法人向けサービス
前のページへ戻るHOME > 法人向けサービス > 健康情報(法人向け) > かながわ健康支援セミナー>これからの胃がん予防~胃がんリスク検診(ABC検診)の有効性について~
健康かながわ

 
 

第2回かながわ健康支援セミナー(主催・当協会)が8月28日、神奈川中小企業センタービルで開催された。「これからの胃がん予防~胃がんリスク検診(ABC検診)の有効性について~」のテーマで当協会がん予防医療部部長で神奈川県立がんセンター名誉総長の小林理医師(写真)が講演した。参加者は企業・団体の産業保健スタッフら74人(57団体)。。

 

減少を続ける胃がん罹患率

  国立がん研究センターが発表した2015年のがん罹患数の予測では男性の第1位が前立腺がん(9万8千4百例)、第2位が胃がんで9万8百例であった。女性では第1位が乳がんで8万9千4百例、胃がんは大腸、肺に次いで第4位の4万2千2百例と予測している。
 一方、老人保健法による胃がん検診が開始された昭和58年(1983年)以降の胃がん罹患率の変化(図1)を見てみると、40歳代では1/3以下に、50歳代でも半減している。女性でもこの傾向は同様で「厚生労働省が胃がん検診の対象年齢を50歳に引き上げたのは、このような背景があります」と小林医師は解説する。
 また、全国700の拠点病院による院内がん集計登録のデータによれば、入院している胃がん患者の6割が早期がんであり「ほとんどの患者さんが治癒するようになってきました」と小林医師はいう。

胃がん検診の考え方

 がん検診の基本条件とは 特に公的資金を用いて行う対策型検診では、死亡率減少効果が科学的に検証されていて、総合的にメリットがデメリットを上回ることが必要である。
 「大切なのは特異度です。 あなたには異常がありません、がんはありません、とはっきり伝え、受診者に安心してもらうことは重要」と小林医師。特異度が低いと不必要な治療や検査を招く可能性がある。また「要精検」となってしまった受診者の心理的影響を考えなければならない。
 胃がん検診については、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターが「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版」を公表している。(図2)
 同ガイドラインによると胃X線検査と内視鏡検査の「証拠のレベル」は6段階あるうちの最上位から3番目の「2+」。ペプシノゲン検査(PG)は4番目の「2-」、ヘリコバクターピロリ菌抗体検査単独法(HP)とPGとHP併用(ABC法)は5番目の「3」であった。
 またPG、HP、ABC法の推奨グレードは「Ⅰ」(現段階においてがん検診として実施するための証拠が不十分であることを意味するが、今後の研究成果によって将来的に判定が変更する可能性がある)であった。

内視鏡検査を考える

厚生労働省に設置されたがん検診のあり方に関する検討会は、
・ 市町村で行う胃がん検診の対象者は50歳以上。
・ 検査は内視鏡とレントゲンどちらかでよい。
・ 受診間隔は2年に1度。という内容の提言を7月末に行った。
来年4月から対策型検診として内視鏡検査が導入される、とマスコミでも話題になったが小林医師はいくつかの問題点を指摘した。
ひとつは、対策型検診として希望者全員を検査可能か、というもの。50歳以上人口は約5千7百万人。それに対して内視鏡専門医は1万6千人しかいない。また費用もX線検診は集団検診で5千円、個別検診が1万円に対して内視鏡は1万5千円と高額になる。そして検査時の偶発症対策ができているか、偶発症の発生頻度は0・083%で主には鼻出血だが、麻酔や鎮静剤によるショックへの対応がとれるのか、といった問題点を提示した。
今後の内視鏡検診のありかたとして「がんがあるか、ないかをみるのではなく、胃粘膜の状態をスコア化して、リスクの判定をしていくことが重要になる」と、小林医師は語る。

 




中央診療所のご案内集団検診センターのご案内