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健康かながわ

 
 

2月26日、第7回かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が開催された。講師に安西法律事務所・加藤純子弁護士(写真)を迎え、「法令・裁判例に基づく職場のメンタルヘルス~適正な対応のための法的基礎知識~」のテーマで講演を行った。参加者は企業・団体の健康管理に携わる産業医・保健師ら110人(87団体)。

適正な対応のための法的基礎知識

講演の最初に加藤弁護士は、職場のメンタルヘルスが法的に問題になる局面について①民事損害賠償請求②労災請求③メンタル不調者の休職・復職・退職・解雇・懲戒処分を巡る労務対応の3点をあげ、労災と民事損害賠償の特徴・相違点を下表のように説明した。
どういったストレスがメンタル不調につながるのか、その参考として厚生労働省が労災認定にあたって示した「心理的負荷による精神障害の認定基準」(平成23年12月26日付)を詳しく解説。そこで示されている業務上心理的負荷を与える出来事やその強度はメンタルヘルス対策の参考になる、と加藤弁護士はアドバイスする。
労働者の精神疾患罹患と使用者の責任に関するリーディングケースが「電通事件(平成12年・最高裁)」であり、同事件では、使用者が「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷の過度の蓄積により労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務」を負うとし、この義務の違反により使用者が損害賠償責任を負った。
現在では安全配慮義務をめぐる多くの訴訟では、長時間労働が精神疾患を罹患した原因であることが前提となっている。

長時間労働と安全配慮義務

 では、具体的にどのくらいの長時間労働が精神の不調をきたした原因とされるのか。前述の労災認定基準は参考にはなるが「民事では基準が明確に存在するわけではない」と加藤弁護士はいう。加藤弁護士は最近の数々の裁判例をあげながら解説を続けた。
①金融業で債権の管理・回収業務にあたっていた労働者が抑うつ状態となった事案では、発症前3カ月間の時間外労働時間は158時間・203時間・241時間で原告の勝訴。
②介護職員が自殺した事案では自殺前1カ月間の時間外労働時間は166時間を超えており、自殺前6カ月間の平均時間は99時間であった。また、施設の責任者になるという人事異動もあり、自殺の直前にうつ病を発症したという前提で使用者の安全配慮義務違反があったと判断された。
 また健康管理体制も整え、相談窓口の設置などメンタルヘルス対策を実施し安全配慮義務を果たしていた、と主張する会社に対しても、その労働者(管理職であった)の労働時間を適切に把握せず、長時間労働を是正できていなかった場合、義務の履行を尽くしたとはいえない、と裁判所の判断が示された判例を加藤弁護士は示した。

3つの対策

労災認定にしても、損害賠償請求にしても、そのリスクを避けるためには、以下の3つは行うべき、と加藤弁護士はいう。
1.長時間労働の是正
 長時間労働の実態を把握し、あった場合は是正すること。
2.労働者からの申出があった場合には放置しない
 労働者から過重労働などの訴えがあった場合、面談をする・業務の軽減をするといった対処をすること、決して放置してはいけない。
3.受診命令
 明らかに精神疾患が疑われる場合、産業医面談や精神科受診など医療的な介入をすすめること。
 そのほか加藤弁護士は、明らかに精神的不調が疑われる労働者に対する無断欠勤を理由とした諭旨退職処分が無効とされた日本HP事件(平成24年・最高裁)をあげて、メンタル不調者に対する懲戒処分を行う際の留意点を説明するなど、メンタル不調者の一般的な労務管理に係る法的留意点について講演を行った。

 

 




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