
  ホルモンの刺激を受ける型か、HER2という増殖因子を有する型かなどを判断するのだ。
  「治療戦略で大切なのは患者さんの年齢や家計や家族、生きる姿勢、副作用などをいっしょに考えること。これが本当のナラティブメディスン(物語りと対話に基づく医療)だと感じます」と土井医師は力を込める。
  乳がんが発見されても治療方法を選択できる時代になってきているが、生活習慣の見直しと定期検診で予防することが最優先だ。

体験者が語る乳がんの負担と早期発見のメリット
川久保 友里さん

同講演では、NPO法人キャンサーネットワークジャパンのコーディネーター・川久保友里さんが、早期発見の必要性を訴えた。
  川久保さんは、自身の体験を生かし、乳がん患者の不安を手助けする「ピアサポート」の活動をしている。川久保さんが乳がんと診断されたのは9年前。人間ドックで腫瘍が見つかり「きっと、良性だろう」と思っていたが、結果は悪性。過酷な治療が始まった。
  闘病生活の中で特に感じた負担をまとめた。
①体の負担 痛みや吐き気、味覚障害、便秘など。抗がん剤治療で、髪とまゆげも抜け、精神的苦痛が大きかった。 ②お金の負担 働けない上に、のしかかる手術や入院費。その後も半年以上、毎週通う抗がん剤治療の費用や交通費の負担が継続した。 ③家族の負担 親の介護とも重なり、経済的、精神的にも家族の負担が大きい。子どもに「ママ死んじゃうの」と聞かれたことも。
  「がんになってから気付いた、負担がこれほどあります。このような思いをしないよう、子どもや家族のためにも、健康なうちに受診してください」。

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